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大凑之夜(二)

时间: 2014-06-16    进入日语论坛
核心提示:【大湊の泊】(二) かくて、この間にこと多かり。けふ、破籠(わりご)持たせて来たる人、その名などぞや、今思ひいでむ。この
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【大湊の泊】
 
(二)
 かくて、この間にこと多かり。けふ、破籠(わりご)持たせて来たる人、その名などぞや、今思ひいでむ。この人、歌よまむと思ふ心ありてなりけり。とかく言ひ言ひて、「波の立つなること」とうるへ言ひて、よめる歌、
 
  行く先に立つ白波の声よりも遅れて泣かむわれやまさらむ
 
とぞよめる。いと大声なるべし。持て来たるものよりは、歌はいかがあらむ。この歌をこれかれあはれがれども、ひとりも返しせず。しつべき人もまじれれど、これをのみいたがり、ものをのみ食ひて、夜ふけぬ。この歌主(うたぬし)、「まだまからず」と言ひてたちぬ。ある人の子の童(わらは)なる、ひそかに言ふ、「まろ、この歌の返しせむ」と言ふ。驚きて、「いとをかしきことかな。よみてむやは。よみつべくは、はや言へかし」と言ふ。「『まからず』とてたちぬる人を待ちてよまむ」とて求めけるを、夜ふけぬとにやありけむ、やがて往(い)にけり。「そもそもいかがよんだる」と、いぶかしがりて問ふ。この童、さすがに恥ぢて言はず。しひて問へば、言へる歌、
 
  行く人もとまるも袖(そで)の涙川みぎはのみこそ濡れまさりけれ
 
となむよめる。かくは言ふものか。うつくしければにやあらむ、いと思はずなり。「童言(わらはごと)にてはなにかはせむ。嫗(おんな)・翁(おきな)、ておしつべし。あしくもあれ、いかにもあれ、たよりあらばやらむ」とて、置かれぬめり。
 
(現代語訳)
 
 このように、この間、いろいろなことがあった。今日、破籠を従者に持たせてやって来た人、名前はちょっと思い出せない。この人は、歌を詠もうという下心があって来たのだ。あれこれ言いつつ、「波が立っているようですね」としめっぽく言って詠んだ歌は、
 <あなたが行く先に立つ白波の音より、あとに残されて泣く私の声のほうが大きいことでしょう。>
というもの。波の音に負けないとは、ずいぶん大きな声に違いない。持ってきたご馳走にくらべて、歌のできばえはいかがなものか。この歌を幾人かが感心してみせるが、一人も返歌をしようとしない。返歌できる人もいるのだが、この歌に感服するのみで、ご馳走を食べてばかりいて、そのうち夜が更けてしまった。この歌を詠んだ人は、「まだお暇はしません」と言いながら座を立った。そこに居合わせた小さな子どもが、こっそりと、「私が、この歌の返歌をします」と言った。驚いて、「それはとても面白い。本当に詠めるの? 詠めるのなら早く言ってごらん」と言う。「『お暇はしません』と言って座を立った方を待って詠みます」と言って、その人を捜したが、夜が更けたためか、そのまま帰ってしまっていた。「いったい、どんなふうに詠んだのか」と、知りたく思って聞く。その子は、さすがに恥ずかしがって言わない。無理に聞き出したところ、言った歌は、
 <旅立つ人もとどまる人も、その袖を濡らす涙が川のように流れ落ちる。それが水際まであふれてどんどん濡れていくことだ。>
と詠んだもの。これほど見事に詠めるものだろうか。この子がかわいいからか、思ってもみなかったことだ。「いくらなんでも返歌が子どもの作では失礼だろう。お婆さんかお爺さんが署名したらよかろう。実際は子どもの作なのが悪かろうが何だろうが、つてがあれば送ってやろう」と言って、手元に取って置かれたようだ。
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