「嘘をついてはいけない」ということは誰でもが知っている。知ってはいるが、これは本当には実践することの不可能な真理なのだ。「宿題、ちゃんとしたの?」と聞かれて「うん、したよ」と答えたら、宿題を隅から隅までちゃんとしたということになる。しかし母親が点検したら、「ちゃんとできていない」ところがあった。そうすると母親はこう言うのである。「嘘をつくんじゃないよ」と。
しかしある年代に入ると、私たちは心で思うことと、それを実行することは同一にはゆかないことがわかってくる。口で言うことと実際にできることの間には常にずれがあるし、Aすると言ってBしかできないことなどいっぱいある。それでも、(1)それを敢えて「( 2 )」とは言わない。もしこうした「ウソ」を自分に認めてあげなければ、実現できそうにもない自分を、(注1)あたかもできるかのように演出し続けなければならなくなり、結果的にもっと大きな嘘をつく自分を創り出す(注2)はめになるのである。
注1 あたかも:まるで~ように 注2 はめになる:よくない境遇になる
問1 (1)「それを」とあるが、この「それ」は何を指すか。
1.心で思うことを実行すること。 2.私たちが心で思うこと。
3.Aすると言ってBしかできないこと。 4.実際には実現できいないこと。
問2 ( 2 )に入る適当な文はどれか。
1.嘘は許されない 2.嘘をついた 3.嘘をついていない 4.嘘は必要だ