中国語には兼語文という構文がある。“我请你吃饭。”(あなたに食事をおごるよ)――この文で“你”は前の動詞“请”の目的語であり、同時にあとに続く“吃饭”の主語になっている。このように1語で2つの役割を兼ねる語ということから、このような文を兼語文とよぶ。中国語を直訳すれば「私はあなたにご飯を食べることをおごる」となるが、自然な日本語では「食事をおごる」と名詞を直接目的語にとっている。すなわち中国語では“请你吃饭。”のように動詞が加わる点に注意すべきである。“请”のほか“派”(派遣する)、“邀请”(招へいする)、“劝”(すすめる)などでも同様の現象が見られる。
例:じゃ、映画をおごってよ。/那你请我看电影。
会社は彼を中国へ派遣した。/公司派他去中国。
彼を会議に招へいした。/我们邀请他参加会议。
叔父さんにビールをすすめなさい。/你劝叔叔喝啤酒。(「ビールをすすめる」は次のようにも訳せる。やはり、ビールをどうするのか、動詞による明確化が必要である。你给叔叔倒啤酒。)
★用例集
パーティーにお招きいただきありがとうございます。/感谢您邀请我参加晚会。
国を訴えて損害賠償を要求する。/提起诉讼,要求政府给予赔偿。
待たせた埋め合わせにランチをおごるよ。/我请你吃午饭,算是作为让你久等的补偿。
人手が足りないので援軍を頼む。/人手不够,请人来帮忙。
1杯おごろうか。/我请你喝一杯吧。
友達をお茶に誘う。/邀朋友去喝茶。
何をごちそうしようか。/我请你吃什么呢?
上層部の裁決を仰ぐ。/请领导班子做出裁决。
重要な交渉だからしかるべき人を立てよう。/这是一个重要的谈判,应该派适当的人来负责。
会議に有識者を招請した。/邀请了知识分子参加会议。
裁判所に被告側の証人として召喚された。/法院传我作为被告一方的证人出庭。
今回の医療裁判では原告被告とも専門家を証人に立てた。/这场医疗官司中原告被告双方都请来专家作证人。