◆刺 青 ~谷崎潤一郎
江戸の刺青(ほりもの)師・清吉は、美しい女の肌に自分の魂を彫りこむことを念願していた。ある夏の夕方、駕籠の簾からこぼれ出た、まっ白な女の足に魅せられた。そして、その娘が姉芸者の使いで清吉宅を訪れたとき、清吉は中国・殷の暴君・紂王の寵妃が処刑される男を喜び眺めている絵などを見せる。娘の瞳は輝き、彼女の心中にひそむサディズムと悪魔性を知る。清吉は娘に麻酔薬をかがせて、その背にみごとな女郎蜘蛛を彫った。刺青が完成したとき、娘は、男を肥やしにして肉体を誇ろうとする妖婦の心になっていた。