めめっこをおちんこなどと二位の尼
一の谷でさんざんな目にあった平家一門は、船で屋島《やしま》へ、壇《だん》の浦《うら》へと敗走する。その中には多くの官女にまじって、安徳帝《あんとくてい》とその母の建礼門院《けんれいもんいん》、清盛の北の方で安徳帝の祖母にあたる二位《にい》の尼《あま》もまじっていた。
ところでその安徳帝は、実は女の子であったのを、清盛が男子といつわり、むりやりに三歳で帝位につけたお方である。そこへ目をつけた庶民が、めめっこをおちんこなどと……といったわけだ。
「めめっこ」の「めめ」は、女々《めめ》しいの女々、すなわち|女々っこ《ヽヽヽヽ》は女児の性器の俗称である。それに対して男の子の「おちんこ」の「ちんこ」は、小さいという意味の上方《かみがた》コトバで、「ちんこい」とも「ちっこい」ともいう。すなわち、小さくかわいらしいアレという意味である。
人の見ぬ方へ二位殿ししをやり
亭主の清盛とぐるになって、二位の尼が「めめっこ」を「おちんこ」などと言いくるめたにちがいない、太いあまだ、というわけだ。しかし困るのはおしっこさせる時だ。侍女にまかせて、めめっこを人前にさらけ出すようなことがあっては化《ば》けの皮がはげるから、こればかりは 大儀ながら二位の尼が、人目のない船ばたに出て、|しいしい《ヽヽヽヽ》とやったにちがいないのである。