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黒田如水89

时间: 2018-11-16    进入日语论坛
核心提示:室殿二 伊丹兵庫頭《いたみひようごのかみ》というのは、この近郷では、かつてはもっとも由緒《ゆいしよ》ふかい土着《どちやく
(单词翻译:双击或拖选)
 室殿
 
 伊丹兵庫頭《いたみひようごのかみ》というのは、この近郷では、かつてはもっとも由緒《ゆいしよ》ふかい土着《どちやく》の豪族だった。
 しかし今ではそんな勢力はまったくない。荒木摂津守村重が興ってからその位置を代えてしまっている。そして伊丹家なるものは、名ばかりの一族の端に置かれ、麾下《きか》のうちでも、ほとんど、列後に忘れ去られていた。従って、なお伊丹に留まっているものの、心は今も織田家へ寄せていた。わけて兵庫頭の息子たちは、この機会に、家運挽回《かうんばんかい》をはからんとしていたのである。——そして城中に囚《とら》われている黒田官兵衛の身と、この城下へ潜入《せんにゆう》している黒田家の決死救出組の諸士の行動とをひそかに睨《にら》みあわせて、
(折あらば、彼等を手曳《てび》きし、その功によって、織田殿へ復帰し、あわせて自分たちの望む家運挽回をも)
 と、心がけていたのであった。
 わけて伊丹家の次男の伊丹亘は、郎党の加藤八弥太に、ほかの事まで打明けていた。お菊のことである。八弥太を介していっているとおりに、この若い武士の想いは純情《じゆんじよう》だった。ふかく思いこんだのであるが、明日知れぬ身を前提としているだけにしかもきれいであっさりしていた。討死するかも知れないから、その日までの約束でいいというのである。
「承知してくれ。新七。そのかわりに、おぬしらの力ともなろう。初めて打明けるが、兵庫頭の一家は、心から荒木村重に服してはいない。織田殿の勢いがやがて城へ迫って来る日を心待ちにしておるものだ」
 八弥太のことばに対して、新七は大きな歓びは呼び起されても、否む理由は持てなかった。同志たちの至誠《しせい》が天に通じてこの人をいま地に降《くだ》し給うかとさえ思われて、神助へ手を合わせたいほどだった。
(……が。困るのはただ、お菊の気もちだが?)
 新七はただそれに迷った。しかしもし官兵衛の死が救われ、義胆《ぎたん》の同志十三名がこれによって望みを遂げ得られるとしたら、義妹ひとりの否か応などは問題ではないとも考える。ましてその相手の若武者も、ひとしく織田軍へ心をよせ、自分たちの同情者であるというにおいては。——と彼は肚《はら》をすえた。
「八弥太様。この通りでございまする。何事も、仰せにおまかせいたします」
 彼は地に坐り直して、加藤八弥太のすがたへ、両手をつかえた。八弥太はまた、その背を叩いた。
「よし。それでわしも顔が立った。そちらの事にも充分力をそえる。……が、今夜はこれで別れ、いずれまた、熟議《じゆくぎ》いたそう」
 彼に別れて、わが家へ帰った後も、新七は何だか信じられない気がした。けれど、数日の後、八弥太の使いがまた彼を迎えに来た。そしてこんどは伊丹の侍小路《さむらいこうじ》の古びた邸へ彼を導いた。そこは八弥太の住居で、彼の主人の伊丹亘《わたる》が来て待っていた。
 亘と新七とは、それ以後、ここで数回落ち会った。もちろん、主人救出組の人々へは、その都度、新七から会合の内容が伝えられていたことはいうまでもない。
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