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黒田如水98

时间: 2018-11-16    进入日语论坛
核心提示:藤の枝三 権藤亥十郎はかなり昂奮《こうふん》した語調をもって事実を述べた。当然、この事はすぐ眼のまえにいる室殿へも大きな
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 藤の枝
 
 権藤亥十郎はかなり昂奮《こうふん》した語調をもって事実を述べた。当然、この事はすぐ眼のまえにいる室殿へも大きなひびきを持つことなので、彼としてはこの戦時にあって共々一城を守る家臣としての悲壮なる忠諫《ちゆうかん》のやむべからざるを心からもいったのである。いわゆる面《おもて》を冒《おか》して主をいさめるの気持だった。
 摂津守村重とて、この良臣の言を怒るほどの暗君でもない。彼は、亥十郎の眼光のなかにある気持を充分に酌《く》みとって仔細《しさい》を聞いていた。
 ——そして後、しずかに、室殿をふり向いていった。
「於室《おむろ》。聞いていたか」
「——え。聞いておりました」
「この於菊《おきく》とやらは、つい先頃からそなたの側に召使っているものではないか」
「殿も、よくご存知ではございませんか」
「……がまあ、念のために聞いたのだ。そなたとても、一半の責任はあるぞ」
「どうしてですか」
「このような怪しい女をなぜ今日まで側近く置いておりながら分らなかったか」
「何か怪しいのですか」
「亥十郎のことばを今聞いていたろうが」
「亥十郎はまったく何か勘《かん》ちがいしているのではございませんか」
「何をいう」と、女にはやさしい摂津守もやや色を作《な》して——
「何が亥十郎の勘ちがいか。亥十郎は眼で見とどけていた事だ」
「いいえ、いいえ」彼女も負けていない色を示して来た。そして女のみにある特有な、するどくて粘《ねば》りのあるいい方で切りこんで来た。
「菊は、わたくしの召使いの者でございます。菊の性《さが》はたれよりも知っているつもりです。それにまた、殿のご一族の、伊丹家の縁類ではございませんか。侍女《こしもと》でこそあれ、亥十郎風情《ふぜい》が、怪しい女だの、憎いやつだのと、口はばたく申すのは、ずいぶんひとをばかにしたことばでございます。かりそめにも、主筋《しゆすじ》のものにたいして」
 と、たちまち火のつくような迅《はや》さでこうきめつけておいてから——
「今夜、菊が天神池《てんじんいけ》へ行ったのは、わたくしのいいつけでございまする。菊の意志ではございませぬ。菊にしてみれば、ほんとに災難《さいなん》だったといってよい。——わたくしが、蛍《ほたる》をたくさんに捕《と》ってこの庭へ放して賜《た》もと、菊にいいつけたからでございますもの——」
「あいや。おことば中でありますが」
 こは心外なという血相《けつそう》を示して、亥十郎がふいに遮《さえぎ》ると、室殿《むろどの》はひややかに、
「なんです、わたくしに物をいわせないで。控えておいでなさい」
 と、頭からただ一言に抑えつけたうえ、更に、村重へ向って喋々《ちようちよう》と、事実を否定した。
「わたくしにも一半の責《せ》めがあるとの仰せでしたが、それならば殿にも一半の罪がおありでしょう。そんな怪しげなものをこの城中へ入れて召使っている私のようなものを、どうしてまた、殿にはここへお置きなさるのでございますか。わたくしはいつもいっている通り室の津へ帰りとうて帰りとうてならないのではございませんか……。それを、殿が、お許し下さらないで」
「亥十郎。亥十郎」村重は何か急にその武将たる重さを失いかけて——「ひとまず其方は退がれ。あとでまたよく談合もしよう。いや於菊の身は充分に調べたうえで取極めるから心配すな。退がってよい」
 亥十郎は暗然と主の面を見上げていた。もっと直言したい気もちが胸につかえているらしかった。けれどその起ち際《ぎわ》にいたるまで、室殿は彼の訴えを否認してやまなかった。
「ここを去るならば、もう一度、池の畔へ行ってよく調べてみたがよい。菊には、わたしから蒔絵《まきえ》のしてある美しい蛍籠《ほたるかご》を持たせてやりました。それがどこかに落ちているにちがいありません。……可哀そうに、わたしのために、ほんに不愍《ふびん》な濡《ぬ》れ衣《ぎぬ》を着せてしもうた……」
 亥十郎は、むっとした容子を抑えて、武辺者《ぶへんしや》らしい一礼をすると、すぐ立ち去ってしまった。
 そのあとのはなしは、当然、室殿と村重だけの事になった。室殿はふたりになると、今度はやや趣を更《か》えて、
「わたしも咎《とが》を負《お》うて、菊といっしょにお城を出ます。どうか菊とふたりでご追放を命じてください。さもなければ、ふたりを並べてご成敗《せいばい》あそばしてもかまいません」
 などとつけつけいった。
 摂津守村重も、この一婦人には閉口のていだった。由来、後房のおさまらないのがこの猛将の欠点だという世評もあるほどに、彼のあまいことは隠れないことであった。
「まあ、よいわさ。そう躁《さわ》がしゅういうな。亥十郎とて決して故意や悪意で告げて来たことではない。間違いなら間違いでいい。内外ゆるがせならぬ場合だ、またこの伊丹城だ。家臣もそれを思えばこそ、些細《ささい》なことも、気をくばってくれるのではないか。於菊の身は、そなたに預けておく。ただこれからは、西の丸の奥からあまりほかへ出すなよ」
 やっと彼女を宥《なだ》め得ただけでも村重はほっとした顔であった。かえって彼の方から話をほかに紛《まぎ》らわせたりして、ようやく室殿の一顰一笑《いつびんいつしよう》を拾うの有様であった。
 このことはまた、いつのまにか侍臣の口から他へ洩れていた。憤慨《ふんがい》した権藤亥十郎の脱城はそれから間もない後に行われた。村重は、甚だしく怒って、その不忠を罵《ののし》ったが、家中の多くは沈黙の中にいた。
 この頃から伊丹城中には、惰気《だき》ようやく満ち、士気また紊《みだ》れ始めたかと見らるる徴候《ちようこう》があらわれ出して来た。
 安土の細作《ものみ》は敏感に嗅ぎつけて、城中の空気と、またそれのすぐ反映している城下の情況とを頻々、信長のほうへ密報していた。
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