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平の将門14

时间: 2018-11-24    进入日语论坛
核心提示:投 銭百敷《もゝしき》の大宮人《おほみやびと》は いとまあれやさくら挿《かざ》して今日も暮らしつ 自らの生活を、こう詠み
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 投 銭
 
 
百敷《もゝしき》の大宮人《おほみやびと》は いとまあれや
さくら挿《かざ》して今日も暮らしつ
 自らの生活を、こう詠み誇った人々をきょうも呼び集めて、小一条の対《たい》ノ屋《や》から泉殿《いずみどの》のあたりには、奏楽がやむと、主の忠平の大きな笑い声やら、客の嬌笑雑語の溢れが、大表の轅門《ながえもん》から、垣舎《かきや》のほとりまで、近々と洩れ聞えていた。
「小冠者。おれが先に、ちょっと、取次を頼んでやるから、そこらに、待っていな」
 放免は、轅門をはいって、白砂のしきつめてある広前をきょときょと見まわし、もう一重《ひとえ》ある右側の平門をのぞきかけると、一隅の雑舎《ぞうしや》のうちから、水干《すいかん》姿の小者が、ぱっと、駈けよって、
「こらっ。いけないっ。——出ろ、出ろ」
 と、引きもどした。
 放免が、小次郎になり代って、はるばる訪ねて来たわけやら、ゆうべからの仔細を、つまびらかに、述べたてているまに、狼藉人《ろうぜきにん》とでもまちがえたものか、さらに奥から、家司《けいし》、侍、雑色《ぞうしき》たちまで、あふれ出て来て、物々しく放免を取りかこみ、さて、顔見合せたり、訊き直したり、さんざんに議したあげく、やっと放免に、小次郎を、呼び入れさせた。
 放免は、出過ぎた親切気を、悔いるように、
「じゃあ、てまえは、これで……」と、辞儀ひとつ残して、匆々《そうそう》に、立ち去った。
 だが、後には依然、小次郎を取囲んで、はなしにのみ聞く、蝦夷の子でも見るように、好奇な眼と、疑惑とを、露骨にあびせながら、なお騒々と、諮《はか》り合っていた。
 そして、結局は、
「御遊宴のさなか。お客人たちもおらるる所へ、ひょんなお取次は、興ざめのお叱りもうけよう。まずまず、童は、そこらに留めて、人目にふれぬようにしておいたがいい」
 と、家司(老職)のさしずが下って、小次郎は、そこから更に、外庭を歩かせられ、
「ここで、待っていろ」
 と、雑色の指さす所へ入れられた。
 そこは、邸隅の輦宿《くるまやど》とよぶ供待《ともまち》小屋であった。
 たくさんな牛輦が、幾台も曳きこんであり、所々は、牛の糞が、山をなしている。
 糞と涎《よだれ》と、牛の尻《し》ッ尾《ぽ》のあいだでは、いろといわれても、いる所がない。晩春なのに、もう銀蠅が、慕って来ている。小次郎は立ちくたびれて、輦宿の横の棟をのぞいてみると、そこには、それぞれの主人に供して来た牛飼やら舎人《とねり》たちが、十人以上も、屯《たむろ》していて、なにか、血眼をひとつ莚《むしろ》に寄せあっていた。
 博奕《ばくち》だった。
“投銭《がにうち》”と俗にいう博奕で、その頃の庶民が熱中してやったものである。胴元の男が、幾枚かの穴あき銭を両の掌に入れ、振り音を聞かせて、ばっと、場に投げる。文字の銭面《ぜにめん》と、文様の銭面とが、どう出るかという点に賭け合うのであった。
 小次郎も、覗きこんでいた。博奕は、坂東地方でも盛んである。けれど、もっと原始的な博技で、それに、こんなにもざらざらと銭《ぜに》を賭けることはない。賭けるのも、稲だの、毛皮だの、布だのといった物ばかりだ。
 ここでも、彼は、眼をくるめかせた。銭がまるで石ころみたいに扱われていることもだが、もっと彼を昂奮させたものは、赤裸な人間の欲心をつよく描いた彼ら同士の顔つきであり、その語気と語気の火を発するような遣り奪りであり、また、殺気立つばかりな闘争の光景だった。
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