日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 吉川英治 » 正文

平の将門82

时间: 2018-11-24    进入日语论坛
核心提示:秋水蕭殺 じとじとと、長い秋雨がつづいた。 山蔭に、横穴を掘り、穴の口に、丸木を組み、木の皮で屋根を葺《ふ》いたような小
(单词翻译:双击或拖选)
 秋水蕭殺
 
 
 じとじとと、長い秋雨がつづいた。
 山蔭に、横穴を掘り、穴の口に、丸木を組み、木の皮で屋根を葺《ふ》いたような小屋が、彼の当分の隠れ家だった。
 同じような物を、その附近に、土蜂《どばち》の巣のように作って、主従六、七十騎が、一種の山寨《さんさい》を構成し、しきりに、密偵を放ったり、離散した味方との連絡を計ったり、また食糧の猟り集めなど、営々として、とにかく、再起の意気だけは、持ち耐えていた。
 けれど将門は、ここへ落着いた日から、まったく、病が重って、寝ついたきり、身うごきもできなくなった。
 脚は、樽のように太く、指で圧すと、ふかく凹《くぼ》む。顔のむくみも、いっこう退かないし、全身のだるさも、気が張っていた間はまだしも、山へかくれてからは、わが身をさえ、持て余すばかりだった。
「桔梗は、無事か。……和子も、変りはないか」
 呻《うめ》きながらも、そればかりは、日に何度も、訊くことを忘れない。
「お難しいかもしれない……」
 末弟の将武は、郎党たちが、ひそひそ声で、そう呟《つぶや》くのを、何度も聞いた。——ほかの将頼、将平などの兄と、何とか、連絡をとりたいと思ったが、へたに、盲動すると、なお豊田附近に充満している敵の目にふれて、ここの山寨を、さとられる惧《おそ》れがある。
「もし、ここへ、敵に襲《よ》せられたら——」と、考えると、将武は、身の毛がよだった。何とか、長兄の病気を、一刻も早く——と、そればかり祈るものの、その薬餌すら、手に入れ難い。
 すると、どうして、知ったものか。亡父《ち ち》良持の友人で、蔭ながら、将門の身に、非常な同情をもっていた菅原景行が、ある日、見舞に来て、将門の病状を見、
「これは、癒《なお》らぬ病ではない。わしも、かつて同じ病にかかったことがある。その薬を届けて進ぜる」
 と、いって帰った。
 将門は、その人のうしろ姿を伏し拝んで、
「ああ、申しわけがない。あの人には、何事も怺《こら》えとおせと、いつも、堪忍が大事だという御意見をよく伺っていたのに……。ついに、こんなみじめな自分の姿を見せて」
 と、病床に、涙を流していた。
 数日の後、景行の使いが、薬を届けてよこした。薬草袋を煮ては、毎日何度となく、その薬を飲みつづけた。驚くほど、尿がよく出る。それに比例して、気分が際立《きわだ》って爽快になってきた。
 将門は、ひとり語に、
「おれは癒る!」
 と、大声でいった。すると、空洞の木霊《こだま》がグワンと(おれは、なおるっ)と、それに和すように、もう一ぺん聞えた。
 肉体に、健康がよび返され、その健康が、彼の彼らしい意志気力を、恢復してくると、
「はて。おれはどうして、こんな目に遭《あ》っているのか。相馬小次郎将門ともある者がだ。おれは、決して、喧嘩に負けて凹《へこ》むような男ではない。……そうだ、おれは合戦に敗れたのではなく、おれはおのれの病気に負けたのだ」
 むらむらと、こんな考えかたが、頭を擡《もた》げてきた。身のみじめさを、鮮《あざ》らかに、見廻すにつけ、最愛の妻子の、あわれな船住居を思うにつけ、彼は、心に、遺恨の弓を、ひきしぼって、満を持すような眉を示した。
「どうだ、おれの顔は。……もうすっかり腫《は》れもひいたろう。滅法、粥もうまくなって来た。何を喰っても、餓鬼のように美味《う ま》い」
 ——その朝は、わけて将門は、気分が快かった。穴住居には耐えなくなり、早暁に鳥の音の中を歩いて帰った。そして大勢の郎党たちと共に、雑穀や木の実をつき交ぜた異様な粥に、小鳥の肉など炙《あぶ》って、賑やかに、食べていた時である。
 誰か、麓から、駈け上ってくる。本能的に、みな立った。しかし、味方の物見の者とわかったので、すぐにまた、腰をすえかけると、近づいて来た味方のその物見たちが、口々に、たいへんだっ——といきなり喚《おめ》いた。その声にも、表情にも、たしかに、一同を愕然《がくぜん》とさせる——ただならぬもの——があった。
「北の方の船が襲われた」
「敵に知られて、桔梗さまや、和子様まで」
 舌がひッつれて、多くを、正しく、いえないのである。口々の声はみな、報告というよりは、ここへ来て、とたんに、息ぎれと一しょに吐いた絶叫であった。
「なにっ」
 将門のそれにたいする声も、ふるえを曳いて、あとは、
「桔梗や、和子が」
 と、いったきりである。
 唇のほか、血のいろもない顔を、じっと、持ち耐えながら、
「もっと、詳しくいえ。敵に見つかって、どうしたのだ?」
 と、やっと次の語を吐いた。そして、物見の三名を、睨みつけた。
「無残や、お姿も見えません。……血にそんだ船や、あなたこなたに、御衣《おんぞ》の袖やら、味方の郎党の死骸は、捨てられてありましたが」
 すべてを聞き終らないまに、将門は、山を駈け下りていた。もちろん、すべての彼の部下が、山つなみのような勢いをなして、彼に駈けつづいたことはいうまでもない。
 麓に近い平地に、味方の馬十数頭が隠してある。彼は、その一頭へ、とびのった。うしろに、兵が続いて来ようと来まいと、問題ではないらしい。彼はただ、彼の魂が翔《か》けたい方へ、駈けている。
 陸閑岸から、彼の妻子の船のある湖辺まで二、三里はある。その間、将門は、道も眼に見えなかった。
 蘆荻と、水が近づいた。
 晩秋の大気は、水も空も、ひとつの物みたいに、しいんと、澄みきって、そこに、何があったかを、疑わせる。余りにも、自然は、平和であったし、美しすぎるほど、美しい秋を深めている。
「……桔梗っ」
 馬を降りた将門の声が、水へひびいた。同じ叫びを、彼は、白痴の児のように、何度も、水へむかって、繰り返した。
「き、き……桔梗……」
 やがては、ただ咽《むせ》び、ただ涙となり、そして、おろおろと、あたりを、行き暮れたように、歩き廻って、突然——
「おれだぞ。将門だ。……桔梗よ」
 と、水の中へ、ざぶざぶ、這入《はい》って行こうとした。
 すでに、後から駈けて来た面々も、そこらの地上を、物色したり、そして、芦間に、血に染《し》みて、沈みかけている破れ船を見つけたりして、地だんだを踏んで、呪いや不覚を、口走っていたのである。
「あっ。どこへ。……お館様、どこへ」
 将門の異様な行動を見て、郎党のひとりが、抱きとめた。将武も走りよって、手をつかまえた。
「離せっ、おいっ。……離さぬか」
 将門は、恐ろしい力で、二人を刎《は》ねとばした。
 将武は、足に、しがみついて、
「あ、あぶのうございます。兄者人っ、あの船には、誰も、おりません。桔梗さまも、誰も……」
「いる。……いる……。おれには、見える。……桔梗が、和子が」
「おういっ。み、みんな、ここへ来てくれ」
 と、将武は絶叫した。
「——兄者人が、発狂なされた。……あ、兄者人を、どこか、よそへ、担いで行ってくれ」
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%