日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 喬林知 » 正文

今日からマ王9-9

时间: 2018-04-30    进入日语论坛
核心提示:     9 東ニルゾンからカロリアまでの旅は、比較的《ひかくてき》順調に進んだ。ドゥーガルドの|高速艇《こうそくてい》
(单词翻译:双击或拖选)
      9
 
 東ニルゾンからカロリアまでの旅は、比較的《ひかくてき》順調に進んだ。ドゥーガルドの|高速艇《こうそくてい》はやはり揺《ゆ》れたが、往路のようには酔《よ》わなかった。
 しかし、船どころか海自体初めての子供達は、狂喜《きょうき》乱舞《らんぶ》して|甲板《かんぱん》中を走り回り、船員や周囲の大人に多大な迷惑《めいわく》をかけていた。
 行きに出会った神族の子供達だ。大陸の荒れ野で収容所生活を|余儀《よぎ》なくされていた彼等を、おれは大シマロンから連れだすことに決めた。フレディが|施設《しせつ》に火をつけた晩に、時間のロスも|我慢《がまん》して併走《へいそう》班を待ち、牛車《ぎっしゃ》で現れたドゥーガルド兄弟に子供達を託《たく》した。
 この子達を船に連れ帰り、おれが戻《もど》るまで手厚くもてなして欲しい。大会後にはどこか神族の住む土地へ、送り届けてやりたいと思っている。そう告げると言葉少なな海の兄弟は、合点承知とばかりに|頷《うなず》いた。
 大会が終わり、優勝記念品をひっさげて帰ってくると、高速艇は子供達に支配されており、ドゥーガルド兄弟はげっそりやつれていて、うんざりとした顔で|呟《つぶや》いた。
「陛下、もう|勘弁《かんべん》してください」
 申し訳ないが、そうはいかない。
 ギルビット港までおれたち一行を運んだ後に、遠い土地まで行ってもらわなければならないのだ。つまりこの髪《かみ》も肌《はだ》も白っぽい子供達を、同族の住む土地まで送り届けて欲しい。
 それを告げると兄弟はがっくり項垂《うなだ》れたが、そこはそれ、海の男の心意気だ。しばらくすると男の子達を見習い船員として手伝わせ、女の子に海の男シチューのレシピを教えた。この分なら目的地に着くまでには、日焼けした血色のいい少年少女が出来上がりそうだ。
 高速艇がギルビットに入港すると、停泊《ていはく》していた船が次々と祝福の銅鑼《どら》を鳴らした。彼等もみなカロリアの独立を聞いていて、新たな取引相手|獲得《かくとく》を目標にやってきていたのだ。
 中には眞魔国籍《しんまこくせき》の|船舶《せんぱく》もある。
 ヴォルフが手摺《てす》りから身を乗り出す。
「ヴォルテールの旗標《はたじるし》だ!」
 おれより大人な振《ふ》りをしていたのが、たちまち|崩《くず》れて喜色満面になる、
「兄上の船が来てるっ!」
「え、グウェンの船まで? どこどこ、どんな可愛い小動物系の旗なの」
 しかし冷静になって考えてみると、怖《こわ》い事実に行き当たってしまった。フォンヴォルテール|卿《きょう》まで出張ってきたとなると、本国の政《まつりごと》はどのようになっているのだろうか。まさかとは思うが、あの人が一人で? もう一度訊くが、あの人が一人で!?
「は、早く還《かえ》らないと」
 最悪の事態を想像しすぎて、気分が悪くなってきた。
 公式にはノーマン・ギルビットは大シマロンで急死したことになっている。従ってノーマンなりきり男だったおれは、皆《みな》の前で公然と下船はできない。出発時にあんなに壮行《そうこう》してもらったにもかかわらず、帰りはひっそりと裏からだ。淋《さび》しいけれどもこれが影武者《かげむしゃ》の定め、分を|弁《わきま》えてきちんとやり遂《と》げるつもりだ。
 サイズモア艦長はご|自慢《じまん》の戦艦「うみのおともだち」号におれと村田が乗ると聞き、喜び勇んで乗艦準備に行ってしまった。世を忍《しの》ぶ理由のないヴォルフラムは、兄を迎《むか》えにヴォルテール艦へと出向いている。ダカスコスは平原組の皆さんと意気投合し、|女房《にょうぼう》のいる生活・プライスレスと銘打《めいう》って、秘密のご機嫌うかがい用語集を披露《ひろう》していた。戦い一筋二十五年の独身兵士連中は、嫁《よめ》さんのいる生活が相当|羨《うらや》ましいらしい。
 平原組といえば山脈隊長を始めほとんどの兵士が、第二の就職先にフリン・ギルビットお嬢《じょう》さんの国を選んだ。ついでだからと力ロリアまで「赤い海星」に乗せてやると、これが殊《こと》の外大好評だった。基本的に陸兵ばかりの卒業生は、海での、しかもこんなに速い移動は初めてだったらしい。
 感激のあまりせめてものお礼として、自部隊の名物野営食「海月鍋《くらげなべ》」をご馳走《ちそう》すると言いだした。それ自体は異文化コミュニケーションとして|素晴《すば》らしいと思ったのだが、ただ残念なことにドゥーガルドの高速艇は非常に速いので、彼等が料理を作る前にカロリアに|到着《とうちゃく》してしまった。という理由で船の|厨房《ちゅうぼう》には|巨大《きょだい》ドラム缶鍋《かんなべ》だけが残り、|肝心《かんじん》の平原組はもう上陸済みだ。またいつか「海月鍋」を味わう機会があったら、その時には山脈隊長とテリーヌしゃんを思い|浮《う》かべることにしよう。
 人出が引く時間帯になってから上陸しようと、おれは|孤独《こどく》に船内を見物してまわっていた。厨房前の廊下《ろうか》までやってきたので、巨大ドラム缶鍋でも拝んでおこうかと|扉《とびら》を潜《くぐ》る。先客はシンクの脇《わき》に寄り掛《か》かり、薬缶《やかん》からのぼる湯気をぼんやりと眺めていた。
 なんだか面白《おもしろ》くなさそうだ。
「村田」
 反射的に顔を上げ、胸の前で組んでいた腕《うで》をほどく。
「あ、なんだ渋谷か」
「なんだじゃないよ。お前まだ下船してなかったの?」
「んー? まあ色々|面倒《めんどう》くさくてねー」
 おれみたいに出たくても出られない奴《やつ》もいるのに、面倒くさいとは何事か。薬缶の中身が|沸騰《ふっとう》して蓋《ふた》を鳴らす。無性にカップ麺《めん》が食いたくなって、無いと知りつつ厨房を探してしまった。
「そりゃそうだよな、剣《けん》と|魔法《まほう》の世界だもん。赤いきつねも緑のたぬきもないよなあ」
「ピンクのウサギだったらいたのにね」
 笑いながらも心ここにあらずという様子だ。気がかりなことでもあるのだろうか。大きめのカップに適当に茶葉を入れ、直接熱湯を注いでしまう。こんな紅茶の煎れ方をしたら、ギュンターが|卒倒《そっとう》するだろう。
「なに笑ってんの」
「ええ?」
 作業台におれの分の紅茶を置き、村田は|椅子《いす》を引っ張りだした。
「面白いこと想像してるって顔してたよ」
「いやぁ、お前が眞魔国に戻ったら、きっと大変なことになるんだろうなあと思って」
「なんで?」
 おれの時でさえあれだけ大騒《おおさわ》ぎした連中が、どれだけ困惑《こんわく》するかは見物だった。特に|黒髪《くろかみ》黒瞳フェチのギュンターなんか、村田の姿を見ただけで卒倒しそうだ。
「だって幻《まぼろし》の大賢者《だいけんじゃ》だよ。大吟醸《だいぎんじょう》じゃない、大賢者だぞ? ほとんどの人がお前のこと架空《かくう》の生物だと思ってるんだぜ。そこにのこのこ現れたら、ツチノコどころの騒ぎじゃないよ」
「失礼だな、ツチノコ扱《あつか》いするなよ。せめてヒバゴンにしといてくれ。あれはホラ、二足歩行が出来るから、むしろアシモより利口じゃない?」
「……お前それ、科学者に泣かれるよ」
 ひょいと部屋の隅《すみ》に視線を向けると、|噂《うわさ》の巨大ドラム缶鍋が放置されていた。確かにすごい大きさだ。床《ゆか》に直接置いてあるのに、おれの胸の高さまである。近くに寄って厚く滑《なめ》らかな鉄を撫《な》でてみたり、中を覗《のぞ》き込んでみたり。
「すげーな、五右衛門風呂《ごえもんぶろ》みたい……あれ、中になんか水が入ってるよ。具はないけど、これが例の海月鍋の出汁《だし》なのかな」
「だしー? 出汁は海月から取るんじゃないの? でもまあせっかくだから、味見しちゃえ味見しちゃえ」
 おれは鍋の縁《ふち》から身を乗りだして、指先に水分を掬《すく》い取ろうとした。紅茶を手にしたままの村田も覗き込む。
「んー、だーめだ……ぅ……ぅ……ぅへぶしゅんッ!」
「なんだよ風邪《かぜ》か。お大事にねって……あーれぇ!?」
 物凄《ものすご》く鼻に染《し》みるくしゃみだった。思わず|涙《なみだ》が浮かんできて、おれは鼻と目頭を押さえる。
「ちょっと渋谷、お前いま鼻からすごいもん出したぞ!?」
 痛む目を必死で開けてみると、なんと、鍋の中には小魚が一|匹《ぴき》落ちていた。大きさから想像するに、どうやらシマロンで飲まされた金魚らしい。
「すごいぞ渋谷、これってアレだ、人間ポンプだよ! 今や後継者《こうけいしゃ》が|皆無《かいむ》という国宝級の伝統芸、幻の人間ポンプじゃないの?」
「ひー……痛いわけだー」
 しかも鼻から。それも……。
「……骨になってるし」
 そりゃそうだろう。その場の勢いで金魚を飲んだのは、もう十日ほど前になる。消化されてて当然だし、下からサヨナラしていなかっただけでも|奇跡《きせき》だ。罪もない観賞用の赤いお魚ちゃん、あのときは本当に|残酷《ざんこく》なことをして、しまっ……。
「泳いでるよ!?」
「|嘘《うそ》だろ」
 見事に全身骨なのに、金魚は|鍋《なべ》の中をすいすいと泳いでいる。肉が付いていた頃《ころ》よりも、寧《むし》ろ身軽でスピーディーだ。こんな伝統芸能は見たことがない。どうなってるんだ、おれの胃腸。
「これはまさか……幻《まぼろし》の骨魚どんの稚魚《ちぎょ》では!?」
「な、なにそれ」
「骨飛族や骨地族と同様に、骨に似た|身体《からだ》で生きてる水棲《すいせい》種族だよ! |滅多《めった》に見られない稀少《きしょう》な存在だから、骨魚どんって呼ばれて縁起《えんぎ》物|扱《あつか》いされてるんだ! いやー縁起がいい。これを見ると骨密度がアップするんだ。会うだけでステータスアップのお得キャラだよ。何してんだよ渋谷、早く捕獲《ほかく》しなきゃ! こんなに小さいんだ、鍋底かどこかに紛《まぎ》れちゃったら、恐《おそ》らくもう二度と会えないぞ!?」
「え、ええ!? ほ、捕獲?」
 おれは慌《あわ》てて右手を伸《の》ばし、泳ぐ食べ残しを掴《つか》もうとした。骨魚どころか水面まで、指の先さえ届かない。塀《へい》を乗り越《こ》える要領で、鍋の縁《ふち》に飛びついて腰《こし》で支える。上半身をドラム缶に突《つ》っ込むような体勢で、やっと指先が魚の背ビレに触《ふ》れた。
「やた、届い……」
 ちくりと棘《とげ》が刺《さ》さった痛みがあって、世界がぐるりと反転した。|天井《てんじょう》だった場所が足の下になり、鍋底がすぐに頭上に|迫《せま》る。まずい、おれは巨大鍋に落ちたのだ、このままでは分厚い鋼鉄で脳天|直撃《ちょくげき》だ。
「む、村田っ、引っ張れ、引っ張ってくれー……ぽふっ」
 上半身が水中に投げ込まれる。目と鼻と耳と口から海水が流れ込んできて、ああこれが海月のだし汁《じる》かなんて、|呑気《のんき》なことを考えた。だってこれ鍋だから、そんなに深くないし。村田が引き上げてくれるはずだし……まさか……。
 いつかくるとは思っていたが、まさかこのタイミングだとは思わなかった。よりによって海でも湖でもなく、巨大ドラム缶鍋とも思わなかった。そして自分が人間ポンプをマスターしているとも……ごがば。
「渋谷ーっ」
 急速|潜行《せんこう》で吸い込まれるおれの耳に、村田の声はどんどん遠くなってゆく。もう何回も通い慣れた道だから、|今更《いまさら》パニックになったりはしない。こいうときはリラックスして、周りの景色でも楽しめばいいのだ。ひたすら潜《もぐ》っていくおれの目の前を、気持ちよさげに泳ぐ魚の骨。
「ああー、切っ掛《か》けは骨魚どーん……」
 あとはもう、お久しぶりねの、スターツアーズ。
 
 白い光を長いこと受けすぎて、|目蓋《まぶた》の裏が灼《や》けるように痛い。
 四肢《しし》を伸ばして大の字に寝転《ねころ》がったまま、おれは波の音を聞いていた。
 ああ、夏だ。そして海だよ。
 真夏の日差しが胸や腹を|容赦《ようしゃ》なく温め、背中には濡《ぬ》れた熱い砂の感触《かんしょく》がある。ただ、どこより熱く痛いのは頬《ほお》と目蓋で、それ以外の部分はじっとりと蒸《む》されて不快なだけだ。目を開けて息を吸わなくてはと、命令を下す脳ばかりが焦《あせ》る。身体は一向に指示を実行できなくて、指の先も動かせない。
 帰ってきた、それは判《わか》っているのだが。
 ひどく遠い所から、村田の自嘲《じちょう》気味の|呟《つぶや》きが聞こえた。|呆《あき》れて笑っているようだ。
「会う前に地球に戻《もど》っちゃったよ。よっぽど相性が悪いんだねえ」
 それ|誰《だれ》のことと|訊《き》きたかったのだが、声もだせなければ指文字も書けない。
 太い指で鼻と顎《あご》を掴まれて、思い切り上下に引っ張られる。なになにー? と問い返す間もなく、おれの胸に張り詰《つ》めた筋肉が触れた……筋肉が……。
「うわあーっ!」
 全身の神経がいきなり呼び覚まされて、穴という穴から|汗《あせ》が噴《ふ》き出した。覆《おお》い|被《かぶ》さっていた競泳パンツ一丁の青年を、|両腕《りょううで》全体で突き飛ばす。
「渋谷セーフ! かろうじてギリギリセーフ!」
「おーああひゃああっぶねえとこだったーぁ」
 親切なライフセーバーのおにーさんは、唇《くちびる》を押さえて淋《さび》しそうに座っている。救助してもらって感謝はしているのだが、その両膝《りょうひざ》を合わせたお嬢《じょう》さん座りはどうよ。彼は一回|咳払《せきばら》いをすると、諭《さと》すような口調で話し始める。
「君たちね、いくら仲がいいからって助けに行ったお友達まで|溺《おぼ》れたら意味無いじゃないの。それに海に入るのにその格好は何よ。水を吸って重くなった服は、手足の自由をいっそう|奪《うば》うのよ」
「あ、はあ」
「海に入るときは男も女もピチピチビキニ。これ鉄則、いい? これ鉄則よ?」
 自分の身体に目を落とすと、ビキニどころか立派な冬服を着込んでいる。ぐっしょり濡れた厚い布は重苦しく、胸まで締《し》めつけるようだった。
 疲《つか》れ切って岩に寄り掛かっていた村田健が、ライフセーバーにぽつりと|尋《たず》ねる。
「女子大生は?」
「だーれ、それ。ああ、水着を流しちゃった娘《こ》? あの娘達ならぼくが厳重に注意しておきました。遊泳禁止の場所で遊んでからに、ペンションのバイトくんに後始末までさせるなんて。参考のために事情|聴取《ちょうしゅ》させてって言ったら、ぱーっと風みたいに逃《に》げちゃいました」
 毎年、正義の夏を過ごして灼けた肌《はだ》は、小麦色を通り越して茶色になっている。逆三角形の鍛《きた》えられた身体を誇《ほこ》るように、腰に両手を当てて立つ。顎に食い込む水泳キャップの紐《ひも》。
「とにかく君たち、肉体|疲労《ひろう》時の海は危険よ。浜辺《はまべ》で休む勇気を忘れないように」
「はぁーい……」
 ミスター・救助人が行ってしまってからも、おれたちはしばらく砂の上に伸びていた。|互《たが》いに何かを言いかけるのだが、タイミングが良すぎたり悪かったりで、なかなか会話が続かない。
「まったく、薄情《はくじょう》なもんだよね」
 動かずに|随分《ずいぶん》過ごした頃になって、村田がやっとおれの|傍《そば》まで寄ってきた。
「彼女達のために溺れたようなものなのにさ」
「ああ」
「渋谷」
 湿《しめ》った砂の上に膝を抱《かか》え、村田は言葉を飲み込んだ。何度目か判らないくらいおれの苗字《みょうじ》を呼んだ後に、やっと短くこれだけ言った。
 
「夢じゃないからな」
 
 おれはたっぷり七秒|黙《だま》ってから、こみ上げる笑いと|一緒《いっしょ》に訊いた。
「何が? 骨魚どんが?」
「……ばかだなっ、魚の骨のことじゃないよッ」
 ちょうどその時、間の抜《ぬ》けた|破裂《はれつ》音が空に|響《ひび》き、こじんまりとした白煙《はくえん》がたなびいた。夏休みを|純粋《じゅんすい》に遊びまくる若い連中が、昼間の花火に興じているのだ。
 友人は呻《うめ》きながら身体を起こし、痛む筋肉に無理を言わせて背伸《せの》びをした。
「そういえば渋谷、今夜って観光協会の花火大会だよ」
「ちぇ、どうせおれはペンションで皿洗いで、お前は女子大生にチャレンジなんだろ」
「そんなことないよー、洗い物も手伝うからさ。早く済ませて浴衣《ゆかた》の女子と花火見ようよ」
 溺死《できし》しかけた二人組なのに、おれたちときたら|妙《みょう》に上機嫌《じょうきげん》だ。
「|綺麗《きれい》だよー。シークレットスポット教えるからさー。そこだとまるで星が降ってくるみたいだよ。な? 婚約《こんやく》者のいぬまに|魂《たましい》の洗濯《せんたく》して、|MP《マジックポイント》がっちり増やしておかないと」
「まったく、秘密スポットだかミスタースポヅクだか知らないけど……なんだって?」
「別れた女と同じタイプを紹介するのもなんだけどさー」
 濡れた肘《ひじ》でおれの|脇腹《わきばら》を小突《こづ》いてくる。
「マスクメロンの間《ま》に泊《と》まってるプラチナブロンドちゃんなんかどう?」
 髪《かみ》を掴んで揺《ゆ》さぶってやりたくなった。
 友達が好きすぎて、笑いがとまらない。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%