よく晴れた、春の朝の事です。
 いかとみはいつものように、獲物を探しに山を登っていきました。
「やあ、いい朝だなあ」
 いかとみが空を見上げると、すみきった青空に白いかすみのような物がいくえにもたなびいているのが見えました。
 その白い物は不思議な事に、フワフワと空を飛んで近くの湖に降りていきました。
「あっ、あれは白鳥か? 八羽もいるぞ」
 いかとみは、急いで湖に近寄りました。
 すると湖で泳いでいるのは白鳥ではなく、今まで見た事もないほど美しい八人の乙女たちだったのです。
 いかとみが、ふとあたりを見回すと、少しはなれた松の枝にまっ白い布がかけてあります。
「なんてきれいな着物だろう。これはきっと、天女(てんにょ)の着る羽衣(はごろも)にちがいない。
 持って帰って、家宝(かほう)にしよう」
 いかとみは、そのうちの一枚をふところにしまいました。
 やがて水浴びをしていた天女たちは水からあがると、羽衣を身につけて空に舞い上がっていきました。
 でも1人の天女だけが、その場に取り残されてしまいました。
 いかとみが彼女の羽衣を取ってしまったため、天に帰れないのです。
 しくしくと泣きくずれる天女の姿に心を痛めたいかとみは、天女に羽衣をさし出しました。
「まあ、うれしい。ありがとうございます」
 にっこりと微笑む天女にすっかり心をうばわれたいかとみは、羽衣を返すのを止めました。
「この羽衣は返せません。それよりも、わたしの妻になってください」
 天女は何度も返して欲しいと頼みましたが、いかとみは返そうとしません。
 そこで仕方なく、天女はいかとみの妻になりました。
 そして、三年が過ぎました。
 いかとみと天女は仲良く暮らしていましたが、天女はいつも天にある自分たちの世界に帰りたいと思っていました。
 ある日、いかとみが狩りに出かけたときの事。
 家の掃除をしていた天女は、天井裏に黒い紙包みがあるのに気づきました。
 その紙包みを開けてみますと、あの羽衣が入っていました。
「・・・どうしよう?」
 天女は、悩みました。
 いかとみと暮らすうちに、いかとみの事が好きになっていたのです。
 でも、天の世界に帰りたい。
 このままいかとみの妻として地上で暮らすか、それとも天の世界に帰るか。
 さんざん悩みましたが、天女は帰る事にしました。
 その頃、いかとみは獲物をたくさんつかまえたので、その獲物を町で売って天女のためにきれいなクシを買って帰る途中でした。
 ふと空を見上げると、
 いかとみの妻の天女が天に帰る姿が見えました。
「あっ、まっ、まさか! おーい、待ってくれー!」
 いかとみは力の限り天女を追いかけましたが、そのうち天女の姿は見えなくなってしまいました。
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