ある日のこと、病気のおきさきが、急にサルのきもを食べたいと言い出しました。
サルのきもは、どんな病気でも治すと言われているからです。
そこで王さまは、クラゲにサルのきもを手に入れてくるように命じました。
命じられたクラゲは、はりきって、海の底からサルがたくさん住んでいる、サルが島へやってきました。
ちょうど一匹のサルが、波うちぎわで遊んでいます。
「よう、サルさん、こんにちは」
「おや、クラゲくん、いい天気だね」
「ねえ、サルさん。きみ、竜宮へ遊びにこないかい? とってもいい所だよ」
「竜宮! いくいく! ・・・でも、だめだよ。ぼくは泳げないんだもの」
「それなら大丈夫さ。ぼくの背中に乗せていってあげるよ」
「ほんとうかい、うれしいなあ」
サルは、すぐにクラゲの背中に飛び乗りました。
クラゲは、スイスイ泳いで海の中へ。
「うわっ、海の中ってきれいだなあ」
珍しい景色に、サルは、ただうっとり。
「さあ、サルさん、もうすぐ竜宮だよ」
ところで、少しまのぬけたクラゲは、うっかりサルに聞いてしまいました。
「ねえ、きみ、きもを持ってる?」
「きも? どうして?」
「竜宮のおきさきさまが、食ベたいんだって」
(そ、それでぼくを。こりゃ、たいへんだ!)
サルはビックリです。
きもを取られては、死んでしまいます。
でも頭のいいサルは、少しもあわてず、残念そうにいいました。
「そりゃ、あいにくだな。きょうはお天気がいいから、木の上にほしてきたよ。クラゲくん、ご苦労だけど取りに帰ろうよ」
「そうかい。しかたがないや。じゃ、ひき返そう」
そこでクラゲは、また、サルが島へ逆もどりです。
島につくと、サルはあわてて飛び降りて言いました。
「やーい、やーい、クラゲのおばかさん。きもは木の上なんかにありゃしないよ。ぼくのからだの中さ。アハハハハッ」
「ええっ! ほんとうかい」
クラゲはくやしがりましたが、もうしかたがありません。
トボトボと竜宮へ帰っていったクラゲは、
「この、まぬけクラゲめっ!」
「お前なんか、消えてしまえ!」
王さまやさかなたちに、メチャクチャにたたかれました。
クラゲが今のように骨なしになったのは、このためだそうです。