たろ助は、とてもなまけ者で、仕事もしないで毎日プラプラ遊びくらしています。
今日も朝からプラプラ遊んでいると、たろ助を呼ぶ声がしました。
「もしもし、たろ助どん」
「うん? だれだ?」
声のする方を見ると、小さなつぼがころがっています。
「つぼか。こりゃあ、ええもん見つけたぞ」
と、拾い上げると、つぼの中には、ネズミぐらいの大きさの、小さな男がいるではありませんか。
「わわっ! お前は、だれだ!」
「たろ助どん、わしはお前さんのように、ブラブラ遊んでいるなまけ者が大好きでな、今日からお前さんの家でくらしたい。どうか連れていってくれ」
「そうか。なら、こいや」
つぼを家に持って帰った、たろ助が、男をつぼから出してやると言いました。
「まあ、ゆっくりせいや。すまんが、留守番をたのむぞ」
たろ助があっちこっち、ブラブラ遊んでから家に帰ってみると、見たこともない男が、大の字になってねています。
「おい起きろ! お前はどこのだれだ?!」
「おい、忘れたのか? つぼから出てきたわしを」
「えっ? ・・・ひえっ! なんでまた、そう大きうなった」
「実はな、お前が遊んでくれると、わしの体が大きくなるんだ。だから、これからも、よう遊んでくれや」
ビックリしたたろ助ですが、次の日も遊びに出かけました。
そしてタ方帰ってくると、男はまた大きくなって、頭が天井につきそうです。
たろ助は、いつ踏みつぶされる心配で、一晩中、部屋のすみでヒヤヒヤしていました。
そして、朝になるのを待ちかねて、たろ助は家から逃げるように飛び出すと、その日もタ方までブラブラと遊んで帰りました。
すると、家の戸口から大木のような足がニョキニョキと出ていて、窓からは、太い手が飛び出していました。
「うひゃーっ、こりゃあ、たまげたー!」
たろ助は、家の中に入ることができません。
「やれやれ、とんだことになっちまったぞ。明日も遊んでいると、家をつぶされてしまうな」
たろ助は次の日、いやいや畑仕事をしました。
夕方、家に帰ってみると、男は二回りほど、小さくなっていました。
「ははん、おらが働けば、小そうなるんだな」
それからたろ助は、毎日毎日働きました。
それにつれて、男はだんだん小さくなっていきます。
とうとう、つぼから出たときのように、小さくなった男は、
「たろ助どん、ここは住みにくうなった。もう一度わしをつぼに入れて、道ばたに捨ててくれや」
「ほいよ、承知した」
たろ助は小さい男をつぼに入れて、道ばたに捨てました。
それからも、たろ助は毎日まじめに働いて、お金持ちになったということです。