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トラとキツネ

时间: 2016-10-22    进入日语论坛
核心提示: むかしむかし、中国のトラが海を越えて、日本へとやって来ました。 日本のキツネは頭が良いと聞いたので、キツネと勝負をしよ
(单词翻译:双击或拖选)
 むかしむかし、中国のトラが海を越えて、日本へとやって来ました。 
 日本のキツネは頭が良いと聞いたので、キツネと勝負をしようと思ったのです。 
 トラはキツネを見つけると、さっそく言いました。 
「俺は中国から来たトラだ。何でもよいから、お前と勝負をしたい」 
「ふーん、勝負ねえ」 
 キツネは、竹やぶを見ながら言いました。 
「勝負なら、竹やぶの中での早歩き競争はどうですか? 時間は明日の朝。こっちの竹やぶの端から出発して、反対側の端まで先に到着した方が勝ちです」 
「よし、それはいい」 
 トラは、ニヤリと笑いました。
 トラは竹やぶの中に住んでいるので、竹やぶの中での早歩き競争なら勝ったも同然です。 
 けれどキツネには、ちょっとした考えがあったのです。
 キツネはトラと別れると、すぐに仲間のキツネを集めて早歩き競争の事を話しました。 
「いいか。ここで負けたら、我々日本のキツネの恥になる。 
 そこでだ。
 今夜のうちから、みんなはあちこちに隠れていてほしいんだ。 
 そしてぼくが、
『よーい、どん!』
と、大声で言ったら、ぼくのふりをして先に反対側の端で立っているんだ。 
 中国のトラは、キツネと言う生き物はぼくしかいないと思っている。 
 だから反対側の端にキツネが立っていたら、てっきりぼくが先についたと思ってくやしがるだろうよ」
「よし、わかった」 
 仲間のキツネは、さっそくあちこちに隠れました。
 さて、朝が来ました。 
 トラは大はりきりで、竹やぶの出発点にやって来ました。 
「では、トラさん、始めますよ」 
 キツネはそう言うと、大きな大きな声で 
「よーい、どん!」 
と、言いました。 
 するとトラは、さっそく早足で竹やぶの中を歩き始めました。 
 一緒に歩き始めたキツネを引き離して、ぐんぐんと竹やぶを進んで行きます。 
「わはははは。おろかなキツネめ。このおれにかなうものか」 
 トラは、大笑いです。 
 ところが反対側の端近くに来て、トラはびっくりです。 
 なぜなら、ずっと後ろにいるはずのキツネが、にやにや笑って立っていたからです。 
「なぜだ!」 
 トラはくやしがって、キツネに言いました。 
「もう一度勝負だ。ここから元の場所まで競争しよう!」 
「いいですよ。では」 
 キツネは、大きな大きな声で、 
「よーい、どん!」 
と、言いました。 
 トラは、さっきよりも頑張って、竹やぶの中を進みました。 
「よし、今度こそおれさまの勝ちだ」 
 そう思ったのですが、最初の場所にはすでにキツネが立っています。 
「トラさん。遅かったですねえ」 
 トラは、またまたくやしがり、もう一回、もう一回と、それから七回も競争を繰り返しました。 
 でも、何度やっても同じ事です。
「ちくしょう、おれさまが負けるなんて!」
 くたくたにくたびれたトラは、くやし涙をこぼしながら中国へ帰って行きました。
 けれど中国に帰ったトラは、キツネに負けた事がどうしてもくやしくて、自分の家来のネコに命令しました。 
「お前たち、日本へ行って、キツネに噛みついてやれ!」 
 でもトラが日本へ送ったネコは、とてもあわてん坊のネコで、『キツネ』と『ネズミ』と聞き間違えて日本に来てしまったのです。 
 それで今でも、ネコはネズミを見つけると、追いかけまわすのだそうです。
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