出家の後、洛南日野の方丈の庵で書かれた『方丈記』は、日本三大随筆のひとつとされ、仏教文学、隠者文学として名高い。長明が57歳のときに成立したとされ、前半は、中世的な無常観をもって、長明が直接体験した五大災害(安元の大火·治承の辻風·福原遷都·養和の飢饉·元暦の大地震)を描写、この世の無常とはかなさを実証している。
後半は、まず自身の家系、住環境について述べ、続いて、出家遁世して住んだ大原山のこと、日野に移り方丈の庵を築いてからの閑寂な生活を、仏道への心の傾斜を見せつつ描いている。『枕草子』や『徒然草』のように分段形式はとらず、一貫して流れる筋を一気呵成に展開させているのが特色。