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過熟の実22

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:22 脅迫者「今 何て言ったの?」 と、希代子は訊いた。 はっきり聞こえてはいたのだが、自分の耳が信じられなかったのである
(单词翻译:双击或拖选)
 22 脅迫者
 
「今 ——何て言ったの?」
 と、希代子は訊いた。
 はっきり聞こえてはいたのだが、自分の耳が信じられなかったのである。
 つい、声が高くなっていたらしい。
「希代子ちゃん。もう少し小さい声で」
 と、津山隆一は言った。
 希代子は周囲へ目をやったが、ホテルのラウンジは半分ほどしか客がいないので、聞こえる気づかいはない。
「叔父さん……。白石に脅迫されたって ——。それ、どういうこと」
「希代子ちゃんに直接関係はない」
 と、津山はコーヒーを飲みながら言った。「白石は、僕の所へ仕事を持って来た。誰の紹介で来たのか、どこで僕の名を聞いたのか、さっぱり分らないが、ともかく会うことにした。ところが ——そこで白石は君とのことを持ち出した。つまり君の叔父に、自分と係《かかわ》りのある仕事をしている人間がいると調べて来たんだ」
「でも、そんなことで脅すなんて ——。はねつけてやればいいのよ」
「分ってる」
 と、津山は肯いて、「もちろん僕もそうしたさ。そんな仕事はいらない、と言ってね」
「それで?」
「すると、白石はニヤッと笑って……。まあ、ずいぶん手間ひまかけて、僕のことを調べていたらしい」
 希代子は、白石が水浜と奈保の写真をとったことを思い出した。
「何か叔父さんの弱味をつかんだのね」
 と、希代子は言った。「女の人?」
「それだけなら、女房もそうびっくりしないさ」
 と、津山はとぼけた。「が ——子供となると」
「子供?」
「これは オフレコだ。君もジャーナリストだろ。秘密は守ってくれよ」
 希代子は 呆《あき》れて、
「叔父さん、どこかに子供作ってたの?」
「うん。 ——ま、うちの社のOLと付合っている内にね。次の仕事を見付け、部屋も借りてやって、子供は堕(おろ)してくれと言ったんだが、聞きやしない。それを白石はどうやってか調べ出し、僕も一緒にいるところを写真にとっていた」
「そう……」
「認知してくれとしつこく言われてる。女房が知ったら、やっぱりただじゃすまないだろうからね。白石の話にのるしかなかったんだ」
「それは ——叔父さんが何をしようと、私の口出しすることじゃないでしょうけど、そのせいで私、ひどく迷惑したわ」
「分ってる。しかしね、僕の身にもなってくれ。奈保は難しい年ごろだし、そんなことで家の中がもめるのは避けたかった」
 奈保の名前を聞くと、希代子は何とも言えなくなってしまった。
 もちろん、津山がこんな所で奈保を引張り出すのは 卑《ひき》怯《よう》と言うしかないが、といって、自分は何をしているのか。
 津山のしたことより、希代子のしたことの方が、奈保にとっては辛いはずだ。
「それで……」
 と、希代子は言った。「白石は今、どこにいるの?」
「分らん」
 と、津山は首を振った。「君にあの封筒を渡して、白石から電話があったのでそう言った。 ——それきり、白石からはプッツリと連絡が途絶えた。君、何か知らないか?」
「何も」
 と首を振って、「あんなに長いこと、会ってなかったのよ」
「ふむ……。な、希代子ちゃん、君も白石とのことでは、色々人に知られたくないこともあるだろう。もし白石から何か言って来たら、僕にすぐ知らせてくれないか」
 要するにそれが言いたかったのか。 ——希代子は笑い出したくなった。
「分ったわ」
 と、希代子は肯いた。「それだけ?」
「まあね」
 津山は少しホッとした様子で、「君が僕の誘いにのるとは思えないからね」
「それは正しいわ」
 と、言ってやって、「でも ——どうするつもりなの、その子供のこと」
「さあね」
「勝手な……」
「もちろん、そうさ。分ってる」
 と、津山は言った、「しかし、あの子を一時は本気で好きだったんだ……」
  嘘《うそ》ではないだろう、と希代子は思った。
 津山のような男は、いつも自分は「本気」で、だから「正しい」と信じている。そんなことをしながら、「罪の意識」に苦しむことなど、ないのだろう。
「もう帰るわ」
 と、希代子はコーヒーを飲み干して、「ここだけ払って。タクシーで帰るから」
「送るよ」
「結構」
 と、席を立って、「叔父さんも、明日会社があるんでしょ」
 そう言って、希代子は足早に歩き出した。
 
「どこへ行ってたんですか」
 居間に、水浜が座っているのを見て、希代子はびっくりした。
「起きたの。 ——ごめんなさい、叔父さんから電話で……」
「心配しましたよ。白石と会ってるのかと思って。こんな時間だし」
「そうね。悪かったわ」
 水浜は不機嫌そうに、
「メモでも置いてって下さい。気が気じゃなかったんですから」
「ごめんなさい」
 希代子は、水浜の隣に座って、「でも ——そんなに心配してくれるなんて、嬉しいわ」
「あなたに何かあったら……」
 水浜が希代子の手を取って唇をつけた。
 希代子は水浜の肩を抱いた。二人は抱き合って、そのまま ——ソファから落っこちてしまった。
 そして一緒に笑い出した。
 一緒に笑える。 ——何てすてきなことなんだろう、と希代子は思った。
 泣くのは一人でいい。悩むのも。喜ぶのも。しかし、一緒に笑う相手がいるかいないかでは大違いなのである。
「希代子さん!」
「なあに?」
「お腹が空いちゃったんですが」
「ええ? それで起きたの? 夜食でも作って、一緒に食べる?」
「僕もやります」
 と、水浜は張り切って言ったのだった。
  ——ラーメンを作って食べながら、
「お弁当屋さんのお弁当とラーメンじゃ、ロマンチックとはほど遠いわね」
 と、希代子は言った。
「関係ありませんよ、僕は希代子さんと会えればいいんです」
「でも ——この次は少しちゃんと食事しましょ」
「それより、叔父さんって、奈保ちゃんのお父さんでしょ?」
「ええ」
「何の話だったんです?」
 希代子は少しためらって、
「白石のこと。行方が分らないってことで、こっちに何か言って来てないかって」
「どうしてその叔父さんが白石のことを気にするんです?」
「さあね。 ——よく分んないわ。何かわけがあるんでしょ」
 津山の話を、すべて水浜にしゃべることはできない。もちろん、水浜を信じていないのではなくて、津山が子供のことを打ち明けたのは、希代子ならしゃべらないと思ってのことだと思うからだ。
「あなたはもう、白石のことなんか忘れて」
 と、希代子は言った。
「奈保ちゃんの方は……。どう答えるんですか?」
「さあ……」
 希代子は考え込んで、「一晩寝てから決めるわ」
 と言った。
 
 しかし、翌日、午前十時ごろ起き出した希代子は、結局、何の決心もついていなかったのである。
 水浜の姿はもうなくて、コーヒーがいれてあり、メモで〈大学へ行きます。また会って下さい。水浜〉とあった。
 コーヒーの匂いが、居間にも漂ってくる。
「やれやれ……」
 と呟いて、希代子は 大《おお》欠伸《あくび》をしながら顔を洗いにバスルームへ入って行った。
  ——編集部へ入ったのは、十一時を少し回っていた。
「おはようございます」
 と、太田がもう仕事をしている。「編集長が会議室へ来いって」
「遅刻で 叱《しか》られるのかしら? いやね」
 と口を 尖《とが》らし、「ゆうべだって、ちゃんとキャプション打ってたのよ」
 と、プリントアウトしたものを編集長の机の上に置いた。
「会議室ね?」
「そうです」
 希代子は 大《おお》股《また》に歩いて行って、会議室のドアを開けたが——。
「編集長!」
 希代子は目を丸くした。 ——倉田が椅子にかけていたのだ。
「おい、遅いぞ」
 と、倉田は言って笑った。「今日、退院したんだ」
「おめでとうございます」
 と、希代子は椅子を引いて座ると、「少しやせましたね」
「このところ、さっぱり来てくれんから、こっちから来た」
 と、倉田は言った。「色々、世話になったな」
「どういたしまして」
「次の仕事がやっと決った。来週から出社する」
「それを待って、病院でさぼってたんですね」
「かもしれんな」
「あの ——幸子さんは?」
 倉田は少し表情をくもらせて、
「あれはまだ入っている。当人に、早く元気になりたいという気持が欠けている、と医者に言われたらしい」
「治る気がないんですか」
「どうかな」
 と、倉田は首を振って、「見舞ってやりたいが、 却《かえ》って良くないかもしれんと思ってな……」
「良くありません」
「こいつ!」
 と、倉田が笑ってにらむ。「しかし、順調に動いてるようじゃないか」
「まあ、何とか助け合いの精神です」
 と、希代子が言うと、倉田は頭を下げて、
「色々、お前に負担がかかって悪かった」
「やめて下さい。 ——私は自分でやれることをやっただけです」
 と、希代子は言った。「今、幸子さんは誰がみてるんですか」
「女房ができるだけ行っているが、でも毎日は無理だし」
「そうですよ。誰か人を雇った方が早いけど、いい人を見付けるのは大変ですよね」
 トントンとドアを 叩《たた》く音がして、希代子が立って行って開けると、
「 ——やあ」
 と、西山専務が言った。
「専務」
 と、倉田が立ち上る。
「まあいい。かけてくれ。来てると聞いて、顔を見に来た。 ——これからどうするか、当てはあるのか?」
「K社へ行きます」
「何だ、同じ業界か。あんまり変り映えしないな」
「それしかできませんし」
 と、倉田は言って、「専務、細川君のことは ——」
「うん。故郷へ帰したいんだが、本人がいやがっている」
 西山は希代子の方へ、「君も大変だな」
 と、声をかけた。
  ——だめだ、と希代子は思った。
 専務自身が諦め切っていないのに、口先だけで話しても、幸子を説得することができないのは当然だ。
「じゃ、今日病院へ行ってみる」
 と、西山は倉田の肩を叩いて、「大切にしろよ、体」
「どうも」
 西山が出て行く。
「 ——さて、仕事の邪魔になるな」
 と、倉田も立ち上って廊下へ出る。
 希代子は、それについて受付の方へ歩きながら、
「また遊びに来て下さい」
「うん、久保田君によろしく」
 倉田は、そう言ってエレベーターへと歩いて行く。その後ろ姿はやはり疲れ、老けて見えた……。
 
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