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過熟の実24

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:24 衝 撃「今晩は」 と、小さく呼びかけると、うっすらと目を開けていた細川幸子は、ゆっくりとベッドの上で頭を向けた。「あ
(单词翻译:双击或拖选)
 24 衝 撃
 
「今晩は」
 と、小さく呼びかけると、うっすらと目を開けていた細川幸子は、ゆっくりとベッドの上で頭を向けた。
「ああ……。希代子さん」
 と、幸子は言った。
「どう? 少しは元気になった?」
 希代子は、ベッドのわきの 椅《い》子《す》に腰をおろした。 ——前に来たときは、幸子は「篠原さん」と呼んでいた。
 名の方を呼ぶようになったことが、いっそう心細さを感じさせた。
「ご心配かけて……」
 病室の中、ということはあるにせよ、まだそう遅い時間ではない。夕食が早いから、「夜」ではあるが、明りも 点《つ》いているし、同じ病室の他の患者も起きていた。
「声に力がないわねえ。ちゃんと食べてる?」
 と、希代子は首を振って、「いつまでさぼってる気?」
 と、少しおどけて言った。
 幸子は 微笑《ほほえ》んで、
「希代子さんはいいなあ」
「何が?」
「いつも元気だし……。そばにいると私にも元気がうつってくるみたい」
「何だか複雑ね」
 と、希代子は苦笑いした。「私だって、人知れず泣くこともあるのにな」
「本当に?」
 幸子があんまり本気でびっくりしているので、希代子は少々気を悪くした。
「女じゃないと思ってるんでしょう」
 と口を 尖《とが》らす。
 隣のベッドで雑誌を読んでいた中年のおばさんが笑い出した。
 幸子も、ちょっと笑った。そのおばさんが希代子の方へ、
「その人が声たてて笑ったの、初めてよ。あんた、才能あるんじゃないの」
「お笑いタレントじゃありませんよ」
 と、希代子は言い返した。
「 ——希代子さん」
「うん?」
「今、好きな人、います?」
 希代子は赤くなって、
「今度は何よ、出しぬけに」
「もしいたら……。逃げないで、飛び込んで行って下さいね。何があっても。 ——好きって気持が 嘘《うそ》でない内に」
「嘘でない内に?」
「ええ。 ——自分をごまかしたり、言いわけしたりしてる内に、段々好きな気持に嘘が混り始めて、濁って来ちゃうから ……。ためらわないで、 真《まつ》直《す》ぐに飛び込んで下さいね。私はもう ……たぶん、そんな恋はできないだろうけど」
「何言ってるの。私より一つ年下のくせして」
 と、希代子が言ってやっているところへ、看護婦が検温に来た。
「じゃあ」
 と、希代子は立ち上って、「また来るわ。 ——じゃ、この次はケンカでもするつもりでね」
「ありがとう、希代子さん」
 と、幸子は言った。
 希代子は廊下へ出て歩きかけたが ——。ふと、足を止めて、病室を振り返った。
 誰かが呼んだような、そんな気がしたのである。声が聞こえたというわけではなかったのだが。
 病室から看護婦が出て来て忙しげに歩いて行く。
 希代子は肩をすくめて、出口の方へと歩き出した。
 
「何だ。 ——珍しいじゃないか」
 と、藤村涼は言った。「上れよ」
「お休みのところ、ごめんなさい」
 と、希代子は上って、「奥さんは?」
「子供を連れて実家へ行ってる」
 と、居間へ入って、「 俺《おれ》一人さ、座れよ」
「へえ、珍しい。 ——いいの?」
「構うもんか」
 藤村はコーヒーをいれてくれた。
「アルコールの気分か?」
「そうじゃないけど……。やっぱりまずいわよ。百合子さんのいないときに」
「おいおい、妙にこだわるね」
 と、藤村が笑って、「俺に気があったのか、さては?」
「あったわよ」
 と、希代子は言った。「知ってたくせに」
 沈黙がしばらく続いた。 ——藤村は、
「クリームは?」
 と訊いたが、希代子は黙って首を振った。
「たとえ知ってたとしても、君は俺に向かないよ」
「決めないで」
 と、コーヒーをゆっくりと飲んで、「私は、そう他の人に百パーセント分られちゃうほど単純な人間じゃないわ。あなたの知らない所も、想像のつかないような面も、いくらも持ってる。 ——そんな風に見えないとしたら、私がそう見せてないからよ」
「なるほど」
 と、藤村は肯いた。「いや、すまん。君のことを、俺はいつも見てる通りの人だと思ってたからな」
「私って、よっぽど名優なんだ。みんなそう思ってるんだから」
 と、希代子は笑って、「恋のためなら、嘘をつくし、人を傷つけたって平気よ」
「恋愛中か」
「藤村さんのことは 諦《あきら》めなきゃしょうがないからね。今や大学生の男の子と恋愛中。凄《すご》いもんでしょ?」
「ほう。大学生? いくつだ?」
「二十一。 ——高校生の 従妹《いとこ》の彼氏を奪っちゃった」
「やるね」
「恨まれるだろうなあ、もし分ったら。殺されるかもしれない」
「覚悟の上か」
「死にたくないわね、まだ。でも、だからって、好きだって気持を止められる?」
 藤村は何も言わなかった。 ——希代子は、ちょっと息をついて、
「ごめんなさい。酔ってもいないのに、あなたに絡んで」
 と、笑った。
「いや、いいさ」
「 ——帰るわ」
 と、希代子は立ち上った。
 
 タクシーの中で、希代子は目を閉じていた。
 眠っているわけではない。何か運転手から余計なことを話しかけられたくなかったのである。
  ——覚悟を決めなければならない。
 奈保を傷つける覚悟か。それとも自分が傷つく覚悟か。
 希代子は、今日、奈保が突然現われたときの、自分のうろたえように、自分でもショックを受けたのである。今まで、自分はもっと冷静に立ち回れると思って来たのではないか。
 あのときだって、とっさに言いわけを用意するくらいのことはできたろう。
 出がけに水浜からファックスが来て、仕事の前に寄ってみたの、とか……。
 そんな口実を思い付くぐらい、いともたやすいことだったのに。それなのに、実際には希代子は見っともなく逃げ出して隠れていたのだ。
 あれは一体何だったのだろう?
  ——マンションに着くと、希代子はロビーへ目をやった。
 水浜が待っていてくれるかもしれないと思ったのだ。しかし ——ロビーには人影がなかった。
 ちょっとがっかりしている自分に苦笑しながら、料金を払い、タクシーを出た。
 部屋へ戻りながら、ファックスか留守電が入っているだろう、と思っていた。
 部屋へ入って明りをつけると、ファックスは入っていないが、留守電のメッセージが点滅している。
 急いでボタンを押した。再生が始まり、ピーッと甲高い音がすると、
「希代子。 ——俺だ」
 一瞬、希代子は青ざめた。白石のことは全く忘れていた。
「もうそろそろ、お前も考え直したころだろう。俺は、いつまででも待ってる。電話してくれ ——」
 希代子はメモを取らなかった。白石の言う番号が聞こえないように耳をふさいだ。
 録音は、それ一つだ。
 希代子はテープを巻き戻した。これでテープは消去されている。
 希代子は、ソファにぐったりと座り込んだ。
  ——急に、ひどく疲れが押し寄せて来て、希代子を圧倒した。
 水浜はどうしたのだろう。 ——希代子は、水浜の部屋へ電話をかけてみたが、留守電の応答テープが回っている。
 そのまま切った。たぶん、帰ったらかけて来るだろう。
 希代子は、電話が鳴るのを、じっと待っていた……。
 
 希代子はハッと目が覚めた。
 電話? ——電話が鳴っただろうか?
 電話を待っている内、ソファで眠ってしまったのだ。立って行ってみたが、留守電は入っていなかった。
 時計へ目をやる。もう夜中の三時だった。
 水浜は、もう寝てしまったのだろうか。
 希代子は、諦めて風呂へ入ろうとバスルームへ歩いて行った。 ——もう遅い。シャワーだけにしておこうか。
 服を脱いで、シャワーを出し、熱くなるのを待って、思い切り浴びる。全身を、熱いお湯が包むように流れて行く。
 電話……。電話?
 かすかに、鳴っているのが聞こえるようだった。急いでシャワーを止めると、ルルル、と電話の鳴っているのが耳に届いた。
 急いでバスルームを飛び出し、バスタオルを体へ押し当てただけで居間へ駆けて行った。
 留守電の応答テープが回っていたが、その途中で受話器を上げた。
「 ——もしもし?」
 間があって、
「希代子か」
「え?」
 一瞬、白石かと思った。
「倉田だ」
「ああ……。びっくりした!」
  濡《ぬ》れた髪からポタポタと水が落ちてくる。「こんな時間に、どうしたんですか」
 と、希代子はタオルで頭を拭きながら言った。
「今、病院から電話で ——」
「え?」
「幸子が死んだ」
 希代子は、しばらくその意味が分らなかった。
「そんな……。今日 ——というか昨日、会って来たんですよ、私」
「そうか。 ——今夜、病院の屋上から飛び下りたそうだ」
 と、倉田は言った。「これから行ってくる」
「飛び下りた……。幸子さんが?」
 声がかすれた。
「何があったのか分らんが……。ともかく、知らせておこうと思ってな」
「大丈夫ですか」
「ああ。 ——こんな時間に、すまん」
「あの……。私も行った方が?」
「いや、大丈夫だ」
「でも ——行きます。起きてるんで、今」
「そうか? すまんな」
 倉田は力なく言った。
 希代子は電話を切ると、急いでバスルームへ駆け戻った。
 幸子が ——。死んだ。
 やっとその事実が実感されて、髪を乾かすドライヤーを持つ手は震えていた……。
 
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