料理のうまいまずいは塩かげん一つで決まる——と言っても、言い過ぎではありません。それほど塩はたいせつな調味料です。塩は調味料としての役割以外に、塩を加えることによって、材料の持ち味を引き立てる役目も持っています。この点、|しょうゆ《ヽヽヽヽ》や|みそ《ヽヽ》のように、調味料みずからの味をつけるのとは、だいぶ役割がちがっています。
塩味はおいしいと感じられる味覚領域が非常にせまく、淡すぎてももの足らないし、濃すぎれば塩味の強さが先に立って、ものの真味を味わう|ゆとり《ヽヽヽ》をなくしてしまいます。そこに塩かげんのむずかしさがあると言えましょう。
越えかねて巌をめぐりぬ春の潮
吸いものの塩かげんの理想を示すような句ですが、吸いものやスープのような飲みものの場合は、材料の全体量の一%を越えるか越えないかの塩分濃度がおいしいと感じられます。これがごはんといっしょに食べるおかずなどの場合は、むしろ一%以上であるほうがおいしく感じられ、二%を越すと逆に塩からく感じますので、そのかげんに注意しましょう。調理別の塩かげんのおおよその見当は、次のとおりです。
[#この行1字下げ]吸いもの・ゆでもの=〇・九〜一%、煮もの=一・五〜二%、生野菜のふり塩=一%内外、魚肉の塩味=一〜二%、一夜漬け=二・五〜三%、漬けもの(短期間)=四〜五%、漬けもの(長期間)=七〜一〇%程度。
煮ものなどは、しょうゆをふくめての見当です。調味料のうち、みそは赤みそで一〇〜一五%、白みそで六〜一〇%、ソースは一〇%、しょうゆは約一八%の食塩を含有しています。しょうゆを使う際に、しょうゆ大さじ一杯と塩小さじ1/3がつりあうということを覚えてお使いになると便利です。
俗に「塩は塩を呼ぶ」と言いますように、いちどに大勢の料理を作るとき、一人分の倍数よりはいくぶん控えめに塩を用いないと、必要以上に塩味が濃くなります。
塩かげんというとき、分量ももちろんたいせつですが、それ以上に心しなければならないのは塩を入れるときのタイミング。他の調味料と合わせて使うとき、塩は浸透しやすいので、味の浸透しにくいものから順次加えるようにするのが原則です。たとえば、砂糖をいっしょに使う場合は、必ず砂糖を最初に入れ、砂糖の味が材料によく浸透したころ合いを見計らって塩を入れます。しょうゆの場合は逆に塩を先に、しょうゆを後に入れたほうが好ましい味が生まれます。
お汁粉や甘酒の仕上げに、ほんのちょっぴり塩を入れると、微妙な味わいが生まれるのは、周知のことですが、これは砂糖と塩とでは人の味覚に伝わる速さがちがうからで、まず塩味が先に、次の瞬間に砂糖の甘味が伝えられ、この味の対比によって、甘味がウンと強く感じられるからです。このような塩の性格をよく覚えて、塩かげんを誤らぬようにしましょう。
塩味はおいしいと感じられる味覚領域が非常にせまく、淡すぎてももの足らないし、濃すぎれば塩味の強さが先に立って、ものの真味を味わう|ゆとり《ヽヽヽ》をなくしてしまいます。そこに塩かげんのむずかしさがあると言えましょう。
越えかねて巌をめぐりぬ春の潮
吸いものの塩かげんの理想を示すような句ですが、吸いものやスープのような飲みものの場合は、材料の全体量の一%を越えるか越えないかの塩分濃度がおいしいと感じられます。これがごはんといっしょに食べるおかずなどの場合は、むしろ一%以上であるほうがおいしく感じられ、二%を越すと逆に塩からく感じますので、そのかげんに注意しましょう。調理別の塩かげんのおおよその見当は、次のとおりです。
[#この行1字下げ]吸いもの・ゆでもの=〇・九〜一%、煮もの=一・五〜二%、生野菜のふり塩=一%内外、魚肉の塩味=一〜二%、一夜漬け=二・五〜三%、漬けもの(短期間)=四〜五%、漬けもの(長期間)=七〜一〇%程度。
煮ものなどは、しょうゆをふくめての見当です。調味料のうち、みそは赤みそで一〇〜一五%、白みそで六〜一〇%、ソースは一〇%、しょうゆは約一八%の食塩を含有しています。しょうゆを使う際に、しょうゆ大さじ一杯と塩小さじ1/3がつりあうということを覚えてお使いになると便利です。
俗に「塩は塩を呼ぶ」と言いますように、いちどに大勢の料理を作るとき、一人分の倍数よりはいくぶん控えめに塩を用いないと、必要以上に塩味が濃くなります。
塩かげんというとき、分量ももちろんたいせつですが、それ以上に心しなければならないのは塩を入れるときのタイミング。他の調味料と合わせて使うとき、塩は浸透しやすいので、味の浸透しにくいものから順次加えるようにするのが原則です。たとえば、砂糖をいっしょに使う場合は、必ず砂糖を最初に入れ、砂糖の味が材料によく浸透したころ合いを見計らって塩を入れます。しょうゆの場合は逆に塩を先に、しょうゆを後に入れたほうが好ましい味が生まれます。
お汁粉や甘酒の仕上げに、ほんのちょっぴり塩を入れると、微妙な味わいが生まれるのは、周知のことですが、これは砂糖と塩とでは人の味覚に伝わる速さがちがうからで、まず塩味が先に、次の瞬間に砂糖の甘味が伝えられ、この味の対比によって、甘味がウンと強く感じられるからです。このような塩の性格をよく覚えて、塩かげんを誤らぬようにしましょう。