朝、梅干しを食べると、その日は災厄をまぬかれ、山野|瘴癘《しようれい》の気に侵《おか》されぬという説があって、今でも温泉宿に行くと、朝のお茶受けに、砂糖をかけた梅干しが出されます。それから霧がどんなに強く降りても、梅干しを食べた人の頭の周囲一尺は明《あ》いているという説もあります。いずれも、むかしはまことしやかに信じられていたものですが、梅干しに薬効のあることは、現在、学問的にも認められ、日常の暮らしの中でも、多くの人によって体験され、確かめられております。
梅干しと言えば「日の丸弁当」を思い出す人もありましょうが、むかしから梅干しは戦争に欠くことのできない軍糧の一つで、合戦のとき、武士の携行食として持ち歩かれたようです。こうした保存食品としての役割以外にも、長生きの老人が、毎朝、欠かさず梅干しを一個ずつ食べているとか、効能のほどはいろいろ伝えられています。梅干しが老人病予防に役立つことは確かなことで、乳酸や酪酸《らくさん》などの毒素を中和し、耳下腺の若返りホルモンといわれるパロチンの分泌を促して、内臓筋肉をつよめ、老化を防いでくれます。
また、腸チフスなど食べものから起こる伝染病のはやる時期や、暑さに向かい体力の衰える季節、また、旅をして水がわりに当たりやすい人など、梅干しを食べつづけていると、知らず知らずのうちに、からだに抵抗力がついて、病気を防いでくれます。このほか、殺菌力が特にすぐれているので、夏場、おひつに移したごはんの中に、一つか二つ埋めておけば、ごはんの腐るのを防げます。また、お弁当に一つ潜《ひそ》ませておくと、ごはんのいたむ心配がありません。
一般的に知られている薬効としては、カゼを引いたとき、梅干しを黒焼きにして、熱湯をさして飲む方法です。こうすると熱をさまし、セキ止めにも役立ちます。黒焼きはめんどうだというのでしたら、熱い番茶に梅干しの果肉を浸《ひた》して飲めば、少々のカゼなら治ってしまいます。また、梅干しには熱を吸収する力があって、歯の痛むとき、ホオに梅干しの果肉をはると、痛みがうすらぎ、頭痛のときにコメカミにはると、痛みがやわらぐのは、そのせいです。
梅干しの酸味は調味にも役立ち、炊きたてのおかゆに一個落とし込んだり、おにぎりにしのばせたりするのは、どなたも経験ずみのことですが、調味や腐敗を防ぐほか、食欲増進に役立つ効を兼ね備えているからです。まことに梅干しは日本人の暮らしになくてはならぬ常備食と言えましょう。大正初期の小学校「国語読本」に梅干しの生涯をうたった詩がのっています。
梅干しと言えば「日の丸弁当」を思い出す人もありましょうが、むかしから梅干しは戦争に欠くことのできない軍糧の一つで、合戦のとき、武士の携行食として持ち歩かれたようです。こうした保存食品としての役割以外にも、長生きの老人が、毎朝、欠かさず梅干しを一個ずつ食べているとか、効能のほどはいろいろ伝えられています。梅干しが老人病予防に役立つことは確かなことで、乳酸や酪酸《らくさん》などの毒素を中和し、耳下腺の若返りホルモンといわれるパロチンの分泌を促して、内臓筋肉をつよめ、老化を防いでくれます。
また、腸チフスなど食べものから起こる伝染病のはやる時期や、暑さに向かい体力の衰える季節、また、旅をして水がわりに当たりやすい人など、梅干しを食べつづけていると、知らず知らずのうちに、からだに抵抗力がついて、病気を防いでくれます。このほか、殺菌力が特にすぐれているので、夏場、おひつに移したごはんの中に、一つか二つ埋めておけば、ごはんの腐るのを防げます。また、お弁当に一つ潜《ひそ》ませておくと、ごはんのいたむ心配がありません。
一般的に知られている薬効としては、カゼを引いたとき、梅干しを黒焼きにして、熱湯をさして飲む方法です。こうすると熱をさまし、セキ止めにも役立ちます。黒焼きはめんどうだというのでしたら、熱い番茶に梅干しの果肉を浸《ひた》して飲めば、少々のカゼなら治ってしまいます。また、梅干しには熱を吸収する力があって、歯の痛むとき、ホオに梅干しの果肉をはると、痛みがうすらぎ、頭痛のときにコメカミにはると、痛みがやわらぐのは、そのせいです。
梅干しの酸味は調味にも役立ち、炊きたてのおかゆに一個落とし込んだり、おにぎりにしのばせたりするのは、どなたも経験ずみのことですが、調味や腐敗を防ぐほか、食欲増進に役立つ効を兼ね備えているからです。まことに梅干しは日本人の暮らしになくてはならぬ常備食と言えましょう。大正初期の小学校「国語読本」に梅干しの生涯をうたった詩がのっています。
二月三月花ざかり うぐいす鳴かぬ里もなし 五月六月実がなれば 枝からふるい落されて 何升何合計り売り 塩に漬かってからくなり しそに染まって赤くなり 七月八月暑いころ 三日三晩の土用干し 思えばつらいことばかり
それも世のため人のため しわはよっても若い気で 小さい君らの仲間入り 運動会にもつれてゆく ましていくさのその時は なくてならないこのわたし
それも世のため人のため しわはよっても若い気で 小さい君らの仲間入り 運動会にもつれてゆく ましていくさのその時は なくてならないこのわたし