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食物ことわざ事典153

时间: 2020-01-15    进入日语论坛
核心提示:鴨が葱を背負って来る カモの肉にねぎまでついてくる、こんな首尾のよいことはない。すぐにカモなべが楽しめるおあつらえ向きと
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鴨が葱を背負って来る

 カモの肉にねぎまでついてくる、こんな首尾のよいことはない。すぐにカモなべが楽しめる——おあつらえ向きとはこのことでしょう。「カモねぎ」と略してもいいます。
人と人との和合に相性があるように、料理にも相性といえるものがあります。たけのこにわかめ、ひじきに油揚げ、ドジョウに新ごぼう、サンマに大根おろし、山芋に麦めし……、カモにねぎなども、まさに恰好の|であいもの《ヽヽヽヽヽ》で、取り合わせのよいものといえましょう。
俗に「カモにする」とか「いいカモ」などといいますが、前者は|だし《ヽヽ》に使われやすい好人物をさし、後者は勝負ごとなどで負かせそうな組みしやすい相手を意味します。こうした言い方も、もとを尋ねれば、人間がカモを獲《と》るところからきているのは、いうまでもありません。アメリカあたりでも、同じような言い方をするそうで、肉付きのよいでっぷりしたカモのからだつきを見れば、だれしもそんな感じを抱き、ムリもないとうなずきもしましょう。カモはまた俗語になるくらい、身近かに親しまれてきた鳥でもあったのでしょう。
カモはガンやツルと同じく渡り鳥で、北の国で子を育て、九月上旬から十一月ごろに群れをなして渡って来ます。千葉県浦安と埼玉県越谷にある宮内庁のカモ場には、毎年数万羽のカモが飛来します。そして、三月上旬から五月にかけて、再び北の国めざして帰って行きます。
カモはきわめて種類が多く、日本にやってくるものだけでも、マガモ、コガモ(アオクビともいう)、クロガモ、アイガモ、オシドリ……など、三〇種余りを数えることができます。こうした数あるカモのなかでも、代表格といわれるカモはマガモで、形も大きく、味もよいので、もっぱら食用に供されます。マガモを飼いならして家禽化したのがアヒルで、いつのころからか推定するのは困難ですが、おそらくは有史以前でしょう。
野鳥の肉は鶏肉にくらべると、一種のクセ味をもっていて、このクセ味がまた野鳥の風味でもあります。野鳥の猟季はだいたい冬で、これは、味とも密接な関係があり、冬場、皮下にたくわえられる脂肪によって、味がのるわけです。カモもこの例外ではなく、脂がのっておいしいのは十一月から三月にかけてで、寒中がしゅんです。カモの肉は赤味を帯びていて、肉はやわらかく野鳥肉の中では、ずば抜けた美味を誇っています。こうしたカモ肉に、やわらかく甘味のある冬ねぎを配して、野鳥肉特有の臭味やクセ味を中和させ、相乗的なうまさを引出した先人の味覚はさすがで、日本人の味覚センスのよさを証するものといえましょう。それにしても、カモ料理のねぎは、なんと相性のよい|であいもの《ヽヽヽヽヽ》でしょう。
むかしから「カモの長浜」といわれ、琵琶湖北岸にはカモが多く棲み、長浜・堅田あたりから舟を漕ぎ出し、雪景色を眺めながら、熱燗でちびりちびりカモなべをつつくおもむきは、けだし味覚風流の極致と申せましょう。
さざなみの志賀の夜酒はあぐらゐて 堅田の鴨を煮つつ酌むべし
吉井勇 
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