からしはぐずぐずかいていたのでは、せっかくの辛味がとんでしまう、せっかちに一気にかいたほうが、からしの本領がよく発揮される——ということ。
からしが辛いのは、アリルカラシ油という成分をふくんでいるせいで、粉のとき辛くないのは、このカラシ油が配糖体というかたちになっているからです。
からしは大別すると、洋がらしと和がらしの二種に分類されますが、原料はいずれもアブラナ科の植物、からし菜の実を粉末にしたもので、ただ製法にちがいがあるだけです。
洋がらしは、からし菜のタネを乾かして、圧搾脱脂《あつさくだつし》して粉末にしたもので、|あく《ヽヽ》がなく、なまぬるの湯か水でかけば、そのままで辛味が出ます。一方、和がらしは、からし菜のタネを乾かさずに粉にしたもので、脱脂していないので|あく《ヽヽ》が強く、苦味があります。使うときには、この苦味を除去しないと、せっかくの辛味がそこなわれます。和がらしは、このように、|あく《ヽヽ》抜きの手間はかかりますが、辛味としての味わいは、洋がらしに数等まさります。
からしの辛味は、いったい、どのようにして生まれるでしょう。からし粉にぬるま湯(四〇度C内外)を加えてかきまぜますと、からし粉にふくまれている加水分解酵素(ミロシン)が働いて、揮発性のアリルカラシ油が遊離してきて、からし特有の香りと辛味が出てきます。それだけに、細胞をこわして、配糖体とこれを分離する酵素とを十分に触れ合わせて、カラシ油を遊離させるためには、ことわざに示されるように、|のろのろ《ヽヽヽヽ》かくより、手早くかくほうが、効果的なのです。
ところで肝心の和がらしのかき方ですが、まずからし粉を湯呑のような深い器に入れ、四〇度C内外のぬるま湯を加えて、ほどよいやわらかさに、ねっとりとかきます。この際、二、三滴の酒、または酢を加えますと、比較的長く保存できます。そうしてから、器にじょうぶな生紙《きがみ》をのせて湯を注ぎ、真赤におきた炭火(または赤くおこった焼火箸)を湯の中に入れ、ジュージューと、二、三回音がしたら、その湯を捨てて器ごと伏せておきます。二〇分ほどしたら、上に貼った生紙を取り除き、思いきり早く、強くかきまぜます。
もう一つの方法は、和がらしをぬるま湯でほどよいやわらかさにかいたら、前と同じように生紙を貼り、その上に荒塩(並塩でもよい)を入れて、五、六時間そのままにしておいてのち、生紙を取り、手早くかきまぜます。
こうしたものをかきがらし、またはねりがらし、ときがらしなどと言います。
からしは利用範囲がきわめて広く、菜類のからしあえ、または、からしみそのほか、からし酢みそや、冷奴、そば、うどんなどに使う水がらし、おでんやサンドイッチに欠かせぬ練りがらし、からしじょうゆやからしソースは、中国料理や西洋料理には欠かせぬものだし、また、みそ椀の吸い口に用いてもおいしい。吸い口用には、ときがらしをみそ汁の上澄み液で伸ばし、たらーっと流れるほどにします。秋なすのからし漬けも捨てがたい美味です。
からしが辛いのは、アリルカラシ油という成分をふくんでいるせいで、粉のとき辛くないのは、このカラシ油が配糖体というかたちになっているからです。
からしは大別すると、洋がらしと和がらしの二種に分類されますが、原料はいずれもアブラナ科の植物、からし菜の実を粉末にしたもので、ただ製法にちがいがあるだけです。
洋がらしは、からし菜のタネを乾かして、圧搾脱脂《あつさくだつし》して粉末にしたもので、|あく《ヽヽ》がなく、なまぬるの湯か水でかけば、そのままで辛味が出ます。一方、和がらしは、からし菜のタネを乾かさずに粉にしたもので、脱脂していないので|あく《ヽヽ》が強く、苦味があります。使うときには、この苦味を除去しないと、せっかくの辛味がそこなわれます。和がらしは、このように、|あく《ヽヽ》抜きの手間はかかりますが、辛味としての味わいは、洋がらしに数等まさります。
からしの辛味は、いったい、どのようにして生まれるでしょう。からし粉にぬるま湯(四〇度C内外)を加えてかきまぜますと、からし粉にふくまれている加水分解酵素(ミロシン)が働いて、揮発性のアリルカラシ油が遊離してきて、からし特有の香りと辛味が出てきます。それだけに、細胞をこわして、配糖体とこれを分離する酵素とを十分に触れ合わせて、カラシ油を遊離させるためには、ことわざに示されるように、|のろのろ《ヽヽヽヽ》かくより、手早くかくほうが、効果的なのです。
ところで肝心の和がらしのかき方ですが、まずからし粉を湯呑のような深い器に入れ、四〇度C内外のぬるま湯を加えて、ほどよいやわらかさに、ねっとりとかきます。この際、二、三滴の酒、または酢を加えますと、比較的長く保存できます。そうしてから、器にじょうぶな生紙《きがみ》をのせて湯を注ぎ、真赤におきた炭火(または赤くおこった焼火箸)を湯の中に入れ、ジュージューと、二、三回音がしたら、その湯を捨てて器ごと伏せておきます。二〇分ほどしたら、上に貼った生紙を取り除き、思いきり早く、強くかきまぜます。
もう一つの方法は、和がらしをぬるま湯でほどよいやわらかさにかいたら、前と同じように生紙を貼り、その上に荒塩(並塩でもよい)を入れて、五、六時間そのままにしておいてのち、生紙を取り、手早くかきまぜます。
こうしたものをかきがらし、またはねりがらし、ときがらしなどと言います。
からしは利用範囲がきわめて広く、菜類のからしあえ、または、からしみそのほか、からし酢みそや、冷奴、そば、うどんなどに使う水がらし、おでんやサンドイッチに欠かせぬ練りがらし、からしじょうゆやからしソースは、中国料理や西洋料理には欠かせぬものだし、また、みそ椀の吸い口に用いてもおいしい。吸い口用には、ときがらしをみそ汁の上澄み液で伸ばし、たらーっと流れるほどにします。秋なすのからし漬けも捨てがたい美味です。