大食いをつつしみ、養生すれば、長生きができるということ。
もしこの世に、不老長寿の秘薬なり秘法があって、それを飲み、マスターすれば、一〇〇歳はおろか何年でも生きられるとしたら、たとえ全財産を注ぎ込んでも、それを手に入れたいと願うのは人情でしょう。事実、そのむかし、海の向こうの秦《しん》の始皇帝《しこうてい》は、不老長寿の秘薬を手に入れるため、多くの部下を派遣し、蓬莱の島、日本には徐福《じよふく》を遣《つか》わしたと言われます。
伝え聞くところによれば、オランダの世界的な名医ベールハーフェ博士は死ぬ真際《まぎわ》に「門外不出の不老長寿の秘法」を遺言に残しました。遺族は博士の言いつけどおりに、その秘法を鉄の箱に密封して屋敷内に埋めました。どこから洩れたのでしょう、このウワサはたちまちヨーロッパ全土に知れ渡り、イギリスのある大金持ちが全財産と引き換えに、その遺言書のはいっている鉄の箱を買い取りました。さっそく、鉄の箱を開け、中を見てビックリ、中からは小さな紙片が一枚出てきました。その紙には、たった二行のことばが書かれていました。
第一条 頭を冷たく足を暖かく。 第二条 お腹にものを入れ過ぎぬこと。
コントみたいな話ですが、実際にあった話です。さすがに世界的名医とうたわれたベールハーフェ博士だけあって、長寿の極意をたった二行のことばで、よく表現しています。
第一条は東洋医学流に解せば、「頭寒足熱《ずかんそくねつ》」ということ。第二条は、さしずめ「小食は長生きのしるし」または「腹八分に医者いらず」ということができ、いずれも、古くから長寿の鉄則と言われてきたものです。
くだんのお金持ちは、長寿の秘法が金で購《あがな》えると思ったぐらいの人物ですから、おそらく頭にきて、この紙片を仔細に検討することなく破り捨ててしまったかも知れません。だがもし、この二行を忠実に実行しておれば、長寿は疑いなかったといえましょう。
「頭寒足熱」「小食は長生きのしるし」ということばからも窺《うかが》えるように、不老長寿には今のところ、なんの秘法も秘薬も極意もありません。強いて極意と言えば「一見平凡で常識的と思えるような健康法を実行すること」だと言えましょう。
二、三年前でしたか、日本全国にいる一〇〇歳以上の長寿者に、ある新聞社がアンケートを求め長生きの秘訣を伺ったところ、長寿のコツとして次のような順で解答が寄せられたそうです。
㈰食べものに気をつけること ㈪腹八分めの食事 ㈫物事にくよくよしない ㈬早寝早起き ㈭仕事にムリをしない ㈮食べものに好き嫌いをしない
いずれも、その気になりさえすれば、すぐにでも実行できる当たり前のことばかりです。特別に健康法や長寿法を実行している人は、ひとりもいなかったと言われます。基本的な生活態度として、以上示された六項目は、確かに長寿のための極意ということができます。
伊勢蝦《いせえび》の腰曲るまで生きたくば鼻と臍《へそ》との下御用心
もしこの世に、不老長寿の秘薬なり秘法があって、それを飲み、マスターすれば、一〇〇歳はおろか何年でも生きられるとしたら、たとえ全財産を注ぎ込んでも、それを手に入れたいと願うのは人情でしょう。事実、そのむかし、海の向こうの秦《しん》の始皇帝《しこうてい》は、不老長寿の秘薬を手に入れるため、多くの部下を派遣し、蓬莱の島、日本には徐福《じよふく》を遣《つか》わしたと言われます。
伝え聞くところによれば、オランダの世界的な名医ベールハーフェ博士は死ぬ真際《まぎわ》に「門外不出の不老長寿の秘法」を遺言に残しました。遺族は博士の言いつけどおりに、その秘法を鉄の箱に密封して屋敷内に埋めました。どこから洩れたのでしょう、このウワサはたちまちヨーロッパ全土に知れ渡り、イギリスのある大金持ちが全財産と引き換えに、その遺言書のはいっている鉄の箱を買い取りました。さっそく、鉄の箱を開け、中を見てビックリ、中からは小さな紙片が一枚出てきました。その紙には、たった二行のことばが書かれていました。
第一条 頭を冷たく足を暖かく。 第二条 お腹にものを入れ過ぎぬこと。
コントみたいな話ですが、実際にあった話です。さすがに世界的名医とうたわれたベールハーフェ博士だけあって、長寿の極意をたった二行のことばで、よく表現しています。
第一条は東洋医学流に解せば、「頭寒足熱《ずかんそくねつ》」ということ。第二条は、さしずめ「小食は長生きのしるし」または「腹八分に医者いらず」ということができ、いずれも、古くから長寿の鉄則と言われてきたものです。
くだんのお金持ちは、長寿の秘法が金で購《あがな》えると思ったぐらいの人物ですから、おそらく頭にきて、この紙片を仔細に検討することなく破り捨ててしまったかも知れません。だがもし、この二行を忠実に実行しておれば、長寿は疑いなかったといえましょう。
「頭寒足熱」「小食は長生きのしるし」ということばからも窺《うかが》えるように、不老長寿には今のところ、なんの秘法も秘薬も極意もありません。強いて極意と言えば「一見平凡で常識的と思えるような健康法を実行すること」だと言えましょう。
二、三年前でしたか、日本全国にいる一〇〇歳以上の長寿者に、ある新聞社がアンケートを求め長生きの秘訣を伺ったところ、長寿のコツとして次のような順で解答が寄せられたそうです。
㈰食べものに気をつけること ㈪腹八分めの食事 ㈫物事にくよくよしない ㈬早寝早起き ㈭仕事にムリをしない ㈮食べものに好き嫌いをしない
いずれも、その気になりさえすれば、すぐにでも実行できる当たり前のことばかりです。特別に健康法や長寿法を実行している人は、ひとりもいなかったと言われます。基本的な生活態度として、以上示された六項目は、確かに長寿のための極意ということができます。
伊勢蝦《いせえび》の腰曲るまで生きたくば鼻と臍《へそ》との下御用心