これは煮ものをするときの調味料の入れ方の順序を教えたもので、サは砂糖、シは塩、スは酢、セはしょうゆ(旧かなでは�せうゆ�と書くので)、ソはみそのソだと言い、最近ではソーダ、つまり、グルタミン酸ソーダ(化学調味料)だと教える人もおります。どうしてサシスセソなのでしょうか?
砂糖と塩の順序でいえば、分子量の小さいもののほうが先に浸透《しんとう》しやすく、塩と砂糖では塩のほうが先に浸み込みやすいので、まず砂糖のほうを先に入れたほうがよいということになる——と、料理学校の先生は教えております。砂糖や塩、酢というものは浸み込むもので、あとの二つ、しょうゆやみそなどは塩味を浸み込ませる役割よりは、その風味を生かすものだ——という説明も聞きます。風味を生かすためには、最初から入れて、ぐらぐら煮てしまっては、香りも味も飛んでしまうので、なるべく後に入れるのは理にかなった方法です。
かと言って、サシスセソの順序にいつも入れていいかというと、然《さ》にあらず、必ずしもことばどおりにはいかない場合も出てきます。たとえば、豆を煮るような場合、一晩真水よりも塩水に浸《ひた》しておいたほうが、早くやわらかく煮える場合もでてきます。こうすれば、豆の中のほうが煮汁より塩辛いので、浸透圧《しんとうあつ》によって、水分が外部から豆の中へ吸いこむように働き、味もよく浸みて、豆も締まり、固くならないからです。この場合は順序が逆になっています。
砂糖を使って栗などを煮る場合、一〇の分量を入れたいとしたら、最初に三を入れ、ある程度にこれが溶《と》けてからまた三を入れ、最後に残りの四を入れるというぐあいに分けて入れないといけません。もし、最初にパッと全部入れると、砂糖が蜜になってしまい、栗にまきつくだけで、中に味が浸み込まない、したがって味もよくないという場合もでてきます。適度に味を浸透させながら、栗をやわらかくするためには、このような順序に入れ分けて用いましょう。
煮ものに限らず、調味料を使う場合は、調味料の性格をよく知って、調理法や材料の性質に合った使い方をしなければなりません。ゆでものをするときに使う塩は、やわらかくするためではなく、塩の力によって、変色を防ぐためです。酢なども、酸味をつける以外に、殺菌、あく止め、魚の身締め、その他いろいろと隠れた力を持ち、ほんとうはしょうゆよりも後に使ったほうが効きめがあります。酢の酸味は、塩のもつ塩辛さを、やわらげる作用をもっているために用いられることも多く、きつい酸味を必要とする以外は、最後のほうが効果的です。またごぼうや蓮根などのようなものの色止めに使う際は、はじめから入れておかないと効きめがありません。煮魚をする際、|しょうゆ《ヽヽヽヽ》や|みそ《ヽヽ》を加えて、あまり長時間煮つめると、せっかくの魚の味が隠れてしまう恐れが多分にあります。
こうしてみると、サシスセソは必ずしも料理のコツを言い表わしたものではなく、一応の基準を示したもので、あまり、これにこだわりすぎないほうがよいようです。
砂糖と塩の順序でいえば、分子量の小さいもののほうが先に浸透《しんとう》しやすく、塩と砂糖では塩のほうが先に浸み込みやすいので、まず砂糖のほうを先に入れたほうがよいということになる——と、料理学校の先生は教えております。砂糖や塩、酢というものは浸み込むもので、あとの二つ、しょうゆやみそなどは塩味を浸み込ませる役割よりは、その風味を生かすものだ——という説明も聞きます。風味を生かすためには、最初から入れて、ぐらぐら煮てしまっては、香りも味も飛んでしまうので、なるべく後に入れるのは理にかなった方法です。
かと言って、サシスセソの順序にいつも入れていいかというと、然《さ》にあらず、必ずしもことばどおりにはいかない場合も出てきます。たとえば、豆を煮るような場合、一晩真水よりも塩水に浸《ひた》しておいたほうが、早くやわらかく煮える場合もでてきます。こうすれば、豆の中のほうが煮汁より塩辛いので、浸透圧《しんとうあつ》によって、水分が外部から豆の中へ吸いこむように働き、味もよく浸みて、豆も締まり、固くならないからです。この場合は順序が逆になっています。
砂糖を使って栗などを煮る場合、一〇の分量を入れたいとしたら、最初に三を入れ、ある程度にこれが溶《と》けてからまた三を入れ、最後に残りの四を入れるというぐあいに分けて入れないといけません。もし、最初にパッと全部入れると、砂糖が蜜になってしまい、栗にまきつくだけで、中に味が浸み込まない、したがって味もよくないという場合もでてきます。適度に味を浸透させながら、栗をやわらかくするためには、このような順序に入れ分けて用いましょう。
煮ものに限らず、調味料を使う場合は、調味料の性格をよく知って、調理法や材料の性質に合った使い方をしなければなりません。ゆでものをするときに使う塩は、やわらかくするためではなく、塩の力によって、変色を防ぐためです。酢なども、酸味をつける以外に、殺菌、あく止め、魚の身締め、その他いろいろと隠れた力を持ち、ほんとうはしょうゆよりも後に使ったほうが効きめがあります。酢の酸味は、塩のもつ塩辛さを、やわらげる作用をもっているために用いられることも多く、きつい酸味を必要とする以外は、最後のほうが効果的です。またごぼうや蓮根などのようなものの色止めに使う際は、はじめから入れておかないと効きめがありません。煮魚をする際、|しょうゆ《ヽヽヽヽ》や|みそ《ヽヽ》を加えて、あまり長時間煮つめると、せっかくの魚の味が隠れてしまう恐れが多分にあります。
こうしてみると、サシスセソは必ずしも料理のコツを言い表わしたものではなく、一応の基準を示したもので、あまり、これにこだわりすぎないほうがよいようです。