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八墓村-第二章 疑惑の人(4)

时间: 2022-06-05    进入日语论坛
核心提示:「御主人は何をしていられたのですか」「電機器具の製造工場を経営していたの。電機器具ってどんなものか、あたしにはちっともわ
(单词翻译:双击或拖选)

「御主人は何をしていられたのですか」

「電機器具の製造工場を経営していたの。電機器具ってどんなものか、あたしにはちっともわからないのだけれど、戦争中はたいへんな景気でしたわ。つまり軍需成金というわけね」

「それで御主人はいつごろ亡くなられたのですか」

「太平洋戦争の三年目、つまりソロソロ日本の運命がかたむきかけたころのことね。病気は脳出血──お酒を飲み過ぎたのよ」

「まだ、お若かったのでしょう」

私がこの質問を出すと、美也子は声を立てて笑った。

「あたしと十以上もちがっていたのよ。だけどまあ、若いといえば若いといえる年ごろね。なにしろああ急に亡くなるとは思わなかったから、あたしも途方に暮れたんだけど、幸い主人と共同で経営してた人が紳士的でね、あといっさいひきうけてやってくれたうえに、きちんきちんとあたしのほうへもお金をまわしてくれましたの、だから食べるには困らなかったけれど……」

「慎太郎という人とは、よほど長くつきあっていられるのですか」

私はこの質問をできるだけさりげなく切り出したのだけれど、それでもその瞬間、美也子のすばやい視線が、稲妻のように私の脳天をつらぬくのを防ぐことができなかった。

「そうね、それほど長いつきあいというのでもないわ。そりゃ……同郷だから名前は知ってたし、軍人になってることも聞いてたわね。それが急に交際をはじめるようになったのは、主人がひっぱってきたからよ。戦争中はなんといってもサーベルの天下でしたからね。軍人の羽振りのいいとこをつかまえているといないのとじゃ、いろいろちがうところがあったんでしょう。で、うちへ招待したり、外でいっしょに飲んだり……」

「御主人がお亡くなりになってからも、そういう交際はつづいていたんですか」

美也子はまたすばやい視線で私の脳天をつらぬくと、なぞのような微笑をうかべた。

「そりゃつづいていたわ。以前よりもっと頻ひん繁ぱんにいらっしゃるようになったわね。だってこちらも主人を亡くして心細い状態だったし、それに同郷といえばねえ、やはり懐かしいのよ。だけど、ほんとうをいうと、あたし軍人はきらいだったのよ。ただ、参謀本部にいる人なんかと接触していると、いろいろ情報がわかるでしょう。その意味で、まあ、いってみればあたしのほうがあの人を利用していたみたいなものよ」

これはもっと後に知ったのだけれど、美也子は情勢不利とさとると、ダイヤだの貴金属などを買い集め、それが目下の彼女の財産となっており、しかもその額はかなり莫ばく大だいなものであるといううわさだった。美也子というのはそういう女なのだ。日本の女には珍しい大胆さと実行力を持った女なのだ。

「慎太郎という人は、まだ独身だと聞いていますが、田治見の家に同居しているのですか」

「いいえ、あの人、独身だけど一人じゃないのよ。典のり子こさんという妹さんがひとりあるの。そうそう、その典子さんというのがやっぱり……」

やっぱりとまでいって美也子がはたと口をつぐんだので私は思わず顔を見直した。美也子の顔には、何かしら気まずい色が流れている。それで私はいっそうあとを追及せずにはいられなかった。

「やっぱり……どうしたのですか」

美也子は心苦しそうにのどの奥の痰たんをきると、

「ごめんなさい。こんな話持ち出すんじゃなかったわ。でも、いったんいい出したことを途中でやめちゃ気持ちが悪いわね。じゃ、いってしまいますけれど、典子さんが生まれたのはあの騒ぎ……あなたのお父さまのあの騒ぎがあったときですの。つまり典子さんのお母さんがあの騒ぎのショックで、早産されたのですわね、たしか八か月でお生まれになったのだと聞いています。だからとても育つまいといわれていたのが、不思議に赤ちゃんのほうは育ったんですが、お母さんは産後間もなくお亡くなりになったんです。だから典子さん、いまでも……つまりあの騒ぎのときに生まれたのだから、あなたと一つちがいのわけですけれど、見たところ、十九か二十くらいにしか見えないのですよ。慎太郎さんはその方といっしょに、親しん戚せきにあずけてあった家へかえり、百姓をしていらっしゃるわけです」

私の心はまた重くなってきた。父の犯した罪ざい業ごうは、こうして長く尾をひいているのだ。典子のような犠牲者は、まだほかにも村に生きているにちがいない。私はいまさらのように、自分のこのたびの村入りが、どのような大きな波紋をえがき出すかを想像して、背筋の冷たくなるような恐怖を覚えずにはいられなかった。

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