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八墓村-第二章 疑惑の人(6)

时间: 2022-06-05    进入日语论坛
核心提示:「それでねえ、久野先生の新居先生に対する憎しみというものは、ひととおりやふたとおりのものじゃないんですよ。陰じゃずいぶん
(单词翻译:双击或拖选)

「それでねえ、久野先生の新居先生に対する憎しみというものは、ひととおりやふたとおりのものじゃないんですよ。陰じゃずいぶん聞いていられないようなことをいってるそうですからね。で、私ゃ思うんだが、井川のじいさんに一服盛ったのは、久野先生じゃあるまいかと……」

「まあ!」

美也子も思わず息をのんだ。

「だって、新居先生が憎いからって、何も、罪もない丑松さんに毒を盛ることはないじゃありませんか」

「そんなことありませんや。つまり新居先生に罪をなすくりつけるためでさあね。それに井川のじいさんに罪のないこともありませんぜ。新居さんが疎開してくると、一番にかかって、それ以来、新居さんの薬はよくきくと、村じゅうに宣伝して步いたのは井川のじいさんですからね。久野さんにとっちゃ憎くてたまらぬのも無理はないでしょう。それに、こんな田舎で毒薬など持っているのは、医者よりほかにありませんからねえ」

「もうよしてちょうだい。吉蔵さん、かりそめにもこんな事件で、めったな当て推量などしゃべって步くものじゃありませんよ。それに、ここにいらっしゃるのは、久野先生と御親戚になる方なのよ」

吉蔵はそのときはじめて私のほうへ向きなおったが、その眼にはみるみる深い驚きのいろがあふれてきた。

「ああ、それじゃこれがお鶴さんの……」

「そうよ。丑松さんのお骨をもって、こんどはじめて村へかえっていらっしゃったの。いずれごあいさつには出ますけれどどうぞよろしくね」

吉蔵はいままでのあけすけな態度を急にうしなって、しいんと考えこんでしまった。そして、ときどき上眼づかいに私のほうを見ていたが、やがてまた体を乗り出すと、

「奥さん、あんたほんとうにこの人をつれてきたんですね。まさか連れてきはしまい。また、この人も来いといっても来まいと村ではいってたんですがね」

私は何かしら、心臓に冷たいものでも当てられたような気持ちだった。少なくとも村へ入ろうとするその矢先にきく言葉としては、あんまりうれしいあいさつではなかったのだ。

吉蔵は何かもっと話したいらしかったが、美也子がそっぽを向いて相手にならなくなったので、それきり黙りこんでしまった。そして、子細らしく、腕組みをして気むずかしそうにくちびるを結んでいたが、ときどき私のほうをぬすみ見る眼のなかには、何かしらおだやかならぬものがふくまれていた。私はいよいよ心が沈み石をのみ下したように下っ腹が重かった。

こうして、やがてわれわれは、八つ墓村への入り口まで来たが、バスがとまると吉蔵がまっさきにとびおり、一目散に駆け出したので、私たちは思わず顔を見合わせた。吉蔵の心はわかっている。われわれよりも一足さきに村へかえって、私のことを注進しようというのだろう。美也子はほっとため息をついた。

「諏訪さんのいったことはほんとうだったわね。これはよほど勇気がいるわ。寺田さん、大丈夫?」

私の顔はたぶん真っ青になっていたろうけれど、心はもうすっかりきまっていた。私はただ力強くうなずきかえしただけだった。

バスの停留場から八つ墓村へ入るには、峠とうげをひとつ越えねばならない。峠といってもそう高くはないのだが道が悪いから自転車以外の乗り物は通るまい。二十分にして峠へついたが、そこから北を見下ろした刹せつ那な、私はなんともいいようのない暗い感じにおそわれたことをいまでもはっきり覚えている。

八つ墓村──それはまるで摺すり鉢ばちの底のような地点にあった。四方を山にとりかこまれて方二里あまり、その山々はかなりうえまで耕され、ふもとから摺鉢の底へかけては、水田も見られたが、それらの水田は文字どおり猫ねこの額ほどの面積で、おかしなことには、どの水田にも周囲に柵さくをめぐらしてあった。これは後に知ったのだが牛で生きているこの村全体がひとつの牧場なのだ。牛は村道のいたるところで好き勝手に寝ころんでいる。そしてそれらの牛の侵入を防ぐために、水田の周囲に柵をめぐらしてあるのだそうだ。

私がはじめてこの八つ墓村を望見したのは、まえにもいったとおり六月二十五日、すなわち梅つ雨ゆ時どきの黄たそ昏がれごろのことであった。雨は落ちていなかったけれど、雲は低く垂れさがり、摺鉢の底に点在する荒壁の家々のうえに何かしらまがまがしいものがおそいかかってきそうな感じだった。私は思わずゾクリと身をふるわせた。

「ほら向こうの山のふもとに、ひときわ大きなお屋敷が見えるでしょう。あれがあなたのお家。それからそのうえのほうに、大きな杉が一本立っているでしょう。あれが八つ墓明神……あの杉の木はついこのあいだまで二本あって、双ふ生た児ご杉すぎといわれていたのだけれど、三月の終わりに、春には珍しい雷があって、その雷に打たれて一本の杉が根元から、真っ二つに裂けてしまったの。それ以来、村の人たちは、何かまたよくないことが起こるのではないかと、戦々兢々せんせんきょうきょうとしているのよ」

私はまたゾクリと気味の悪い戦慄が、背筋を貫いて走るのを禁じ得なかった。私たちは黙々として峠を下っていったが、すると間もなくふもとのほうにおおぜい人がむらがっているのが見えた。いずれも田んぼからとび出してきたという格好だったが、そのなかに吉蔵の姿がまじっているのを見ると私はきっとくちびるをかんだ。

人々は口々に何やらわめいていたが、だれかが私たちの姿を見つけたらしく、何か叫ぶと急にぴたりと黙りこんでいっせいにこちらを振り返った。そして口ほどにもなく、モゾモゾと尻しり込みする気配だったが、その中からひとり異様な風体をした人物が現われて、きっと私たちのほうをにらみすえた。

「来るな! 来てはならぬ! かえれ!」

異様な風体をした人物は下から金切り声をあげて叫んだ。私は身内がすくむ感じだったが、それをそばから励ますように、美也子がぎゅっと腕をつかんだ。

「平気よ、行きましょう。あれ、濃こい茶ちゃの尼というのよ。少し気が狂っているの。何もしやあしないから大丈夫よ」

なるほど近づくにしたがってそれが尼であることがわかった。しかし、なんという醜い尼であったろうか。年齢はもう五十か、あるいはもっといっているのだろう。兎口のくちびるは三つに裂け、まくれあがって、その下から馬のような大きな、黄色い乱らん杭ぐい歯ばがのぞいている。私たちが近づくと尼は握りしめた両手を振りまわし、地じ団だん駄だをふむような格好でどなりつづけた。

「来るな、来るな、かえれ、かえれ。八つ墓明神はお怒りじゃ。おまえが来ると村はまた血でけがれるぞ。八つ墓明神は八つのいけにえを求めてござる。おのれ、おのれ、来るなというに……おまえはおまえの爺じいがなぜ死んだか知っているのか。あれが一番目のいけにえじゃぞ。それから二つ、三つ、四つ、五つ……いまに八人の死人が出るのじゃ。おのれ、おのれ、おのれ……」

濃茶の尼は金切り声を張りあげて叫びつづけながら、私たちが村を横切り、渓谷をわたって、田治見家の門へたどりつくまでついてきた。そしてそのうしろには、痴ち呆ほうのように、表情のない顔をした村の人たちが、いっぱいつづいているのだった。

これが私の八つ墓村で、最初にうけた歓迎だったのだ。

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