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八墓村-第二章 疑惑の人(16)

时间: 2022-06-05    进入日语论坛
核心提示:「辰弥さん」と、彼女はいつか私を名前で呼ぶようになっていた。「あなたにぜひ紹介してほしいという人があるんですけれど、いま
(单词翻译:双击或拖选)

「辰弥さん」

と、彼女はいつか私を名前で呼ぶようになっていた。

「あなたにぜひ紹介してほしいという人があるんですけれど、いまお手すきじゃない?」

「はあ、どういう人ですか」

「どういう人だかあたしにもよくわからないの。神戸からかえってみると、本家のほうへ来ていたのよ。義兄の古い友人だとかで、この近所へ用事があって来たついでに立ち寄ったとかいって、本家へ逗留とうりゅうしているのよ。名前は金田一耕助というの」

そのころ私はまだ金田一耕助という名を知らなかった。美也子も知らなかったらしい。

「それで、その人、私にどういう用事があるのでしょう」

「さあ、それはあたしにもわからないわ。あなたと二人きりで話をしてみたいといっているんですけれど」

私の心は怪しく乱れた。ひょっとすると警察関係の人ではあるまいかと考えた。それならば会わずにすますというわけにはいくまい。

「どうぞ、それでは向こうの座敷でお待ちしていますから」

人の出入りの少ない別室の六畳で待っていると、そこへにこにこしながら入ってきた人物があったが、ひとめその人の風ふう貌ぼうを見たとき、私は人違いではないかと思ったくらいだ。私はなんとなく、もっと堂々たる風ふう采さいの人物を期待していたのだ。だから、

「失礼しました。ぼくが金田一耕助です」

と、ペコリとお辞儀をされたとき、私は思わず眼を見はって、相手の様子を見直さずにはいられなかった。

金田一耕助──年齢は三十五、六だろう。小柄で、もじゃもじゃ頭をした、どこから見ても風采のあがらぬ人物である。おまけによれよれのセルに袴はかまをはいているのだから、よく踏んでも、村役場の書記か、小学校の先生くらいにしか見えない。おまけに少しどもるくせがある。

「いや、これは……私が辰弥です。何か私にお話があるということでしたが」

「はあ、ちょっとお伺いしたいことがありまして……」

金田一耕助はにこにこしながら、しかし、どこか相手をひやりとさせるような鋭さのある眼で、それとなく私を観察しながら、

「だしぬけにこんなことをお伺いして、はなはだ不躾ぶしつけとは思いますが、あなたは村のうわさを御存じですか」

「村のうわさといいますと……」

「つまり、お兄さんの死についてですね。村ではちと、けしからんうわさがとんでいるようですが……」

私は思わずドキリとした。直接そういううわさを耳にしたわけではなかったが、一昨日の濃茶の尼の言葉からしても、兄の死について、怪しいうわさがとぶであろうということは想像されなくもなかった。しかも、私自身、同じような疑問をいだいていたのだから。……瞬間私の顔色にあらわれた動揺を見てとると、金田一耕助はにっこり笑って、

「なるほど、あなた御自身、同じような疑問を持っていられるのですね。しかし、それならば、あなたはなぜそのことを口に出していわなかったのですか」

「どうしてです。どうして私にそんなことがいえるのです」

私はやっと口をひらいた。なんだかのどの奥が熱くなって、いがらっぽくなるような気持ちだった。

「現に医者がついていて、その人がなんでもないといっているのですから、素人の私にどうして口出しをすることができましょう」

「なるほど、それも無理のないところですね。しかし、ねえ、辰弥さん、私はここで一応忠告しておきますが、あなたは今後、なんでも怪しいと思うようなことがあったらはたの思惑など考えないで、率直にそれを披露されたほうが有利ですよ。それでないと、今後どういう苦しい立場に立たされるかわかりませんよ」

「金田一さん、それはどういう意味ですか」

「つまりね、あなたは最初から村の人々から色眼鏡で見られているのです。あなたが村へかえってきた。きっと何か変事が起こるにちがいない。……村の人々はみんなそういう考えを持っているんです。むろん、迷信ですよ。しかし迷信だからいっそう怖い。理屈では説き伏せられない頑がん冥めいさですからね。しかも、丑松さんといい、お兄さんといい、あなたにかかりあったとたん、変な死に方をしている。村の人々の迷信が、いよいよたかまるのも無理はないのです。御用心をなさらなければいけませんね」

私の心は暗い怯おびえで、鉛のように重くなった。何かしら眼に見えぬ黒い糸が、しだいに自分の身を金縛りにしていくような感じであった。金田一耕助はにこにこしながら、

「いや失礼しました。はじめてお眼にかかって、いきなり変なことをいい出して、さぞいやな思いをされたでしょう。まあ、これもぼくの老婆心だと思って堪忍してください。ところであなたの疑惑ですがね、お兄さんの御最期に関する……それについてひとつ話してくれませんか。いや、自分の主観は話しにくいでしょうから、ひとつ、客観的にお兄さんの御臨終の模様を話してくださいませんか」

それならば私にも話をするのに気安かった。私は問われるままに、兄の臨終の模様を子細に語ってきかせた。金田一耕助はおりおり言葉をはさんで、私の記憶を刺激してくれたが、やがて私の話がおわると、

「それであなたはそのときの情景と、丑松さんの御最期の模様をくらべてみて、どういうふうにお考えになりますか。そっくり同じだとお思いになりませんか」

私は暗い顔をしてうなずいた。金田一耕助は黙ってしばらく考えていたが、やがてじっと私の眼をのぞきこみながら、

「辰弥さん、私はどうもこの事件はこのままじゃおさまらないと思いますよ。なにしろ村の風説が大きすぎるし、それにあなた御自身そういう疑惑を持っていられるとすればねえ。いずれ警察の手がのびるかもしれませんよ」

金田一耕助の予想はあやまらなかった。果たしてそれから三日のちにN町の警察と岡山市の警察本部から、どやどやとたくさんのひとがやってきた。そして兄の墓が発掘され、改めて屍し骸がいが現地解剖された。この解剖には県警察の嘱託医N博士があたったが、それに協力したのは村の疎開医者新居修平あらいしゅうへい氏だった。

その結果は二日のちに発表されたが、兄の死は明らかにある毒物に原因していることが判明した。しかもその毒物は祖父丑松を殺したものと、まったく同じ種類のものであった。

ああ、こうして八つ墓村には、眼にも見えぬ黒い妖よう気きがいよいよ渦巻き始めたのだった。

そういって金田一耕助は、さぐるように私の顔をながめていた。

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