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八墓村-第二章 疑惑の人(17)

时间: 2022-06-05    进入日语论坛
核心提示:劣等コムプレックス私の胸のいらだちは、しだいにはげしくなってきた。腹の底が、じりじり煎いられるような息苦しさ。何かしら、
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劣等コムプレックス

 

私の胸のいらだちは、しだいにはげしくなってきた。腹の底が、じりじり煎いられるような息苦しさ。……何かしら、しなければならぬことが、いっぱいあるような気がしながら、しかも、どこから手をつけてよいのかさっぱりわからぬもどかしさ。……少なくとも私には、考えなければならぬことがたくさんあったのだ。

まず第一に、祖父の丑松と、兄の久弥の死を他殺として、(それはもう、疑う余地のない事実だが)そのことと私の帰村とのあいだに、何か関係があるのだろうか。つまり、私が村へかえってきたがために、あるいはかえってきそうになったがために、ああいうことが行なわれたのであろうか。もし、私が発見されなかったら、いや、発見されても、村へかえることを拒んだら、ああいうことは起こらずにすんだのであろうか。

私はそのことを、よく考えなければならなかった。

つまり、二つの連れん鎖さ殺人事件は、私を中心としてえがいている、渦のなかの出来事だろうか。それとも、私とは関係なしに、別の頂点を目ざしてえがいている、渦のなかの出来事だろうか。私が発見されようがされまいが、私が帰村しようがしまいが、そういうことには関係なしに、やはり、あの二つの殺人事件は起こったろうか。

私はそれを、よく考えてみなければならないのだ。

私にはまた、毒殺者の意志というか、目的というか、それが少しもわかっていない、いや、私のみならず、だれにとっても、それはなぞであったろう。いったい、祖父を殺してどうしようというのだ。私を村へ呼びもどしたくないところから、使者に立った祖父を殺したのであろうか。しかしそんなことをしたところで、私を村からきりはなすという保証はどこにもないのではないか。現に私は美也子の迎えで、こうして村へかえってきている。

兄の久弥の死にしてからが、私にはさっぱり理由がわからない。兄はほうっておいても、早晚、死ぬべきひとであった。この夏を無事に越せたかどうかわからぬ。犯人はただその死期を、ほんのちょっぴり繰りあげただけのことなのだ。しかも、それには、多くの危険を覚悟しなければならなかったろうに。……

なお、ついでながらいっておくが、兄の死に、毒殺の疑いがもたれると同時に、家人と主治医であった、久野の恒おじが、厳重に取り調べられた。そして、いちばん苦境に立たされたのは、久野の恒おじであった。

私はいまでも、兄の臨終の模様をよくおぼえている。兄ははげしく咳きこんだのちに、双生児の小梅様と小竹様に薬を求めた。すると、双生児のうちのひとりが(それが小梅様であったか、小竹様であったか、私にはよくわからなかったが)枕元にあった手文庫から、薬包紙を一服とり出した。そのとき、そのひとは、けっしてあれかこれかと、薬の包みを選択するようなことはなかったのだ。たくさんある薬のなかから、いちばんさきに手にふれたものを、兄の久弥にのませたのだ。

ところが、兄の死に毒殺の疑いが持たれるようになると、警察ではただちに、のこりの薬包紙を全部押収して分析した。しかし、そこにはなんの異状もなかったそうだ。だから、たくさんあった薬包紙のなかに、ただ一服、毒物をまぜた包みがあったのを、あのとき偶然、小梅様だか、小竹様だかがとりあげたのだ。

ところで、この薬はどうなっていたかというと、久野の恒おじが、一週間ずつまとめてあたえたそうだ。内容は炭たん酸さんグアヤコールにチョコール、それに重曹じゅうそうを調合したもので、いまどき、どこの田舎医者でも、こんな薬を調合するものはないそうだ。しかし、兄にとって十分気やすめになったらしく、三度三度、服薬を忘れず、薬がきれると、使いのものを走らせた。

ところで、問題はここなのだが、久野の恒おじもはじめのうちは、そのつど一週間ぶんずつ調合してわたしていたが、しまいにはめんどうくさくなったのと、それに、この処方は変質する心配がないので、いっぺんに、一か月ぶんくらい調合しておいて、しかし、それをそっくりわたしては、ありがた味がうすいので、そのなかから、一週間ぶんずつ、わたすことにしていたそうだ。だから、恒おじの薬局には、早晚、兄にわたされる薬の包みのストックが、いつもかなりたくさんあったわけだ。

このことは、犯人にふたつの機会をあたえることになる。兄の枕元ですりかえる場合と、恒おじの薬局ですりかえておく場合と……そしてこのことが、探索を困難ならしめたのだ。なぜならば、第一の場合だと、容疑者はいちじるしく限定されるが、あとの場合では、そういうわけにはいかなかった。

兄の久弥はああいう病人にありがちの、ひどく気むつかしくなっていて、病室には小梅様と小竹様、それに姉の春代のほかは絶対にいれなかった。むろん、主治医の恒おじはべつとして。……だから、まえの場合にかぎっていれば、四人のなかから、犯人を探せばよかったのだが、あとの場合があるだけにやっかいだった。

田舎のことだから、恒おじの薬局はひどくルーズで、だれでも平気で出入りができた。間取りの関係で、恒おじの家の客間は、診療室の奥になっており、玄関からそこへ行くには診療室をとおらねばならないのだが、たまたま患者がきていると、客は薬局をとおって、奥の客間へとおされた。だから、恒おじといくらかでも懇意にしているほどのものならば、だれでも薬をすりかえるチャンスがあったわけだ。

したがって、問題は、だれがチャンスを持ちえたか、ということよりも、だれが早晚、兄の久弥にあたえられるであろう薬のストックが、いつも恒おじの薬局にあることを、知っていたかということになる。そして、その点になると恒おじにもわからなかった。むろん、いくら田舎でもそんな無責任な投薬のしかたはないので、恒おじはだれにも内緒にしていたが、一か月ぶん、百にちかい薬包紙を、いっぺんにつつむのは、相当、手間のかかる仕事なので、いつも家内じゅうで手伝っていたそうだ。そのなかには、小学校や中学校へ行っている子どももまじっていたから、かれらの口からもれて、恒おじ自身は内緒にしているつもりでも、かなり多くのひとが知っていたかもしれない。むろん、こうなったら、私はそれを知っていましたと、名乗って出るものもなかろうけれど……。

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