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八墓村-第三章 八つ墓明神(1)

时间: 2022-06-05    进入日语论坛
核心提示:第三章 八つ墓明神私は一度八つ墓明神を見たいと思っていた。この村のすべての悪と禍わざわいの根元となっている八つ墓明神それ
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第三章 八つ墓明神
 
私は一度八つ墓明神を見たいと思っていた。この村のすべての悪と禍わざわいの根元となっている八つ墓明神……それを見たところで、いま目前に迫っている、現実の問題の解決の足しになるとは思えないが、一応見ておく必要はあると思った。しかしなにぶんにも兄の急死でゴタゴタしている場合だし、それに、この村へ着いた日のことを考えると、うっかり外へ出るのもはばかられたのだ。
ところが、初七日の日のことである。お午ひる過ぎ、少し早目に手伝いに来た美也子にその話をすると、
「あら、それじゃこれからいっしょに行きましょうよ。お手伝いだって、どうせあたしはなにもできないのだし、あなただって、べつに御用はないでしょう。お寺さんがいらっしゃるのは、どうせ夕方になるでしょうから、それまでにちょっとお参りしてきましょうよ」
と、誘ってくれた。
私たちはふたりとも都会そだちだったので、忌中きちゅうには神参りをしないものだというようなことを知らなかった。いや、知っていても、それほど切実には考えなかった。
姉の春代に話をすると、ちょっとびっくりしたような顔をしたが、それでもすぐにうなずいて、
「そう、じゃ、行ってらっしゃい。でも、できるだけ早くかえってくださいね。間もなくお客様がお見えになる時刻だから……」
「ええ、じきにかえるわ。すぐそこなんですもの」
私たちは、ひろい座敷をつきぬけて、裏の勝手口から外へ出た。勝手口の外は、すぐのぼり坂になっており、少し行くと小さな貯水池があった。幸い、そのへんには人家もなく、人にも出会う心配も少なかった。
貯水池をぐるりとまわると、一間けんほど花か崗こう岩がんでたたきあげた崖がけがあり、崖の上には黒木の柵さくがめぐらしてあり、石段の下に、「田治見家之墓地」と、刻んだ石碑が立っている。ここまでは私も、兄のお弔いのときに来たことがある。この墓地の横に細い小こ径みちがついていて、それをのぼると、ひょろひょろと痩やせた赤松の生えた丘のあちこちに、点々として小さな墓石がならんでいた。このへんの丘が、八つ墓村の住民の、永遠の眠りにつく場所になっているのだ。
「ときに、金田一耕助という人はまだいますか」
ふと思い出して、私がそんなことを尋ねると、美也子はなぜか、ふっと美しい眉根をくもらせた。
「ええ、まだいるわ」
「いったい、あのひとはどういうひとなんですか。なにか、警察と関係のあるひとなんですか」
「さあ、それがよくわからないの。ひょっとすると、私し立りつ探たん偵ていというようなひとじゃないかと思うんだけど……」
「私立探偵……?」
私はちょっと驚いて、
「それじゃ、こんどの事件の調査に来ているんですか」
「まさか。……だって、あのひとが来たのは久弥さんの事件の起こるまえですもの。それに田治見家の事件に、うちの本家が、私立探偵を雇う義理もないでしょう」
「それもそうですね。しかし、野村さんは、どうして、私立探偵など、御存じなんでしょう」
「さあ、……あたしにはよくわからないけど……とにかく、あのひとがここへ来ているのには、特別の意味はないのでしょう。なんでもこの向こうの鬼おに首こべ村むらという村へ、事件の調査を依頼されてやってきたんですって。そのかえりに立ち寄って、しばらく骨休めをしていくんだという話よ」(作者注─鬼首村については、『悪魔の手毬唄』『夜步く』を参照されたし)
「へへえ、あんな男に、事件を依頼するひとがあるんですかねえ」
私は思わず、自分の感想をもらすと、美也子はふふふと笑って、
「まあ、ひどいことをおっしゃる。人は見かけによらぬものというから、あれでもりっぱな名探偵かもしれなくってよ」
美也子の言葉はあたっていたのだ。それから間もなく私たちは、あのもじゃもじゃ頭の貧相などもり男が、どのようなすぐれた探偵であるか、身をもって知らされたのだ。
それはさておき、小さな墓石のならんでいる丘をのぼりつめると、そこに切きり通どおしがあり、その切り通しを向こうへぬけると、さっきから聞こえていた水の音が、急に大きくなってきた。見るとはるか眼下に、かなり急な渓流が、岩をかんで流れている。こういう山奥としては川幅はわりにひろくて、いたるところに巨石がころがっていた。
「いつか、ひまがあったら、あの川へおりてみましょうよ。いたるところに鍾乳洞しょうにゅうどうができていて、ちょっとほかでは見られない景色よ」
私たちはしかし、その川ぶちまでおりずに途中から川と平行に、また坂をのぼりはじめた。そして、行くこと二、三丁にして、やっと八つ墓明神の石段の下までたどりついた。
石段は約五十段あった。かなり急な傾斜なので、一気にのぼるのには息切れがした。途中で下をみると、眼がくらみそうだ。石段をのぼりきると、山をきりひらいてつくった二百坪ばかりの平地があり、そこに八つ墓明神の拝殿があった。この八つ墓明神のつくりについては、べつに改めて述べるところもない。日本の津々浦々、どこへ行っても見られるようなお社やしろである。
 
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