日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页

地狱风景-第一杀人

时间: 2021-10-14    进入日语论坛
核心提示:第一の殺人 それから一時間程後(のち)、パノラマ館の入口で、大野雷蔵とその恋人の人見折枝の二人が、地上に引いた線を踏んで、
(单词翻译:双击或拖选)

第一の殺人


 それから一時間程(のち)、パノラマ館の入口で、大野雷蔵とその恋人の人見折枝の二人が、地上に引いた線を踏んで、両手を前につき、お尻をもったて、何とも奇妙千万な格好で、じっと前方を見つめていた。
「いいかい。用意! 一、二、三」
 雷蔵のかけ声で、二人は勇ましくスタートを切った。森の(むこう)に見える迷路の二つの入口から、別々に入って、早く中心の「奥の院」へ着いたものが勝ち、という障害物競走だ。
 ただの駈っこなら、折枝は到底雷蔵の敵ではない。現に出発間もなく、雷蔵は数メートルも先に走っている。だが、折枝は迷路の中での智恵比べで、先着になる自信があった。迷路については大ざっぱな男よりも、案内を知っている(つも)りであった。
 彼女は、雷蔵よりは(はる)かにおくれながら、でも失望することなく、約束に従って東の入口から、迷路にかけ込んだ。
 半間(はんげん)程の、曲りくねった細い通路の両側には、陽をさえぎって、見上げるばかりの丈余(じょうよ)生垣(いけがき)だ。生垣と云っては当らぬ。向側を透して見ることも出来ぬ、ビッシリと枝を(まじ)え、葉を重ねた大木の行列だ。それに(いばら)(こまか)い網を張り、(つた)がからみ、分けて出ることは(もちろん)、昇りついて越すことも、全く不可能になっている。そんな風にして逃げ出せるのだったら、迷路の意味を為さぬからだ。
 一歩迷路に踏み込むと、樹木の高塀の陰影のせいか、夕方の様に薄暗く、寒々として、その上何とも云えぬ、押えつける様な静けさだ。園内の花火場で、誰のいたずらか、時々、ドカーンと花火を上げる音の外には音もない。案内は知っているつもりでも、歩いている内に、いつしか道に迷ってしまった。一度や二度で覚え込める程なら、迷路とは云えぬ。迷えばこそ迷路なのだ。高い生垣で区切られた狭い空を見上げると、太陽も見える。風船や観覧車の一部も見える。空に開いた花火の、黄色い煙が竜の様に下って来るのも眺められる。だが、いくらその様な目印があったとて、平地を歩くのではないのだから、何にもならぬ。空ばかり見て中心へと向っていても、いつしか袋小路に行当って、動きがとれなくなってしまうのだ。
 曲り曲った果しも知らぬ夢の細道、行っても行っても永劫(えいごう)に尽きることなき狂気の細道、折枝はふと怖くなった。一度おじけづくと、もう際限がない、襟足(えりあし)生毛(うぶげ)がゾーッと音を立てて逆立ち、開いた毛穴から、水の様に冷い風がしみ込むのだ。
 足なみは、心臓の鼓動と共に早くなる。ヒタヒタ、ヒタヒタ、我が足音を不気味に聞きながら、急ぎに急ぐ。
 と、その足音とは調子の違うもう一つの足音が、入混って耳をうち始めた。(こだま)かしら、それとも気のせいかしら、イヤ、そうではない。(たしか)に人の足音、力強い男の足音だ。アア分った、大野さんだわ。あの人が木の葉の壁一重(ひとえ)向うを歩いているのだ。二人の通路が偶然隣り合わせになったのだ。
「大野さんじゃなくって?」
 声をかけると、先方の足音がピッタリ止った。(のぞ)いたとて見えぬけれど、木の葉の層の事故(ことゆえ)、声はよく聞えるのだ。
「折ちゃんかい」やっぱり大野雷蔵だ。
「エエ、そうよ。あたし道に迷っちゃって」
「ウン、僕もさっきから、何だか同じ所をグルグル(まわ)っている様な鹽梅(あんばい)だよ。……君こちらへ来られない?」
「駄目よ、行こうと思えば、(かえ)って離れてしまうばかりだわ」
 事実、声する方へ曲って行くつもりでも、道は気違いの様に、突拍子もない方向にそれているのだ。
「でも、行って見るわ。あなたも、こちらへ来られなくって?」
 そこで、二人はてんでんに、現に一尺とは離れず話し合っている、相手のありかを探す為に出発した。そして、(あん)(じょう)、お互に近づこうとあせればあせる程、いつしか、声も聞き取れぬ程遠ざかって行った。
 折枝はもどかしさ、不気味さに、汗びっしょりになって、当てどもなく、同じ細道をテクテク、テクテク歩いていた。まだ上げている花火の音が、忘れた頃に、ドカーン、ドカーンと、彼女の心臓を飛上らせた。
 暫くすると、彼女はハッと息を飲んで立止った。妙な音を聞いたのだ。耳鳴りではない。確に人の声だ。しかも断末魔(だんまつま)苦悶(くもん)を現わす、何とも云えぬ物凄い(うな)り声だ。
「ウム……」という、悲痛なうめき。一二秒間を置いて、「ク、ク、ク……」と、歯ぎしりをする様な、或は泣きじゃくりをしている様な、一種名状(めいじょう)し難い、低い物音が聞えて来た。
 折枝はゾッとして、暫くは口も利けなかったが、やっと(のど)の自由を取返すと、思わず、
「大野さーん」と、突拍子もない叫び声を立てた。
「オーイ」
 ずっとずっと遠くの方から、男の声が答えた。アア、やっぱりさっきの唸り声は大野さんではなかったのだ。だが、すると、彼女と大野さんとの中間に、何者かがいるのかしら、しかも、あのうめき声は決してただ事でない。急病でも起したのだろうか。イヤイヤ、どうもそうではないらしい。若しやその人は、何か恐ろしい目に合っているのではあるまいか。
「折枝さん、どこだい」
 今度はやや近い所で、大野さんの声がした。
「ここよ」
「今の、聞いたかい!」
 アア、ではやっぱり本当なのだ。大野さんもあれを聞いたのだ。
「エエ」
「どうも変だぜ。あれはただの唸り声ではなかったぜ」
「そうよ。あたしも、そう思うのよ」
「オーイ、そこにいるのは誰だ」
 大野さんが、見えぬ相手に呼びかけた。(しか)し、何の返事もない。
「変だな。あんな恐ろしい唸り声を立てた奴が、どこかへ行ってしまう筈はないが……ひょっとしたら、死んだんじゃないかしら」
 あの調子は、どう考えても断末魔の唸り声に相違なかった。
「あたし、怖いわ」
 折枝は、もう真青(まっさお)になって、姿は見えぬ大野さんの声に、すがりつき()い程に思った。
「待ってい(たま)え、僕が探して見るから」
 大野さんはそう云って、暫くその辺を歩き廻っている様子であったが、やがて、思いもかけぬ方角から、
「ワッ」
 という恐ろしい叫び声が聞えて来た。

迷路の鬼


「大野さあん、大野さあん」
 人見折枝は、今にも絞め殺される様な悲鳴を上げて、見えぬ彼方(かなた)の恋人を呼んだ。
 無理もない。九十九折(つづらおり)の薄暗い迷路の中で、道に迷って泣き出し(そう)になっていた折も折、隙見も叶わぬ立木の壁の、つい二重三重(ふたえみえ)向側で、恐ろしい事件が起ったのだ。ゾッとする様な断末魔のうめき声、続いて現場を見に行った大野さんの「ワッ」という頓狂(とんきょう)な叫び、ただ事ではない。大野さん程の人が、あんな声を立てるのは、よもただ事ではない。
「オーイ、折枝さん大変だあ、早く外へ出て、誰か呼んで来てくれえ」
 雷蔵の(あわただ)しい声が聞えて来る。
 外へ出るとて、この迷路を急に抜け出せるものではない。
「誰なの? そこにいるのは。そして、一体どうしたって云うの?」
 折枝も一生懸命の声をはり上げて、兎も角も細い迷路を走り出した。じっとしていられなかったからだ。
「ちま子さんだ」
 雷蔵の声が走る折枝の耳に入った。
「エ、ちま子さんがどうしたって云うの?」
 彼女はグルグル迷路を折れ曲りながら、息を切らして叫んだ。
「どうしたの?」
 尋ねても、何故(なぜ)か返事がない。口に出して云えない程恐ろしい事かも知れない。
「アア、そこを走っているのは折枝さんかい」
 立木の壁のすぐ向側から雷蔵の声だ。いつの間にか、びっくりする程接近していた。
「そうよ。して、ちま子さんがどうしたの?」
 目にこそ見えね、相手がすぐ(そば)にいると分ると、折枝は声を低めて、又尋ねた。
 すると雷蔵の方でも、異様な囁き声で、初めて事の次第を告げた。
「殺されているんだよ。背中に短刀が突き刺さって、血まみれになって……」
 目の前に立ちふさがった緑の壁から、姿はなくて、不気味な囁き声ばかりが、シュウシュウと()れて来る。しかも世にも恐ろしい囁き声が。
「マア……」
 と声を呑んで、立ちすくんだまま、折枝は二の句がつげなかった。
「君、その辺に人の気配はしなかったかい。誰かに出会わなかったかい」
 雷蔵の声が一層低められた。
「イイエ、でもどうして?」
「犯人さ。ちま子さんを殺した奴が、まだこの迷路の中にウロウロしているかも知れないのだ」
 折枝はそれを聞くと、ゾーッとして身体(からだ)中の血が冷たくなる様な気がした。
「あたし誰にも……」彼女は()の様な声になって「あんたは? 誰か見て?」
「見ない。だが、足音を聞いた。僕がここへ、ちま子さんの倒れている所へ駈けつけた時、黒い風みたいなものが逃げ出して行った。バタバタと足音がした」
 ヒソヒソ声が、まるで怪談でも聞いている様に物凄く感じられた。
「怖い。あたし怖いわ。どうしましょう。あんたどうかしてこちらへ来られない? 一人ぼっちじゃ心細いわ」
 折枝が泣き声になって見えぬ姿にすがりつく様に云った。
「それよりも、早くみんなに、このことを知らせなきゃ、……君も一生懸命に出口を探し給え。僕もそうするから。ただ……」
「エ、なんておっしゃったの?」
「ただね、ちま子さんを殺した奴を用心し給え、姿は見えなくても、足音でも聞いたら、大きな声で、怒鳴(どな)るんだ。いいかい」
「あたし怖くって歩けないわ。早くこちらへ来て下さいな」
「ウン。だが、うまく行けるかどうだか」
 そして、雷蔵の惶しい足音が遠ざかって行った。
 見上げるばかりの密樹の壁にはさまれた、薄暗い細道に、たった一人取残された折枝は、もう生きた空もなかった。
 大野さんを呼び戻したかったが、恐ろしい殺人犯人がまだその辺にいると思うと、声を立てることも(はばか)られた。
 気がつくと、(わき)の下が冷たい汗でジトジトになっていた。
 足はしびれが切れた様に云うことをきかなかった。
 しかし、じっと立止っているのも恐ろしい。かなわぬまでも出口を探して、寸時も早く迷路から逃れ度い。
 彼女は力の抜けた足を踏みしめて、いきなり走り出した。
 両側をドス黒い木立の壁が、あとへあとへと飛び去るばかりで、迷路は果しもなく続いた。出よう出ようとあせればあせる程、(かえっ)て中へ入って行くのかも知れなかった。
 ふと気がつくと、ハタハタ、ハタハタ、どこからか人の足音が聞えて来た。
「アア有難い。大野さんが近くを走っていらっしゃる」
 と思うと、グッと気が強くなった。
「大野さん」
 低い声で呼んで見た。
 答えはない。ハタハタ、ハタハタ、足音ばかりだ。
「大野さーん」
 ()まり()ねて思わず大声を上げた。
 しかし、相手はやっぱり答えない。黙々として走っている。
「オヤ変だぞ。アア、ひょっとしたら……」
 ギョクンと心臓が喉の辺まで飛上った。あの足音の主こそ、若しや恐ろしい人殺しではあるまいか。そうだ。きっとそうだ。こんなに呼んでも答えぬのは、それに()まっている。
 折枝は怖さに一層足を早めた。喉がひからびて、心臓が破れ相に鼓動する。
 行手に急な曲り角があった。折枝はもう無我夢中でその角を曲った。
 と同時に、五六間向うの同じ様な曲り角を、ヒョイと飛び出した奴がある。
「アレエ……」
 我にもあらず、業々(ぎょうぎょう)しい悲鳴を上げて、折枝はその場に立ちすくんだ。
 先方も驚いたらしい。ハッと思う間に、(たちま)ち姿を隠してしまった。
 確に大野さんではなかった。大野さんが折枝の姿を見て逃出す筈はないからだ。では今のは何者であったか。残念ながら、折枝はそれを見極めるひまがなかった。咄嗟(とっさ)の場合着衣の色さえ気附かなかった。だが、女ではない。ズボンをはいていた。そして、非常に小柄な男であった。恐らく女の折枝よりも背が低かった。
 耳をすますと、ハタハタ、ハタハタ、遠ざかって行く、曲者の足音がする。
 折枝はその足音が消えるのを待って、いきなりうしろへ走り出した。滅茶滅茶(めちゃめちゃ)に走った。迷路を出ることなど、もう考えなかった。ただじっとしていられないのだ。
 グルグル、グルグル廻っている内に、パッと眼界が開けて、広い場所へ出た。だが、迷路の外ではない。その中心の広場なのだ。所謂奥の院という場所だ。
 真中に一脚のベンチが据えてあった。そのベンチの足元に、白と赤とのダンダラの(かたまり)が転がっていた。血にまみれた諸口ちま子の死骸であった。
 簡単な白い絹服の背中にニョッキリ短剣の()()けが生えていた。刄の方は全部ちま子の体内へ隠れているのだ。
 絹服は、鮮かな血のりの縞模様に染まって、(くう)を掴んだ両手と、もがいた両足とが、白っぽく根元まで現われていた。
 ちま子は無論全く絶命していた。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: