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地狱风景-凤尾船之歌

时间: 2021-10-16    进入日语论坛
核心提示:ゴンドラの唄 カーニバルの当日が来た。殆ど日本全国から集まった猟奇の紳士淑女は、前夜近隣Y市に一泊して、定刻正午頃には、
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ゴンドラの唄


 カーニバルの当日が来た。殆ど日本全国から集まった猟奇の紳士淑女は、前夜近隣Y市に一泊して、定刻正午頃には、例の緑樹のアーチの下へ、三々五々到着した。
 アーチの下には、小波(さざなみ)一つ立たぬ青い水面に、例のゴンドラが奇妙な船頭をのせて浮んでいた。
 船頭は二人。一人は(へさき)(かい)をあやつる少女、一人は(とも)にギタを抱く少年、少女は全身に純白の羽毛の(きぬ)を纒い、少年は真紅の羽毛の衣に包まれている。紅白の美しい水鳥が、とまどいをして、ゴンドラの上に(しば)(みずかき)を休めているかと、見紛(みまご)(ばか)りだ。先着の三人の紳士淑女が、まず(その)舟に乗込むと、少女の櫂が静かに水を掻分(かきわ)けて、ゴンドラは細い淵を、(ゆる)やかに(すべ)り始めた。
「お嬢さん、坊ちゃん、これは実に御趣向でしたね」
 口髯(くちひげ)を短く揃えた年長の紳士がニコニコしながら、船頭に話しかけた。
「坊ちゃん、それは楽器ですか。一つお()きなさい。お嬢さんは、船を()ぎながら歌えますか」
 十七歳の坊ちゃんと、十八歳のお嬢さんは、紳士の顔を見返してニッと笑った。そして答えはなくて、少年のギタの弦が震い始め、少女の赤い唇が動いた。静かなる櫂の調子に合せて、ゴンドラの唄が水面を流れた。
「夢の国! オオ、僕等は夢の国へ旅をしているのだぜ。この子守唄はすばらしくはないか」
 紳士が、歌に和する様に、柔かいバスで云った。
「本当にあの少年楽手の可愛いこと」黒い洋装の淑女が、美しいソプラノで調子を合せた。
 両岸には、ドス黒い木の葉がうず高く空を覆って積重(つみかさ)なり、その濃緑の壁に真赤な椿(つばき)の花が、ポッツリにじんだ血の様に、一輪ずつ其処此処(そこここ)に咲いていた。空はドンヨリと(くも)って、遠いスリガラスの様に見えた。
 水を渡る微風が、舳に立つ少女の(かん)ばしき体臭を、彼女の高い歌声と共に、ソヨソヨと吹き送った。
 いつの間にか、二人の紳士は、少年楽手の両側に座して、両方から少年のまだ柔い肩に手をのせていた。淑女は少年の前に座して、その桃色の頬を飽かず眺めていた。
 舳の少女は(ひとり)歌いながら、愈々身体を振って、櫂の手を早めた。舟はスイスイと、水虫の様に調子をつけて、勢いよく辷り始める。その度に、舳に捲き起る風は、少女の純白の羽毛を、一ひら、二ひら、吹きちぎっては、空へ舞い上らせた。一ひら二ひら、舟の速度が加わるにつれて、吹きちぎられる羽毛は益々多く、はては時ならぬ吹雪となって、ゴンドラの上を、うしろへうしろへ飛び散って行く。
 はげ落た羽毛の下には、少女の焦げ茶色の肌が、汗にぬれて、うず高く盛り上っていた。
 ゴンドラの唄は、愈々高らかに、櫂持つ腕の、背の、腹の躍動は益々はげしく、残る羽毛をひと時にはじき飛ばして、見よ白い空を背景に、全裸の乙女の立ち姿。
 羞恥(しゅうち)を知らぬ国の乙女は、そのまま勇敢に櫂をあやつりながら、上半身をねじ向けて、艫の少年楽手を(かえり)みた。
「調子が低いわ。もっと高く、もっと狂わしく」
 少女の声に、少年はいきなり席を立上り、彼も又白い歯を見せて歌いながら全身を微妙に動かし、今はとばかりギタをかき鳴らす。
 少年の真紅の羽毛も、ヒラヒラと舞い始めた。そして、その下には、ミケランジェロの曲線が、いとも美しく隠れていた。全裸の二人の船頭は、歌い、弾き、踊りながら舟を進めた。ゴンドラは、ユラユラと(あやう)く揺れて、右に左にたゆいながら進んで行く。
 三人の紳士淑女は(ふなばた)にしがみつき、しかし激しい夢に酔いながら、(わが)前に踊る、二様の曲線に見とれていた。
 そして、舟は港に着いたのだ。
 港には、数十人の裸女の背を合せた、異様の桟橋(さんばし)がうねっていた。客は、その毛氈(もうせん)よりも柔く、暖かき桟橋を踏んで上陸した。陸には、数人の紅白ダンダラ染の道化服をつけた男が、手に手に衣裳を持って待ち構えていた。
「お客様方、よくこそお出で下さいました。園主はあちらで待ち兼ねて居ります。さあ、お召替(めしかえ)下さいませ」
「エ、何だって、お召替だって?」年長紳士がけげん顔で聞返した。
「はい、お召替でございます。お客様はカーニバルの衣裳とお召替なさらなければなりません」
「アア、夢の国には、夢の衣裳か」紳士は漸く納得して、その衣裳を受取った。
 拡げて見ると、絹糸のあらい網に金銀の南京(ナンキン)玉を結びつけた、まるで踊り子の舞台衣裳の様なものだ。
「これを?」
「ハイ、それをでございます」
「シャツの上から?」
「イイエ、シャツも何も、今お召になっていますものは、すっかり私の方へお預かり致します」
「だって、君」
「イイエ、園主の申しつけでございます」
 そこで、男女三人の不思議な踊子が出来上った。ピカピカ光るあらい網の目から、或は(ゆたか)な、或は()せっぽちな、或は(すべ)っこい肉体が、異様にすいて見える。頭には同じ南京玉のナイトキャップだ。
 さて三人はお手々をつないで、何とまあ、声高らかに、ゴンドラの唄を口ずさみながら、教えられた道を、正面の小山の頂きへと昇って行った。(あら)わなお尻を振りながら。昇り尽して頂上に立った時、突然、三人の口から、びっくりする様な叫び声が爆発した。
「ウラー! ウラー!」
 そこには、小山の向うのジロ楽園の内部には、真実びっくりする様な、何とも云えぬ狂人の国の風景がひろがっていたからだ。

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