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地狱风景-恶魔的升天

时间: 2021-10-16    进入日语论坛
核心提示:悪魔の昇天 逃げ、逃げて、治良右衛門は、場内一隅の小高き丘の上、大軽気球の繋留所へとかけ上り、繋留柱(ばしら)の前にスック
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悪魔の昇天

 逃げ、逃げて、治良右衛門は、場内一隅の小高き丘の上、大軽気球の繋留所へとかけ上り、繋留(ばしら)の前にスックと立った。
「諸君、待ち給え。僕は仕残(しのこ)した仕事を、ここで完成するのだ。諸君に見せるものがあるのだ」
 十数名の警官隊は、治良右衛門を囲んで、身動きすれば取りひしがんと構えていた。
「ホラ、これを見給え。これは何だ」
 治良右衛門が指し示したのは、繋留柱にとりつけてある、一箇の大型のスイッチだ。
「このスイッチが何を意味すると、諸君は思う、このスイッチこそ、ジロ楽園建設の最終目的を暗示するのだ。このスイッチの金属に火花が散る時、アア、ジロ楽園にはどの様な地獄風景が現われることだろう。僕はそれを思うと嬉しさに胸が破れ相だ。諸君にその光景が見て貰い度いのだ。それ故にこそ君達をここまでおびき寄せたのだ」
 警官達は何とも知れぬ不安の為に、ジリジリと油汗(あぶらあせ)が湧き出すのを感じた。彼等の目はスイッチに釘着(くぎづ)けになった。「あのスイッチを入れさせては大変だ」という考えが、一同の胸をワクワクさせた。
「イヤ、これじゃない。スイッチそのものを見てくれというのじゃない。諸君はうしろを見るんだ。この丘の上から、ジロ楽園の全景を見渡すのだ。サア、今だ。今こそジロ楽園の最後の時だ」
 叫びも終らぬに、スイッチに、パチッと火花が散った。人々は殆ど反射的に、うしろを振返って、楽園の全景を眺めた。
 何とも形容し難い地鳴りが起った。大地震の前兆の様な、おどろおどろしき音響が鳴りはためいた。
 地震ではない。だが、地震以上の地獄風景が、やがて人々の眼前に展開された。
 先ず、浅草十二階を模した摩天閣が、その中程から折れちぎれて、スローモーションで、土煙りを上げながら、くずれ落た。そこに昇っていた仮装の客達が、土煙の中で、空中にもんどり打って、地獄の亡者の様に、大地へと墜落して行くのが、まざまざと眺められた。天地もとどろく大音響と、恐ろしい地響(じひびき)が、相次いで起った。
「次は観覧車だッ」
 治良右衛門の叫び声が物凄く聞えた。
 忽ち大空の観覧車に異変が起った。大観覧車の車輪が、カランカランとほがらかな音を立てながら、組立ておもちゃの様に、解体して行った。それにブラ下った十幾つの小型電車の様な箱の中には、どれもこれも満員の乗客であった。彼等は箱もろとも、大地に墜落しながら、車室の窓から、手をさし出し、顔一杯の口を開いて、身の毛もよだつ悲鳴を合唱した。
 阿鼻(あび)地獄。叫喚(きょうかん)地獄。
 パノラマ館の丸屋根は締金(しめがね)がはずれて、円筒形の壁の中へ、スッポリと落込んで行った。
 コンクリートの大鯨は、百雷の音と共に、粉々になって四散した。
 地底の水族館は氾濫(はんらん)し、地獄極楽のトンネルは山崩れに(うず)もれ、池も川も津波となって湧き返った。
 如何なる大戦争よりも激しい動乱、物凄い音響が、何十町歩のジロ楽園を揺り動かした。
 火薬の煙、土煙、砂煙が、森も林も丘も覆い尽して、空へ空へとなびいて行った。
 コンクリートの破片、鉄骨の(きれ)っぱし、ひきちぎれた柱、人間の首、手、足、その外あらゆる破片が、警官達の頭の上から降って来た。まだ降りしきる五色の雪ともろともに。
 警官達は、目はめしい、耳は(ろう)し、心はうつろに、よろめきながら、そこに立っているのがやっとだった。犯人を捉えるなどという考えは、どこかへふッ飛んでしまって、治良右衛門の存在をさえ、殆ど意識しなかった。
 やがて土煙がしずまると、ジロ楽園は見るも無残な一面の廃墟であった。墓場の静寂、死の沈黙。見渡す限り動くものはなにもなかった。
「みなごろしだ。あの何百人という客達が、みなごろしになったのだ」
 警官の一人が放心した声で云った。
 ジンタ楽隊の音楽も酔っぱらいの歓声も、哀れや一瞬にして幽冥界へと消えて行った。
 最早や花火を打上げる者もなく、従って美しい五色の雪も降りやんだ。
「だが、たった一人、殺されなかった者があるのですよ」
 ふと気がつくと、大虐殺者治良右衛門が、ニコニコ笑って立っていた。
 警官達の憎悪が爆発した。彼等は十何匹の(いなご)になって、物をも云わず、大悪魔に飛びついて行った。
「オットどっこい」
 治良右衛門は、(あやう)く身をかわして、そこに下っている軽気球の繩梯子に飛びついた。そして、素早く上へ駈上りながら、
「殺されなかったのはね、僕の女房の鮎子ですよ。木下鮎子ですよ。あいつだけはどうも殺す気がしなかったのですよ。ごらんなさい。僕の女房がご挨拶していますよ」
 見上げると、軽気球のゴンドラから、美しい鮎子の顔が、五色のテープを投げながら、警官達に笑いかけていた。
「ウヌ、逃がすものかッ」
「畜生めッ」
「馬鹿ッ! ご用だッ」
 警官達は、狂気の様に、繩梯子を這い上った。先頭には治良右衛門、少し離れて木島刑事、それから制服巡査の十幾人が、空へ一列の鈴なりだ。
 治良右衛門は、もう足の下の追手達をからかいもせず、黙々として、空の梯子を駈昇って行った。猿の様に早かった。
 やがて十数丈の繩梯子も尽き、ゴンドラの中から鮎子の白い手が、治良右衛門を引き上げた。彼が(かご)の中へ飛び込んだ時には、併し木島刑事の手首が、ゴンドラの縁にかかっていた。
「早く、早く、繩を」
 治良右衛門の命令に、()ねて手筈が極めてあったのか、鮎子の手に白刄(はくじん)がひらめいて、空中梯子の二本の繩が、プッツリ切断された。
 木島氏の片手には、彼につづく十幾人の警官の重さを支える力がなかった。繩と共に彼の手首もゴンドラを離れた。
 空へ垂直に伸びた繩梯子は、(じゅず)つなぎの警官隊をのせたまま、(たちま)ち、間をクタクタクタとくずれて行った。警官の雨。
 と同時に、綱を切られた軽気球は、ブリブリとお尻をふりながら、大空高く舞い上った。
 治良右衛門と鮎子とは、ゴンドラから半身をのり出して、残っていた紙テープを(ことごと)く地上に投げおろし、声を合せて万歳を叫びながら、思出深きジロ楽園の廃墟に永別を告げた。
 軽気球はどこまでも昇天して行った。幾つも幾つも白い綿雲をつき抜けて、一匹の小さな魚の様になって、(ふさ)と下った五色のテープがその魚のひれの様に見えて、楽しげに、楽しげに、小さく、小さく、そして、いつしかほこりの様に(かす)かになって、果てしれぬ青空の底へと消えて行った。

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