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地狱风景-杀人三重奏

时间: 2021-10-14    进入日语论坛
核心提示:殺人三重奏 木島刑事は、この気違いめいた有様に、あきれ返って、口も利けなかったが、やがて、徐々に正気に帰ると、いつもの意
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殺人三重奏


 木島刑事は、この気違いめいた有様に、あきれ返って、口も利けなかったが、やがて、徐々に正気に帰ると、いつもの意地悪な、冷たい表情が、彼の顔を占領した。
「湯本さん、恋人の死骸の写生とは思いつきですね。実に(うま)い考えだ」
 彼は皮肉たっぷりに感心して見せた。
「巧いでしょう。こんな美しいポーズは、(とて)も人間業で考え出せるもんじゃありません。一生涯に二度と手に入らぬ、すばらしいモデルですよ」
 譲次は無邪気に自慢している。
「うまいッ! その無邪気さは、名優だって真似が出来ないでしょう」
 刑事は益々(ますます)皮肉に云う。
「名優ですって? すると、何だか、僕がお芝居でもやっている様に聞えますね」
 譲次が変な顔をして、刑事を見つめた。
「うまいッ、益々うまいですよ。被害者の死骸を写生して嫌疑を(まぬが)れ様というのは、実にズバ抜けた新考案です」
「オヤッ、すると、僕が、この女を殺して置いて、その嫌疑を免れる為に、こんな真似をしているとでもおっしゃるのですか」
 譲次は、やっと刑事の真意を悟ったのか、びっくりした様に聞き返した。
「ハハハハハハハ、いやなに、必ずしもそういう訳ではありませんがね。併し、……」
「併し、どうしたんです。アア分った。君は僕が下手人だと()めて、拘引(こういん)する積りでいるんだね。だが、刑事さん、僕を牢屋(ろうや)へブチ込むには、確な証拠がなくてはなるまいぜ。君はそれを持っているのかね。証拠だ。証拠を見せ給え」
「証拠ですか」刑事はゆっくり答えて、麗子の死骸に歩み寄ると、その胸から例の短刀を引抜いた。
「例えば、この短刀です。この(つば)のない棒みたいな兇器は、一目で持主が分る筈です。喜多川さん、そうではありませんか」
「如何にも、それは湯本君の奇術用の短剣です。併し……」治良右衛門は、困惑して口ごもった。
「馬鹿なッ、若し僕が真犯人であったら、一目で分るそんな兇器を、死骸の胸に残して置くものですか。それは却て、僕の無実を証拠(だて)ているのだ」譲次が怒鳴った。
「兎も角も、君は一応警察署まで御同行を願わねばなりません。警察署長なり予審判事なりが、君の御意見を伺うでしょう」木島刑事は冷然と云い放った。
「イヤだ。僕は恋人の死骸をうっちゃって、警察なんぞへ行く訳には行かぬ。僕は断じてジロ楽園を出ない」
 争いが段々激しくなろうとしている所へ、ヒョッコリ怪物が這入って来た。せむしの餌差宗助だ。彼は醜い額に汗の玉を浮べて、セイセイ息を切らしている。迷路の中を駈ずり廻ってやっとここへたどりついたものであろう。
「オオ、宗助じゃないか。どうしたんだ」治良右衛門が驚いて声をかけた。
「旦那、大変だ。早く来て下せエ。あれを見ると、直様(すぐさま)駈出して来ただが、迷路で三十分も手間取っちまった。もう迚も息は吹き返すめエ」云いかけて、彼はふと原田麗子の死骸に気づいた。「ワー、ここにも人死(ひとじに)があっただね。麗子さんじゃねえか。誰が殺しただ」
「ここにもって、宗助、それじゃ、どっかにもう一人殺された者があると云うのか」
 治良右衛門が(あわただ)しく聞き返す。
「そうです。あっちにも一人殺されているだ」
「誰が?」治良右衛門と刑事が、殆ど同時に叫んだ。
「坊やです。可哀相に、ピストルで胸をうたれて、虫の息だ。イヤ、今時分は、その息も絶えてしまったべえ」
「坊やだって、三谷二郎か」
「ヘエ、そうです」
「木島さん。湯本君も、争いは後にして一緒に行って見よう。三谷少年が殺されているんだ」
 治良右衛門は云いながら、もう駈け出していた。せむしの宗助がそのあとを追って走る。湯本譲次も、その腕を掴んだ木島探偵も続いて走る。
「どこだ。坊やが殺されているのは」
「メリーゴーラウンドのとこです。木馬に乗っかっててやられたです」
 やっと迷路を抜け出して、木馬館へ来て見ると、楽園の傭人(やといにん)達が、十数名、一かたまりになって騒いでいた。
「三谷はどうした。まだ息があるか。誰か医者を呼びに行ったか」
 治良右衛門の声に、傭人達は道を開いて、口々に答えた。
「もう駄目でございます。つい今しがた息が絶えました」
 見ると、木馬から転がり(おち)た姿勢のまま、二郎少年は、両手で地面を引掻(ひっかき)き乍ら絶命していた。
「なぜベッドへ運んでやらないのだ。こんな地べたで、可哀相じゃないか」
 治良右衛門が傭人達を見廻して(しか)りつけた。
「アア、治良、そこどころじゃないのよ。死人は三谷さん一人じゃないんですもの」
 群集の中から治良右衛門の恋人の木下鮎子が飛び出して、泣声で答えた。
「一人じゃないって? 一体どうしたというのだ」治良右衛門がびっくりして叫ぶ。
「折枝さんよ。折枝さんが風船から落て死んでしまったのよ。その方へは大野さんが行っていらっしゃるのよ」
「エ、エ、折枝さんが?」
 一同、それを聞いて、二の句がつげなかった。

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