かすかな足音
地下室の水の中では、井上君とポケット小僧が、もう一時間もおよいでいました。およぐといっても、ふつうにおよぐわけではなく、両手でコンクリートの壁にすがって、身を浮かせていればいいのですが、じっとしていては、しずんでしまうので、ときどき、足をうごかさなければなりません。
つめたさに、からだがしびれたようになって、いまにも気をうしないそうです。
「おやっ……、井上さん、聞こえるかい」
とつぜん、ポケット小僧が、はずんだ声でいいました。
「なにが?」
「ほら、足音だよ。上をだれかがあるいているよ。ひとりじゃない。おおぜいの足音だ」
「あっ、そうだね。BDバッジがとどいて、ぼくらをたすけにきてくれたのじゃないかしら」
「うん、きっとそうだよ」
まっくらな水の中のふたりはうれしそうに、ことばをかわしましたが、やがて、足音はだんだんとおざかっていって、またもとの、シーンとしたしずかさに、もどってしまいました。
「おうい、ぼくたちここにいるよう。たすけてえ……」
ポケット小僧が、死にものぐるいの声を、はりあげました。
しかし、みんなは、とおくへ行ってしまったらしく、なんの手ごたえもありません。
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