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恐怖王-蠢货(3)

时间: 2021-08-29    进入日语论坛
核心提示: 二人は鍵のかかっているドアを開(あけ)て、ソッと寝室に忍び込む。 見ると大きなベッドのまわりには、天井から蚊帳(かや)の様
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 二人は鍵のかかっているドアを(あけ)て、ソッと寝室に忍び込む。
 見ると大きなベッドのまわりには、天井から蚊帳(かや)の様な薄絹が垂れて、その中にスヤスヤ眠っている京子の顔が、うっすりと見えている。
「よくやすんでいますわ。さっきわたしが見廻った時と少しも変ったことはありません」
 夫人はホッと安堵(あんど)の溜息をつく。
 蘭堂は不躾(ぶしつけ)にも、薄絹に顔をくッつける様にして、京子の寝顔を覗き込んでいたが、やがて、何に気附いたのか、ただならぬ様子で夫人の腕を(とら)えた。
「奥さん、ごらんなさい。京子さんの寝顔を。余り静かじゃありませんか。それにあの青さはどうでしょう」
「エ、何とおっしゃいます」
 夫人はギョッとして、蘭堂を見つめた。
「奥さん、念の為に、京子さんを起して見て下さい。何だか変です」
 夫人は云われるまでもなく、薄絹をまくって、寝台に近づき、白い毛布の上から京子の身体をソッと揺り動かした。
「京子さん、京子さん」
 併し返事はない。
 夫人は慌しく、毛布の下の娘の左手を探し求めて、それを握った。冷い、まるで氷の様だ。
「京子さん、どうしたのです。コレ、京子さん」
 夫人はもう半狂乱の(てい)で、握った手を強く引いた。
 と、実に恐ろしいことが起った。
 夫人は大きな音を立てて尻餅(しりもち)をついたのだ。京子の左手を握ったまま。非常に滑稽(こっけい)な図であった。それ故に一層物凄く恐ろしかった。
 まるで人形の腕がもげる様に、京子の手がスッポリと抜けてしまったのだ。切口には幾重にも白布を巻いて、出血がとめてあった。
 蘭堂は倒れた夫人はそのままに、いきなりベッドの毛布をまくって見た。毛布の下には、両手を失った、無残な京子のむくろが横わっていた。呼吸も脈搏も絶え果てて。毛布に覆われていた為にそれまで少しも気附かなかったが、シーツは毒々しく血のりに染っている。
「オイ、誰か来てくれ給え」
 大声にどなると、見張り番の書生が二人駈け込んで来た。そして、京子の有様を見ると、アッと叫んだまま棒立ちになってしまった。
 全く不可能なことが行われたのだ。二人の書生は一瞬間も持場を去らなかった。無論夫人の外には猫の子一匹寝室へ這入ったものはない。又出たものもない。


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