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恐怖王-可怕的婚礼(1)

时间: 2021-08-26    进入日语论坛
核心提示:恐ろしき婚礼 一人になると、ロイド眼鏡の男は、棺の蓋(ふた)をこじあけて、中の仏様を覗(のぞ)き込んだ。「フン、美人という奴
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恐ろしき婚礼


 一人になると、ロイド眼鏡の男は、棺の(ふた)をこじあけて、中の仏様を(のぞ)き込んだ。
「フン、美人という奴は、死骸になっても、何となく色っぽいものだな。あんまりやつれてもいない。これならうまく行き(そう)だ」
 独言(ひとりごと)(つぶや)きながら、彼は、不気味な死体を、ヨッコラショと抱き上げて、外の畳の上に横たえた。
 電燈の光が、蝋石(ろうせき)の様な死人の顔を、まともに照らした。
 アアなんという美しい死骸であろう。年はまだ二十歳(はたち)には達していまい。いずれ病死したものであろうが、それにしては、さしてやつれも見えず、顔も身体(からだ)も適度の肉附きだ。
 (しか)し、美しいといっても、死人のことだから、すき通った色のない美しさだ。イヤ、よく眺めていると、顔全体に、何とも云えぬいやらしい死相が浮んでいる。ゾッとする様なあの世の(におい)が漂っている。いくら美人だからといって、死骸はやっぱり恐ろしいのだ。
「サア、お嬢さん、これからわたしがお化粧をして上げますよ。明日は嬉しいご婚礼ですからね」
 ロイド眼鏡は死骸に話しかけながら、部屋の隅の大トランクの中から、化粧道具を持出して来た。縁側(えんがわ)には水を入れた金盥(かなだらい)が置いてある。顔料を溶かす特殊の油も用意されている。さて、これから、役者がする様に、死人の顔のこしらえを始めようという(わけ)だ。
 横に寝かせたまま、()ず水でよく顔を洗って、下地にはクリーム、それから濃い煉白粉(ねりおしろい)、頬紅、口紅、粉白粉、まゆずみと、男のくせにお化粧は手に()ったものだ。
 だが、それ()けでは駄目だ。いくら色艶(いろつや)がよくなったとて、顔の相好(そうごう)が生きては来ない。死人か、でなければ生命(いのち)のない人形だ。
 第一目が死んでいる。閉じた目を指で開いて、(しばら)くじっと押さえていると、そのまま開きはしたけれど、どうも生きた人間の目ではない。
 そこで彼は絵筆を取って、適度の目隈(めくま)を入れ、眼尻には紅をさし、乾いた眼球そのものをさえ、油絵具で(いろど)った。
 

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