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恐怖王-恶魔的真面目(5)

时间: 2021-08-29    进入日语论坛
核心提示: 極った様に死骸に化粧を施して結婚式を行うというのには、単なる殺人狂以上の意味があり相に見えるではないか。 それは金銭を
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 極った様に死骸に化粧を施して結婚式を行うというのには、単なる殺人狂以上の意味があり相に見えるではないか。
 それは金銭をゆすり取る手段であったかも知れない。又犯罪者の虚栄心から出た奇抜なお芝居であったかも知れない。だが、その奥にもう一つの意味が隠されてはいないだろうか。
 蘭堂は知らなかったけれど、布引照子の恋人鳥井純一は、一夜生けるが如き照子の姿に引き寄せられ、彼女の声を聞き、暖い肌触りを感じたではないか。これは一体何を意味するのだ。そこには、照子の死骸の蔭に、犯人喜多川夏子がひそんでいて、腹話術を使い、死骸の身替りを勤めたのではあるまいか。
 今又大江蘭堂は、恋人花園京子を奪われた上、一夜を夏子の家に明かすこととなったではないか。そこに一脈の相通ずるものが隠されているのではなかろうか。
 蘭堂は、そこまで深く考える余裕はなかったけれど、何とも知れぬいまわしさに、目の前が暗くなる様な気がした。
     ×     ×     ×     ×
 間もなく所轄警察から多数の警官が駈けつけて、附近を隈なく捜索したのは勿論、鉄道の駅々、街道という街道へ非常線をはって、人間ゴリラを待受けたけれど、彼はどこへ逃げ込んだのか、幾日たっても警察の網の目にかからなかった。
 一目見ればそれと分る奴だから、人中へ出て来れば、忽ち捉まるは知れている。しかも、いつまでたっても消息がない所を見ると、彼は故郷の深山へと分け入って、元の猿類に帰ってしまったのではあるまいか。
 警察でも世間でも、恐怖王の正体が一未亡人に過ぎなかったという結論では、どうも満足が出来なかった。彼等は何かしらもっとすばらしい超人を期待していた。
 ひょっとしたら、それらは凡て、奥底の知れない極悪人の、巧みにも拵え上げた偽証ではなかっただろうか。
 本当の恐怖王は、まだどこかに生き永らえていて、次の大それた計画を目論んでいるのではあるまいか。そして、夏子未亡人は、賊にとっては仇敵である大江蘭堂と恋をしたばっかりに、さし当りその筋を油断させる為の、可哀相な替え玉に使われたのではないだろうか。つまり黒瀬と称するあの怪画家と、夏子未亡人とは全く何の関係もなかったのではないか。
 あの毒薬の注射にしても、ゴリラを殺すのが目的ではなく、一時人事不省(じんじふせい)に陥らせ、檻の中から、逃げ易い病院へ移させる手段でなかったとは云えぬのだ。
 だが、それは永久に解き難き謎であった。再び「恐怖王」が活躍を始めるか、行衛不明のゴリラ男が姿を現わすか、それとも(また)、あの鎌倉の空に「恐怖王」の文字を描いた怪飛行機の操縦者が名乗って出るまでは(不思議なことに、その操縦者は、いくら探しても、いつまでたっても現われて来なかったが)これらの疑いは、いまわしき幻想でしかなかった。

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