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魔术师-地底の滝

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示:地底の滝 穴蔵では、源次郎の骸骨に飛びかかって行った二郎が、とうとうそれを滅茶苦茶に叩きつぶしてしまった。同時に骸骨の着
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地底の滝


 穴蔵では、源次郎の骸骨に飛びかかって行った二郎が、とうとうそれを滅茶苦茶に叩きつぶしてしまった。同時に骸骨の着物に燃え移っていた焔も消えて、地下室は再び文目(あやめ)もわかぬ暗闇になった。
 それから、室内の毒煙も薄らぎ、一同半狂乱の気が静まるまでには、たっぷり三十分程もかかった。
 その間、玉村父子四人は、闇の中に、生きているか死んでいるか分らぬ状態で、倒れていた。
 だが、やがて、正気に帰った善太郎氏が、闇の中から声をかけた。
「オイ、一郎も二郎も妙子も、しっかりするのだ。わしらは、どうしてでも、この穴蔵を抜け出さなければならぬ。今も考えて見たのだが、それには、たった一つの方法がある。骸骨のとじこめられていた、洞穴の土を掘って、地面へ抜け出すのだ。大して深い筈はないのだから、皆が力を合わせたら、出られぬということはない」
「アア、僕も今それを考えていた所です。焼け残った椅子の脚で、土を掘ればいい」
 一郎が応じた。二郎とても異存はない。
 そこで大切な二本目のマッチがともされ、妙子を除く三人の男が、てんでに椅子の脚を持って洞穴に集った。
 それから半時間程の間、闇の中に穴掘りが続けられた。寒中にも拘らず、一同汗びっしょりになって、滅多無性(めったむしょう)に働いた甲斐あって、思ったよりも仕事がはかどった。
「もう一息だ。何だか天井が柔くなって来たのを見ると、もうすぐ地面だぞ」
 一同一層元気を出して働く内に、ふと気がつくと、天井からポトリポトリ何かの(しずく)が落ち始めた。
 変だなと思う間もなく、雫は雨となって降り注ぎ、一同アッと云って飛びのいた時には、泥まじりの滝津瀬と変じて、(おびただ)しい水が、ドッとばかり、穴蔵へと落ち込んで来た。
 三人は、元の地下室の、洞穴から一番遠い片隅に避難して、もうやむかと耳をすましていると、やむどころか、滝の音は益々高くなるばかりだ。
 室一杯に、轟々(ごうごう)と波うつ水は、やがて、足を浸し、瞬く内に膝頭(ひざがしら)へと昇って来る、その早さ。
「二郎、マッチ、マッチ」
 父の声に、二郎は最後のマッチを点じて、室内を眺めた。
 洞穴の滝は同じ勢で落ちている。(へや)全体が波立つプールだ。
「オヤ、妙子はどうしたのだ」
 気がつくと、妹の姿が見えぬ。水に(おぼ)れたのかと、マッチを振って、あちこち見廻す内に、悲しや軸木(じくぎ)が燃え尽した。しかも、水は刻々に膝を没し、已に腰に及ばんとしている。妙子を探している(いとま)はない。
 この調子で、滝が止まらなかったら、間もなく、水面は腹から胸、胸から(くび)と這い上って、遂には全身を隠してしまうだろう。どこにはけ口もない密室だ。溺死の運命は免れぬ。
 それにしても、この夥しい水は、一体どこから落ちて来るのだろう。
「アア、分った。わしらは賊の(はかりごと)にかかったのだ。あの洞穴の上に大きな池を作って、穴を掘れば、必ずその底へ掘り当てる様に仕掛けてあったのだ」
 玉村父子は、みじめなどぶ鼠の様に、罠にかかったのだ。水罠にかかったのだ。
「畜生ッ、どこまで執念深い悪党だろう。僕達はあせればあせる程、(かえ)って最後を早める様なものだ」
 だが、いくら憤慨(ふんがい)して見たところで、水が引く訳ではなかった。
 水面は已に腰に達した。しかも、滝津瀬は轟々と落ち続け、いつやむべしとも思われぬのだ。

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