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魔术师-魔術師の激怒(2)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示:「さあ白状しろ。親の命がけの仕事を妨(さまた)げようとする不孝者め。それ程あいつがいとしいか。うぬ、白状しろ」ビシリビシリ
(单词翻译:双击或拖选)

「さあ白状しろ。親の命がけの仕事を(さまた)げようとする不孝者め。それ程あいつがいとしいか。うぬ、白状しろ」
ビシリビシリ、細引の鞭は、文代のふっくらとした太腿(ふともも)へ、刃物の様に食い入るのだ。
「いくら親でも、いくら親でも、悪事の味方は出来ません」
文代は、痛さをこらえ、父を睨みつけて、ハッキリと云ってのけた。
「うぬ、うぬ、よくも云ったな。どうするか見ろ」
源造の怒りは極点に達した。
彼は手ぬるい鞭を投げ捨てて、足を上げると、固い靴のかかとで、いやと云う程、文代の脾腹(ひばら)を蹴りつけた。
文代は、「ウーン」とうめいたまま、動かなくなってしまった。
酔っぱらっていた源造は、手加減が出来なかったのだ。娘が気絶したのを見ると、流石に驚いたが、それを介抱する様な彼ではない。
「ざまを見ろ。……サア、今度は娘を上陸させた野郎の番だ。オーイ、誰かいないか。三次を呼んで来い。三次の野郎をここへ引張って来い」
首領の怒号に、部下のものが駈けつけたが、文代の倒れているのを見ると、顔色を変えて立ちすくんでしまった。彼等は源造の癇癪がどんなに恐しいものであるかを、よく知っていたのだ。
「三次はどこにいる。あいつをここへ引っぱって来い」
彼等は首領の命令に、アタフタと部屋を出て行ったが、暫くすると、妙な顔をして戻って来た。
「かしら、三次はどこへ行ってしまったのか、姿が見えません。機関室にも、荷庫(にぐら)にも、どこにもいません」
「ナニ、いない。そんなことがあるものか。ボートはあるのか」
「エエ、ボートは(とも)にもやってあります」
「まさかあいつが身投げをした訳ではあるまい。よし、貴様達がかばい立てするなら、俺が探しに行く。若しもあいつがいたなら、承知しないぞ」
源造は、娘が気絶したことで、一層腹を立てていた。その入れ合わせに、三次も同じ目に合わせてやらねば、承知出来ぬと思った。
彼はよろめく足を踏みしめて、船の中をあちこちと歩き廻った。部下の者共も、それを傍観している訳にも行かず、懐中電燈を振り照らしながら、彼のあとについて来た。
なる程三次はどこを探してもいなかった。
畜生奴(ちくしょうめ)、悪いと知って、どこかへ隠れてしまったのだな。だが、いつまで隠れていられるものか。朝になったら、うぬ、どうするか」
源造は拳を振り振り、元の船室へ帰って来たが、一歩そこへ足を入れたかと思うと、「アッ」と叫んで立ちすくんだ。
三次がいたのだ。あれ程探しても見えなかったのも道理、彼は源造が出て行ったあとへ、入れ違いに忍び込んで、気絶した文代を介抱していたのだ。見れば文代は正気に返って、三次となにかボソボソ話し合っているではないか。
源造はど(ぎも)を抜かれて暫くは言葉も出なかったが、それ丈けに怒りは二倍三倍になって爆発した。
「三次ッ、あれ程云いつけて置いたことを忘れたのか。なぜ俺に無断で文代を上陸させたのだ」
叫びざま、飛びかかって行って、三次の横面をはり倒した。と、思ったのだ。だが、源造の鉄拳よりも、三次の方が素早かった。彼はヒョイと身をかわして、(くう)をうたせ、知らん顔をして突立っている。
(よご)れた()()(ふく)、まぶかく冠ったもみくちゃの鳥打帽(とりうちぼう)、そのひさしの下から、機械の油で真黒になった顔がのぞいている。
源造は面喰(めんくら)った。日頃お人好しで薄のろの三次が、首領に敵対する気構えを見せたからだ。
「貴様、俺に手向う気か」
怒鳴りつけても、相手はどこを風が吹くかと、平気な顔で黙りこくっている。
変だ。何かしらあり得ないことが起ったのだ。こいつは決して日頃の三次ではないのだ。
光といっては、薄暗い石油ランプ、しかも相手の顔はその影にあるので、ハッキリは見えぬ。源造は、いきなり三次の鳥打帽を引ったくって、彼の顔をむき出しにした。
「アッ、キ、貴様、一体誰だッ」
源造の口から、思わず頓狂(とんきょう)叫声(さけびごえ)がほとばしる。その男は三次ではなかった。服装は三次のものだが、中味が違っていたのだ。
「ハハハハハハハ、お見忘れですか」
男はニヤニヤ笑っている。
「誰だッ、名前を云え」
源造は、酒の酔いもさめはて、真青(まっさお)になってヨロヨロとよろめいた。
「よくごらんなさい。僕ですよ」
見ていると、黒く汚れた下から、本当の顔が、段々浮上って来る。アア、このモジャモジャの髪の毛、この広い額、この鋭い眼光、外にはない。彼奴(きゃつ)だ、彼奴だ。
「明智小五郎……」
源造はうめく様に呟いた。
「とうとう、僕の念願が届きましたね」明智はやっぱり笑いながら、「今度こそはもうのがしませんよ」
彼は云いながら、素早く身をひるがえして、入口のドアを締め、その前に立ちはだかった。部下の者に邪魔されぬ用意だ。彼等はまだ三次を探して船内をうろついているのであろう。一人も姿を見せなかった。
正義の巨人と、邪悪の怪人とは、ここに三たび相会(あいかい)した。四つの目が、焔をはいて睨み合った。室内に、名状し難き殺気がみなぎり渡った。

 

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