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魔术师-八対一(2)

时间: 2023-09-20    进入日语论坛
核心提示: と、出会い頭(がしら)に、一人の部下にぶつかった。「オイ、三次じゃねえか。どこにいたんだ。みんなで大探しをしているんだぜ
(单词翻译:双击或拖选)

 と、出会い(がしら)に、一人の部下にぶつかった。
「オイ、三次じゃねえか。どこにいたんだ。みんなで大探しをしているんだぜ」
淡い檣燈(しょうとう)の光で、おぼろな姿を認めて、相手が叫んだ。
「ウン、俺はここにいるんだ。お前みんなを呼び集めて来な。三次が見つかったって」
声も違う、云うことも変だ。併し相手は何も気づかず、いきなり大声で怒鳴った。
「オーイ、みんなア、三次がいたぞオ。ここにいたぞオ」
やがて、ゾロゾロ集って来た七人の前科者。みんな酔っぱらっている(うち)に、比較的正気な奴が、ふと明智の姿に疑いを起してツカツカと近づいて来た。
「三次だって、オイ、こんな三次があるもんか。こいつ一体どこのどいつだ」
「成程、三次じゃねえ。ヤイ、貴様は誰だッ」
人違いと分ると口々にどなり(はじ)めた。
「僕は明智小五郎っていうのだ」
明智がおだやかな声で答えた。
「ワア」というどよめき。七人のものは、油断なく身構えた。
「みんな、手向いすると、うちますよ」
明智のうしろから、文代がピストルを構えて、姿を現わした。
「や、文ちゃんじゃねえか。これは一体どうしたというのだ」
酔のさめ切らぬ一人が、頓狂な声を立てた。
「どうもしない。君達を一人残らず縛り上げて、牢屋へぶち込もうという訳さ」
明智がほがらかに云い放った。
七人の者は、酒宴の最中だったので、武器を身につけていない。それはみんな船尾の彼等の部屋に置いてあるのだ。
武器の方へ、武器の方へ、一同云い合わさねど、心は一つだ。ジリジリとその方へあとじさりを初めた。
明智と文代は、それを追って一歩一歩進んで行く。
七人の一番うしろの奴が、とうとう船尾の部屋のドアを探り当てた。彼はそれを開いて中に飛込む、続いて一人、又一人、残らず部屋へ這入ってしまった。
明智はそこまでは、相手の()すに任せていたが、最後の一人が中からドアを締めようとした時、飛鳥(ひちょう)の素早さで、片足を部屋の中に入れ、全身の力でドアを押しのけて、文代と共に、中へ入り込んでしまった。
だが、明智ともあろうものが、何という向う見ずな振舞(ふるまい)をするのだ。それでは敵の思う(つぼ)ではないか。見よ、彼等は已に七人が七人とも、てんでにピストルを握って、今這入って来た明智達に狙いを定めているではないか。
「僕はうまうま君達の計略にかかった様だね。ピストルが七挺と。さて、どこを狙ったもんだろうね。額か胸か、それともこうして笑っている口の中へぶち込むかね」
明智は云いながら、額を、胸を、口を、指さして見せた。
七人の者は、相手の余りの大胆さに気を呑まれて、やや暫く立ちすくんでいたが、
「ぶっ放せッ」
一人が叫んで、引金を引くと、一同気を取り直して、カチン、カチンと発砲した。
「オヤ、妙だね。カチンカチンと云ったばかりで、(たま)が飛出さぬ様だね。ハハハハハ、もう一度やってごらん」
「うぬ」
「畜生ッ」
てんでに叫んで、又カチンカチンとやって見たが、やっぱり駄目だ。
「君達は、僕がこの船に来てから、今まで何もしないでいる程ボンクラだと思うのかね。そいつはちっと不服だぜ。僕はすっかり戦闘準備をととのえて置いたのだ。それでなくて、一人ぽっちで、船一(そう)乗取ろうなんて、出来ない相談だからね」
アア何という恐ろしい探偵だ。彼は単身賊の汽船をとりこにしようとしているのだ。
「見給え。ここに細引が積んである。これが今に君達の身体へまきつこうという訳なのだ。この部屋へ逃込むことを見通して、ここに捕繩(ほじょう)まで用意して置いたのだぜ」
賊共は、余りのことに開いた口がふさがらぬ。悪人であればある程、段違いの相手に出会うと、却って意気地なくへこたれてしまうものだ。七人の(やつ)は、蛇に見こまれた(かわず)の様に、ひっそりと静まり返ってしまった。
管々(くだくだ)しく書くまでもない。文代のピストルにおどかされながら、彼等は瞬く内に、一人一人、身動きもならぬ様に縛り上げられてしまった。
明智は捕虜どもをその部屋に締め込んで置いて、再び元の首領の部屋へ取って返した。
来て見ると、源造をとじこめて置いた部屋では、恐ろしい騒ぎが始まっていた。ドアが風をはらんだ帆の様にふくらんで、メリメリメリメリと物凄い音を立てている。激怒した猛獣が、怒号しながら檻を破ろうとしているのだ。
「アラ、どうしましょう」
父ながら、余りの恐ろしさに、文代は明智の腕にすがりついて、悲鳴を上げた。
「構いません、疲れるまで、やらせて置きましょう。決して心配することはありません」
だが、果して心配しなくてもよいのだろうか。見よ、ドアの鏡板は已に破れたではないか。メリメリ、メリメリ、それに勢を得た猛獣は荒れに荒れて、とうとう扉に出入り出来る程の大穴をあけてしまった。
アッと思う間に、その穴から、源造の身体が、鉄砲玉の様に飛び出して来た。明智が文代の手からピストルを取って身構える間もあらばこそ、悪魔は巨大な蝙蝠(こうもり)の様に、風を切って甲板へと飛び出した。
叶わぬと見て、海へ飛込むつもりだ。アア、ここで逃がしたら折角の苦心が水の泡だ。魔術師とまで呼ばれた怪賊、どの様な恐ろしい再挙を目論(もくろ)まぬとも限らぬ。それを明智は、どうして平気でいるのだろう。賊を追駈けようともせず、あとからノソノソ歩いて行く。

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