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奇面城的秘密-怪盗四十面相

时间: 2021-12-28    进入日语论坛
核心提示:奇面城の秘密江戸川乱歩怪人四十面相 ある日、麹町(こうじまち)高級アパートの明智(あけち)探偵事務所へ、ひとりのりっぱな紳士
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奇面城の秘密

江戸川乱歩

 

怪人四十面相


 ある日、麹町(こうじまち)高級アパートの明智(あけち)探偵事務所へ、ひとりのりっぱな紳士がたずねてきました。それは東京の(みなと)区にすんでいる神山正夫(かみやままさお)という実業家で、たくさんの会社の重役をしている人でした。その神山さんが、明智探偵としたしい友だちの実業家の紹介状をもって、たずねてきたのです。
 明智は、神山さんを応接室にとおして、どういうご用かと聞きますと、神山さんは、心配そうな顔で、
「じつは、明智さん。わたしは怪人四十面相に、脅迫されているのです。」
と、恐ろしいことをいうのでした。
「エッ、怪人四十面相? そいつのもとの名は怪人二十面相ですね。しかし、そいつは、三(つき)ばかりまえに、『宇宙怪人』の事件で、わたしがとらえて、いまは、刑務所にはいっているはずですが……。」
 明智探偵は、いぶかしそうにいいました。
「ところが、やつは、とっくに牢やぶりをしていたのです。」
「それはおかしい。あいつが牢やぶりをすれば、すぐにわたしの耳にはいるはずです。また、新聞にものるはずです。わたしは、まったく、そういうことを聞いておりません。」
「いや、それが、いまさっき、わかったのです。わたしは、この事件を警察にしらせました。警察でも、あなたとおなじようにふしぎに思って、刑務所をしらべたのです。すると、どうでしょう。四十面相はいつのまにか、まったくべつの人間といれかわっていたのです。
 四十面相によくにた男が、身がわりになって刑務所の独房(どくぼう)にはいっていたのです。よくにているので、刑務所の係員も、いままで気づかないでいたというのです。いつ、どうして、このかえだまと、いれかわったかは、いくらしらべても、わからないのです。四十面相のかえだまになったやつは、ばかみたいな男で、なにをたずねても、エヘラ、エヘラ、笑っているばかりで、どうすることも、できないのだそうです。」
 それを聞くと明智探偵の顔が、ぐっと、ひきしまりました。いっこくも、すてておけない大事件です。
「ちょっと、お待ちください。」
 明智はそういって、いすから立つと、部屋のすみのデスクの上の電話器をとりました。そして、しばらく話していましたが、もとのいすにもどって、
「いま、警視庁の中村警部にたずねてみましたが、おっしゃるとおりです。四十面相はずっとまえから、刑務所をぬけ出していたらしいのです。……ところで、その四十面相が、あなたを脅迫したというのは?」
「まず、さいしょは、十日ばかりまえに、とつぜん、へんな声の電話がかかってきたのです。きみのわるい、しわがれ声でした。
 その声が、近いうちに、レンブラントのS夫人像をちょうだいにいくから、用心するがいいと、恐ろしいことをいって、ぷっつり電話をきってしまいました。
 レンブラントのS夫人像というのは、昨年わたしがフランスで手に入れてきたもので、数千万円のねうちの油絵です。これは、わたしが持ちかえったときに新聞にものりましたから、ごぞんじのことと思います。」
「知っています。あれは、日本人のもっている洋画のうちで、最高のものでしょう。その油絵は、どこにおいてあるのですか。」
「わたしのうちの洋館の二階の美術室にかけてあります。その部屋には、いろいろな西洋画がならべてあるのですが、みなレンブラントの足もとにもおよばないものばかりです。四十面相がレンブラントだけをねらったのは、さすがに目がたかいというものです。」
 神山さんは、そういって、にが笑いをするのでした。
「で、まだ、ぬすまれたわけでは、ないのですね?」
「まだです。しかし、ここ四、五日があぶないと思います。じつは、きのうの朝、寝室で目をさましますと、ベッドのそばの机に、こんな手紙がのせてありました。うちのものをしらべても、だれも知らないといいます。どこから、どうしてはいってきたか、まったくわからないのです。」
 神山さんは、ポケットから西洋ぶうとうをとりだし、なかの手紙を明智にわたしました。それには、こんな恐ろしい文句が書いてあったのです。

奇面城的秘密图片1

「この手紙で、はじめて、あいてが四十面相とわかったのです。ひょっとしたら、だれかのいたずらじゃないかと思いましたが、ねんのために警察にとどけると、警察では刑務所をしらべ、さっきもお話したように、四十面相が脱獄(だつごく)していることがわかったのです。
 警察では、けさから、十人の警官を、わたしのうちへよこして、警戒にあたらせてくれました。夜昼こうたいで、いつも十人の見はりがついているのです。それに、わたしのうちには大学にかよっているむすこもいますし、書生(しょせい)もふたりいるほかに、わたしが社長をしている会社の若い社員に、三人ほどとまりにきてもらっているので、美術室のまわりはむろん、やしきのまわりにも、ぐるっと、見はりがついているわけです。
 警察では、いくら四十面相でも、これだけ警戒すれば、だいじょうぶだろうというのですが、なにしろ四十面相というやつは、魔法つかいですからね。わたしは、どうも安心ができないのです。
 そこで、これまで、たびたび四十面相を手がけていらっしゃる明智さんに、ご相談するほかはないと考えたわけです。ひとつ、お力をおかしねがえないでしょうか。」
 明智探偵はそれを聞くと、ふかくうなずきながら、
「しょうちしました。できるだけやってみましょう。いまの電話で、中村警部も、わたしに手をかしてくれとたのんでいました。
 それに四十面相は、二十面相と名のっていたころから、わたしにとっては、きってもきれない関係のあるやつですからね。こいつがあらわれたと聞いては、わたしも、うしろを見せるわけにはいきませんよ。」
と、にっこり笑ってみせるのでした。神山さんは、たのもしげに明智の顔を見て、
「それをうかがって、わたしも安心しました。わたしのためばかりではありません。四十面相をのばなしにしておいたなら、どんな恐ろしいことをはじめるかしれませんからね。世間のためですよ。どうか、お力をおかしください。」
「よくわかりました。では、これからごいっしょに行って、おたくを拝見することにしましょう。ことに美術室は、よく見ておかなければなりません。それには、わたしひとりでなく、少年助手の小林(こばやし)をつれて行きたいのですが、かまいませんでしょうね。小林は、よくあたまのはたらく、すばしっこい少年で、たいへん手だすけになるのです。」
「かまいませんとも。小林少年のことは、わたしもよく知っていますよ。わたしのすえの男の子どもが、小学校六年生ですが、これが小林君の大ファンなのですよ。小林君がきてくださったら、大よろこびでしょう。」
「ハハハハ……、小林は、少年諸君に、すっかり有名になってしまいましたからね。小林が町を歩いていると、小学生の男の子や女の子が集まってきて、サインをもとめるのですよ。そんなとき、小林ははずかしがって、顔をまっ赤にしていますがね。」
「そうでしょう。うちの子どもなんかも、小林少年に夢中ですからね。」
 そこで明智がベルをおしますと、じきにドアがひらいて、りんごのようなほおをした小林少年の顔がのぞきました。
「小林君、四十面相が脱獄したんだ。そして、この神山さんのおうちにあるレンブラントの油絵を、ぬすみだすという予告をしたんだ。いつものやりくちだよ。で、いまから神山さんのおたくへいくのだが、きみもいっしょにきてくれないか。」
「ええ、つれてってください。でも、四十面相のやつ、どうして脱獄したのですか。」
「それは、車の中でゆっくり話す。かえだまをつかったんだよ。」
「あ、それじゃあ、いつかの手ですね。」
「うん、あいつのとくいのやりくちだ。……どうだ、小林君、むしゃぶるいが出ないかね。こんどは、きみに大役(たいやく)をつとめてもらうつもりだよ。」
「ええ、ぼく、なんでもやります。あいつには、ずいぶん、ひどいめにあっているのですからね。かたきうちです。」
 そして、三人は階段をおり、アパートの入口にまたせてあった神山さんの自動車に乗って、港区の神山邸へといそぐのでした。

 

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