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奇面城的秘密-最后的王牌

时间: 2021-12-29    进入日语论坛
核心提示:最後の切りふだ あの深い谷にわたされた二本の杉の木の上を、よつんばいになって、警官たちがつぎつぎとこちらへわたってきます
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最後の切りふだ


 あの深い谷にわたされた二本の杉の木の上を、よつんばいになって、警官たちがつぎつぎとこちらへわたってきます。さきにたつ十人ほどは、もう谷のこちらがわに立って、ピストルをかまえながらしずかに近づいてくるのです。
「ちくしょう。よくも、おれをだましたな。だが、ほんとうの、おれの部下はどこにいるんだ。おれの味方は、どこにいるんだッ。」
「ハハハハ……。ぼくたち、にせものは七人。ほんものは、たったふたりしかのこっていないのだ。とても、かないっこないと、そこのすみで、ぶるぶるふるえているよ。」
 明智が指さしたすみっこに、四十面相のコックと、もうひとりの若い男が、青い顔をして、しょんぼりと立っていました。
「よしッ、いよいよ、おれの最後がきたようだな。おれは、血を見るのがきらいだが、こうなったらしかたがない。かくごしろッ。みな殺しだぞッ。」
 四十面相は、いきなり右と左のズボンのポケットから、一ちょうずつピストルをとりだし、両手でそれをかまえました。
「さあ、ぶっぱなすぞッ……。」
 カチッ、カチッと、両方のピストルのひきがねをひきました。どうしたわけか、たまが飛びだしません。また、カチッ、カチッ……カチッ、カチッ……。だめです。カチッ、カチッというばかりです。
「ハハハハ……。その二ちょうのピストルには、たまは一ぱつもはいっていないよ。ぼくが、ピストルのたまをぬくのをわすれているほど、うかつだと思うのかね。きみは、いつものぼくのやりくちをよく知っているはずじゃないか。ハハハハ……。」
 それを聞くと、四十面相の顔が、むらさきいろになりました。
「ちくしょう。いよいよ、おれの力を見せるときがきたなッ。さあ、つかまえるならつかまえてみろッ。」
 かれは、そう叫ぶと、二ちょうのピストルを、なげつけておいて、パッと走りだしました。おそろしいはやさです。
 ジャッキーも五郎も、そのほかのにせの部下たちも、それから谷をわたってきた制服の警官たちも、四十面相のあとを追ってかけだしました。
 四十面相は、まずじぶんの部屋にとびこむと、あの美しい女の人の手をひいて、べつのドアからかけだし、奥へ奥へと走っていきます。女の人は白いスカートのすそをみだして、いまにもたおれそうに見えます。
 廊下が枝みちになって、岩の階段が下へおりています。四十面相と女の人は、そこをかけおりました。岩のトンネルのようなところをとおって、八畳ぐらいの洞窟にでました。
 明智探偵たちは、四十面相につづいて、その洞窟にはいりましたが、ここには電灯がついていないので、まっ暗です。みんなが懐中電灯をつけようかと思っていますと、洞窟の中が、パッと明るくなりました。
 空中にたいまつがもえているのです。赤いほのおが、めらめらとのぼって、洞窟の天井をなめています。それは、四十面相が、一本のたいまつに火をつけて、高くささげているのでした。白衣の女の人は、四十面相の左手にかかえられて、やっと立っているように見えます。
「明智先生、それから警視庁の先生たち、みんなそこへやってきたね。ワハハハハ……。いいか、よく見ろ。ここにたるが三つならんでいる。ほら、大きなたるが三つだ。この中に、なにがはいっていると思う。……火薬だよ。このたいまつをなげこめば、いちどに爆発するんだ。
 この部屋は、おれの美術室のま下なんだ。あそこにかざってある何億円の美術品が、こっぱみじんになるのだ。いや、そればかりではない。この岩の天井が落ちて、きみたちは、ひとりのこらず死んでしまうのだ。ワハハハハ……。ゆかい、ゆかい。どうだ、おれの最後の切りふだがわかったかッ。」
 四十面相は、きちがいのように笑いながら、手に持ったたいまつを、火薬のたるの上で、むちゃくちゃにふりまわしているのです。
 火の粉がたるの中へ落ちたら、たちまち爆発がおこるでしょう。そして洞窟そのものが、こっぱみじんになり、人間はみんな死んでしまうのです。
 そのときです。
 闇のなかから、四十面相とはちがう、みょうな笑い声がひびいてきました。
「ワハハハハハハ……。ワハハハハ……。」
 それを聞くと、四十面相は、ギョッとしたように、キョロキョロと、あたりを見まわしました。
「やい、そこで笑っているのは、だれだッ? なにがおかしいのだッ。」
「ぼくだよ、明智だよ。きみのいきごみがあんまりおおげさなので、ついおかしくなったのさ。おい、ポケット君、もういいから、出てきたまえ。」
 明智が呼びますと、三つならんだたるのうしろから、まっ黒な小人がチョコチョコとかけだしてきました。
 明智は、その小さい黒んぼを、だくようにして、
「おお、ポケット小僧君。きみはあの三つのたるに、どういうことをしたか、いってごらん。」
「先生、もう明智先生といってもいいのですね。ぼくは先生の命令で、ばけつに水をいっぱいいれてなんどもここへはこびました。そしてその水を、いっぱいになるまで、三つのたるにいれました。」
 ポケット小僧のことばに、四十面相はハッとして、ふたのとってある三つのたるに、つぎつぎに手をいれてみました。どのたるも、火薬の上まで、水がいっぱいです。
「ワハハハ……。どうだね、火薬がこう水びたしになってしまっては、いくらたいまつをなげこんでも、パチッともいいやしないぜ、気のどくだが、きみの運のつきだよ。最後の切りふだがだめになってしまったのだから、あとは手錠をはめられるばかりだね。」
 明智のことばが、おわるかおわらぬうちに、もえさかるたいまつが、パッと飛んできました。明智がとっさに(たい)をかわしたので、たいまつはうしろの岩かべにあたって、火ばなをちらしました。
 たいまつのつぎにとびついてきたのは、人間のからだでした。四十面相が、うらみかさなる明智探偵に組ついてきたのです。
 ふいをつかれて明智はたおれ、四十面相は、その上にうまのりになりました。
 しかし、四十面相の味方は、かよわい女の人ひとり。明智のほうには、たくさんの警官がついています。四十面相は、一度はうまのりになったものの、すぐおしたおされて、手錠をはめられてしまいました。
 手錠をはめたのは、警官たちのうしろからでてきた中村警部でした。そして、そのそばには、学生服の小林少年が、にこにこしながらつきそっていました。
「おお、中村君、小林もよくきてくれた。とうとう、四十面相をとらえることができたよ。」
 明智探偵は、中村警部と小林少年に両手をのばして、あくしゅしました。
「小林さん、ぼくここにいるよ。」
 黒いシャツ、黒い手ぶくろ、黒いくつした、すっぽりかぶる黒い覆面、全身まっ黒な小人が、つかつかと小林少年の前に進んで、その手をにぎりました。
「おお、ポケット小僧、きみはえらいねえ。この奇面城を発見したのも、火薬に水をかけて、四十面相をこうさんさせたのも、みんなきみのてがらだからねえ。」
 小林少年はポケット小僧の手をにぎりかえして、さもなつかしそうにいうのでした。
「おれ、うれしくってたまらないよ。明智先生が四十面相に勝ったんだ。そして、四十面相がつかまってしまったんだ。」
 ポケット小僧は、そこまでいうと、感きわまったように両手をあげました。
「明智先生、ばんざあい。小林団長、ばんざあい……。」
 すると、小林少年も、目に涙をうかべながら、これにこたえて叫ぶのでした。
「少年探偵団、チンピラ隊、ばんざあい!」


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