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明るき世界へ(1)

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:明るき世界へ小川未明一 小(ちい)さな芽(め) 小(ちい)さな木(き)の芽(め)が土(つち)を破(やぶ)って、やっと二、三寸(ずん)ばか
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明るき世界へ

小川未明

 

一 (ちい)さな()


 (ちい)さな()()(つち)(やぶ)って、やっと二、三(ずん)ばかりの(たけ)()びました。()()は、はじめて(ひろ)野原(のはら)見渡(みわた)しました。大空(おおぞら)()(くも)(かげ)をながめました。そして、小鳥(ことり)()(ごえ)()いたのであります。(ああ、これが()(なか)というものであるか。)と(かんが)えました。
 どれほど、この()(なか)()ることを(ねが)ったであろう。あの(かた)(つち)(した)にくぐっている時分(じぶん)には、(おな)じような種子(たね)はいくつもあった。そして、(くら)(つち)(なか)で、みんなはいろいろのことを(かた)()ったものだ。
(はや)く、(あか)るい()(なか)()たいのだが、みんながいっしょに()られるだろうか。」と、一つの種子(たね)がいうと、
「それはむずかしいことだ。だれが()るかしれないけれど、あとは(くさ)ってしまうだろう。しかし()たものは、()んだ仲間(なかま)(ぶん)()きのびてしげって、(いく)(ねん)も、(いく)(ねん)雄々(おお)しく太陽(たいよう)(かがや)(した)(はな)やかに()らしてもらいたい。もし、二つなり、三つなりが、いっしょに(あか)るい世界(せかい)()ることがあったら、たがいに()()って(ちから)となって()らしそうじゃないか。」と、()種子(たね)(こた)えました。
 みんなは、その種子(たね)のいったことに賛成(さんせい)しました。しかしみんなが(あか)るい世界(せかい)(した)ったけれど、そのかいがなく、(つち)(うえ)()ることを()たものは、ただ一つだけでありました。
 こうして、一(ぽん)()()は、この世界(せかい)()たが、()るもの、()くものに(こころ)(おびや)かされたのであります。みんなの希望(きぼう)まで、自分(じぶん)生命(せいめい)(なか)宿(やど)して、大空(おおぞら)(たか)(えだ)(ひろ)げて、幾万(いくまん)となく(むら)がった()の一つ一つに日光(にっこう)()びなければならないと(おも)いましたが、それはまだ(とお)いことでありました
 最初(さいしょ)、この()()()えたのを()つけたものは、(そら)(わた)(くも)でありました。けれど、ものぐさな無口(むくち)(くも)は、()ぬふりをして、その(あたま)(うえ)悠々(ゆうゆう)()ぎてゆきました。
 ()()は、(とり)をいちばんおそれていたのです。それは、代々(だいだい)からの神経(しんけい)(つた)わっている本能的(ほんのうてき)のおそれのようにも(おも)われました。あのいい音色(ねいろ)(うた)(とり)は、姿(すがた)もまた(うつく)しいには相違(そうい)ないけれど、みずみずしい()()()つけると、きっと、それをくちばしでつついて、()()ってしまうからです。そのくせ、(とり)()(おお)きくなってしげったあかつきには、かってにその(えだ)()(つく)ったり、また(よる)になると宿(やど)ることなどがありました。そんなことを予覚(よかく)しているような()()は、小鳥(ことり)自分(じぶん)姿(すがた)()いだされないように、なるたけ(いし)(かげ)や、(くさ)(かげ)(かく)れるようにしていました。
 (くち)やかましい、そして、そそっかしい(かぜ)が、つぎ()()()つけました。
「おお、ほんとうにいい()()だ。おまえは、(すえ)には大木(たいぼく)となる()ばえなんだ。おまえの()れた年老(としと)った(おや)は、よくこの野原(のはら)(なか)(おれ)たちと相撲(すもう)()ったもんだ。なかなか勇敢(ゆうかん)(たたか)ったもんだ。この世界(せかい)(ひろ)いけれど、ほんとうに(おれ)たちの相手(あいて)となるようなものは(すく)ない。はじめから()んでいるも同然(どうぜん)(まち)建物(たてもの)や、人間(にんげん)などの(つく)った(うち)や、堤防(ていぼう)やいっさいのものは、打衝(ぶつか)っていっても、ほんとうに()んでいるのだから()()いがない。そこへいくと、おまえたちや、(うみ)などは、()きているのだから、(おれ)打衝(ぶつか)ってゆくと(さけ)びもするし、また、(たたか)いもする。(おれ)は、じっとしていることはきらいだ。なんでも()けまわっていたり、(あらそ)ったり()みついたりすることが大好(だいす)きなのだ。」
 ()()は、まだ()(うえ)()まれてから、幾日(いくにち)もたたないので、ものを()てもまぶしくてしかたがないほどでありましたから、こう、(かぜ)におしゃべりをされると、ただ空怖(そらおそ)ろしいような、半分(はんぶん)ばかり意味(いみ)がわかって半分(はんぶん)意味(いみ)がわからないような、どきまぎとした気持(きも)ちでいたのであります。
「しかし、おまえは、大木(たいぼく)になる()ばえだとはいうものの、それまでには、おおかみに()まれたり、きつねに()まれたりしたときには、()れてしまおう。そうすれば、それまでのことだ。だから(からだ)(きた)えなければならない。」と、宇宙(うちゅう)浮浪者(ふろうしゃ)である(かぜ)は、(かた)って()かせました。
 (あわ)れな()()は、(かぜ)のいうことをともかくも感心(かんしん)して()いていましたが、
「それなら、どうしたら、(わたし)(つよ)くなるのですか。」と、()()は、(かぜ)()いました。
 (かぜ)は、いちだんと悲痛(ひつう)調子(ちょうし)になって、
「それには、(おれ)がおまえを(きた)えるよりしかたがない。いまおまえは、まだ(ちい)さくて(おし)えても(うた)えまいが、いんまに(おお)きくなったら(おれ)(おし)えた『曠野(こうや)(うた)』と、『放浪(ほうろう)(うた)』とを(うた)うのだ。」と、(かぜ)は、()()にむかっていいました。

無窮(むきゅう)から、無窮(むきゅう)
ゆくものは、だれだ。
おまえは、その姿(すがた)()たか、
魔物(まもの)か、人間(にんげん)か。
(くろ)着物(きもの)をきて
(やぶ)れた灰色(はいいろ)(はた)がひるがえる。

 (かぜ)は、(うた)って()かせました。そして、(つよ)く、(つよ)()()しました。()()ばかりでなく、野原(のはら)()えていた、すべての(くさ)や、(はやし)が、(おどろ)いて(さわ)()しました。(なか)にも、この(ちい)さな()()は、(やわ)らかな(あたま)をひたひたとさして、いまにもちぎれそうでありました。
 粗野(そや)で、そそっかしい(かぜ)は、いつやむと()えぬまでに()いて、()いて()(つの)りました。()()は、もはや()をまわして、いまにも(たお)れそうになったのであります。
 このとき、太陽(たいよう)は、()るに()かねて、(かぜ)をしかりました。
「なんで、そんなに(ちい)さい()()をいじめるのだ。おまえが(さわ)(くる)いたいと(おも)ったなら、(たか)(やま)(うえ)へでも打衝(ぶつか)るがいい、それでなければ、(よる)になってから、だれもいない(うみ)()(なか)(なみ)相手(あいて)(たたか)うがいい。もうこの(ちい)さな()()をいじめてくれるな。」と、太陽(たいよう)はいいました。
 (かぜ)は、太陽(たいよう)()かって()びつきそうに、(そら)(おど)()がりました。そうして(さけ)びました。
(わたし)は、この(ちい)さな()()をいじめるのではありません。(つよ)く、(つよ)く、(つよ)くならなければ、どうしてこの曠野(こうや)()(なか)でこの()()()()ちましょう。そうするには(わたし)が、()()を、(つよ)くするように(きた)えなければならないのです。」
 太陽(たいよう)は、あきれたような(かお)つきをして、しばらくぼんやりと見下(みお)ろしていましたが、
(わたし)のいうことを(まも)らんと、おまえを三千()も四千()遠方(えんぽう)()いやってしまうぞ。これから、()(おお)きくなるまで、おまえはけっして、あんなに(はげ)しく()いてはならない。」と、太陽(たいよう)(かぜ)(めい)じました。
 (かぜ)は、(こえ)(ひく)く、「放浪(ほうろう)(うた)」をうたいながら、(うみ)(ほう)をさして()ってしまいました。(あと)で、太陽(たいよう)(あわ)れな()()をじっとながめたのであります。
「もう(おどろ)くことはない。おまえを(くる)しめた(かぜ)(とお)くへ()ってしまった。これから(あと)は、(わたし)がおまえを見守(みまも)ってやろう。」と、太陽(たいよう)はいいました。
 ()()は、()まれて()()(なか)予想(よそう)をしなかったほど、複雑(ふくざつ)なのに(あたま)(なや)ましました。そして、空恐(そらおそ)ろしさに(ふる)えていました。
「おまえは(さむ)いのか。なんでそんなに(ふる)えているのだ。」と、太陽(たいよう)は、(あや)しんで()きました。
 ()()は、(かぜ)()かれて、(からだ)がたいへんに(つか)れてきました。そして、のどがこのうえもなく(かわ)いていたので、ただ(あめ)()ってくれることを(のぞ)んでいましたが、しかし、そんなことを(くち)()していいもされずに、不安(ふあん)におそわれて(ふる)えていたのです。
「かわいそうに、おまえは、ものがいえないほど(さむ)いのか。それで、(ふる)えているのだろう。もう安心(あんしん)するがいい。(かぜ)は、あちらへいってしまった。(わたし)が、おまえを(おも)いきって(あたた)めてやるから。」と、太陽(たいよう)はいいました。
 そして、太陽(たいよう)は、(きゅう)(ねつ)(ひかり)をましました。その(ねつ)(くも)(さん)じてしまいました。そして、やっと()(うえ)()びたばかりの()()は、(ちい)さな()がしぼんで(ほそ)(みき)(かわ)いて、ついに()れてしまいました。
 太陽(たいよう)は、そのことには()づかずに、日暮(ひぐ)(がた)まで下界(げかい)()らしていました。


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