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新しい町(1)

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:新しい町小川未明 あるところに、母(はは)と子(こ)と二人(ふたり)が貧(まず)しい暮(く)らしをしていました。少年(しょうねん)の
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新しい町

小川未明

 


 あるところに、(はは)()二人(ふたり)(まず)しい()らしをしていました。少年(しょうねん)()幸三(こうぞう)といいました。(かれ)は、子供(こども)ながらに(はたら)いて、わずかに()(かね)年老(としと)った(はは)(やしな)っているのでありました。
 (かれ)は、(あさ)は、(はや)(つと)めに()かけて、午後(ごご)は、晩方(ばんがた)おそくまで(はたら)いて、(かえ)りには、どんなに(はは)()っていなさるだろうと(おも)って、(いそ)いでくるのをつねとしていました。
 わざわいは、けっして、(いえ)(えら)び、その(ひと)(えら)ぶものではありません。母親(ははおや)は、病気(びょうき)にかかって、いままでのごとく、かいがいしく()かけてゆく()()見送(みおく)り、また、晩方(ばんがた)は、夕飯(ゆうはん)仕度(したく)をして()つということができなくなりました。そして、(はは)は、(とこ)についたのでありました。
 幸三(こうぞう)は、どんなに心配(しんぱい)したでありましょう。(ちい)さいときから、まごころのかぎりをつくして(そだ)ててもらった、なつかしい(はは)(おも)()して(かな)しまずにはいられませんでした。(かれ)は、どうかして、はやく、(はは)病気(びょうき)をなおしたいと(ねが)いました。会社(かいしゃ)にいて(はたら)いている()も、たえず(こころ)は、(いえ)へひかれました。そして、(しゃ)退()けると(はし)るようにして(かえ)り、(はは)のそばにいったのであります。
 少年(しょうねん)(おも)いは、とどかずにはやみませんでした。一()(おも)かった、(はは)病気(びょうき)もおいおいにいいほうへと()かいましたけれど、衰弱(すいじゃく)しきったものはもとのごとく元気(げんき)になるには、手間(てま)がとれたのであります。
 幸三(こうぞう)のもらっている給金(きゅうきん)だけでは、(おも)うように手当(てあ)てもできなかったのです。(かれ)は、それを(かんが)えると、(かな)しくなりました。
自分(じぶん)は、どんなに、つらい(はたら)きをしてもいいから、どうかして、お(かあ)さんをはやくなおしてあげたいものだ。」と(おも)いました。
 ある()の、もはや()(がた)のことであります。(みち)すがら、少年(しょうねん)は、(くら)(おも)いにふけって(ある)いてきました。
 そこは、つねに、(くるま)や、(ひと)(とお)りのはげしいところでした。(そら)は、(くも)っていて、(した)(みず)(うえ)には、()()んだ、(いく)そうかの(ふね)が、(くろ)(かげ)(みだ)していました。そして、雑沓(ざっとう)する(みち)からは、喧騒(けんそう)(さけ)びがあがり、ほこりが()いたっていました。その(あいだ)少年(しょうねん)は、とぼとぼ(ある)いてきたのです。
 (かれ)は、(はし)(うえ)にくるとしばらく、()()まって欄干(らんかん)によって、(みず)(うえ)をぼんやりとながめていました。
(おも)うように、(おや)に、孝養(こうよう)をつくされる(ひと)はしあわせなものだ。」と、(かれ)(おも)ったのでした。そして、()(なか)に、()しあわせな、(まず)しい、自分(じぶん)(はは)姿(すがた)(えが)いて、()(どく)(おも)わずにはいられなかったのです。
 (かれ)は、空想(くうそう)からさめて、ふと(はし)欄干(らんかん)()()としますと、自分(じぶん)から、数歩(すうほ)(へだ)たったと(おも)われるところに、あまり()につかないほどの(ちい)さな(かみ)きれがはってありました。そして、それには、
(かな)しむものは、ガードについて(みなみ)へゆけ。」と()いてありました。
 幸三(こうぞう)は、これを()て、ガードの(ほう)(あお)ぎますと、(あたま)(うえ)には、高架鉄道(こうかてつどう)のレールが(はし)っていて、(なが)(つつみ)がつづいていました。そして、(つつみ)(した)には、穴倉(あなぐら)のようになって、倉庫(そうこ)(なら)んでいました。
 (かれ)は、(せま)路次(ろじ)をはいって、(つつみ)についてゆくと、ところどころにガードがあるのでした。(かれ)はどこへいったら、自分(じぶん)希望(きぼう)()いだされるのかと(かんが)えました。人々(ひとびと)や、馬車(ばしゃ)や、また自動車(じどうしゃ)は、無心(むしん)にガードの(した)(とお)っていましたが、幸三(こうぞう)は、一つのガードの(した)にくると、もう(ふる)くなって()れめのはいったれんがや、(あお)くこけのついたれんがのまじっている(へい)子細(しさい)見上(みあ)げました。すると、そこには、(ちい)さな(かみ)きれがはってあって、
「まじめに(はたら)こうとするものは、(みなみ)へゆけ。」と、()いてありました。
 晩方(ばんがた)(そら)は、(くも)っていました。おりおり、(おも)()したように、高架線(こうかせん)(うえ)汽車(きしゃ)や、電車(でんしゃ)(おと)をたてて(はし)ってゆきました。幸三(こうぞう)は、(つつみ)について(みなみ)へゆきますと、両側(りょうがわ)に、倉庫(そうこ)ばかりの()(なら)んだところへ()ました。
 そのうちの一つの倉庫(そうこ)のとびらに、やはり(ちい)さな(かみ)がはってあって、
「このとびらを()せ。」と、()いてありました。
 幸三(こうぞう)は、探偵小説(たんていしょうせつ)にあるような場面(ばめん)だと(おも)いながら勇気(ゆうき)()して、そのとびらを()しました。すると、(にぶ)(おと)をたてて、そのさびたとびらは(くら)(おく)(ほう)(ひら)きました。
 (くら)内部(ないぶ)には、電燈(でんとう)がともっていました。そして、だんだんと(した)(ほう)(ふか)くなっていて、地下室(ちかしつ)になっていました。(かれ)は、(だん)()りかけました。すると、(した)に、一人(ひとり)労働服(ろうどうふく)()少年(しょうねん)がじっと(かれ)()りてくるのを()つめていました。
「なんで、こんなところへきたんですか?」と、少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)は、たずねました。
 幸三(こうぞう)は、(はたら)いて、自分(じぶん)希望(きぼう)(たっ)したいと(おも)って、(かみ)きれをたよりにたずねてきたことを(はな)しました。
「そうですか。しかし、あなたでは、仕事(しごと)(ほね)がおれてつとまりますまい。たいていの大人(おとな)がやってきてさえ、辛抱(しんぼう)がしきれずにいってしまうのです。仕事(しごと)というのは、ほかでもありません。ここに()(かさ)ねてある鉄板(てっぱん)(おく)(はこ)ぶのです。なかなか(ちから)がいって、(つか)れますが、あなたがなさる()ならやってごらんなさい。」と、少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)は、いいました。
 いかにも、その少年(しょうねん)は、ものいいがはっきりとしていました。そして、(うつく)しい、(きよ)らかな()をしていました。幸三(こうぞう)は、なつかしげに、自分(じぶん)(おな)(とし)ごろの少年(しょうねん)()ながら、
(きみ)にできる仕事(しごと)なんですか?」とききました。(かれ)は、その少年(しょうねん)にできることなら、自分(じぶん)にもできないことはないと(おも)ったからです。
(ぼく)に? できますとも、すこし()れればなんでもありませんよ。」と、少年(しょうねん)は、いきいきとした()つきをして(こた)えました。
「じゃ、(わたし)も、やってみます。」
 幸三(こうぞう)は、そこにあった(おも)(てっぱん)両手(りょうて)をかけました。しかし、それは、容易(ようい)()()げることすらできないほど、(おも)かったのでありました。
社長(しゃちょう)にいって、あなたのことを(はな)しておきますから……。」といって、少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)はあちらへいってしまいました。
 幸三(こうぞう)は、一(まい)鉄板(てっぱん)をあちらに(はこ)ぶのに、どれほど、努力(どりょく)しなければならなかったでしょう……。(つめ)たいコンクリートの(うえ)(ある)いて、あちらまで(はこ)ぶのに、(いく)たび鉄板(てっぱん)(あし)もとに()いて(やす)んだでありましょう。そして、しまいには(つか)れて、つまずき、(あや)うく、その(おも)鉄板(てっぱん)(あし)(くだ)こうとしました。また、その(あいだ)に、(かれ)は、(いく)たび、そこから()()そうかと(おも)ったでありましょう。
 しかし、あの少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)(わら)われるかと(おも)うと、(おのず)から自分(じぶん)意気地(いくじ)なしを()じて勇気(ゆうき)()して(おも)いとどまりました。
 (かれ)は、とうとう最後(さいご)の一(まい)(はこ)()わったときには、がっかりとして、(つめ)たい(ゆか)(うえ)(たお)れてしまいました。
 そのとき、少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)がやってきて、(かれ)(からだ)()()こしながら、
(きみ)は、ほんとうに(えら)い。たいていのものは、我慢(がまん)がしきれずにいってしまうのだが、(きみ)には、ほんとうに感心(かんしん)させられてしまった。少年(しょうねん)ばかりじゃない。大人(おとな)だって、たいてい辛抱(しんぼう)がされずにいってしまうのだよ。さあ、こちらへきたまえ。社長(しゃちょう)さんに紹介(しょうかい)するから……それは、よく(わか)った、しんせつな(ひと)だから、きっと(きみ)のしたことに感心(かんしん)してしまうよ。」といって、(さき)()ってゆきました。
 幸三(こうぞう)は、(つか)れた(からだ)(きゅう)元気(げんき)()ちました。つづいて、あとからゆくと、もう一つとびらが()まっていました。(さき)()った、労働服(ろうどうふく)()少年(しょうねん)は、とびらを()すと、それが()いて、(なか)には、(ひと)のよさそうな老人(ろうじん)が、テーブルに()かって書物(しょもつ)()ていました。
 幸三(こうぞう)は、どんな(ひと)かとおそるおそるはいってきたのでした。きっと社長(しゃちょう)という(ひと)は、いかめしい(かお)つきをしていると(おも)ったからです。それが、こんなに(ひと)のよさそうな年寄(としよ)りであったので、(きゅう)に、いい()れぬ(なつ)かしみを(かん)じました。
「これが社長(しゃちょう)さんだ。いま、お(はなし)した少年(しょうねん)はこの(ひと)です……。」と、(ちい)さな労働者(ろうどうしゃ)は、二人(ふたり)紹介(しょうかい)しました。
 幸三(こうぞう)は、(ひろ)いへやのうちに、あまり人数(にんずう)(すく)なく、社長(しゃちょう)少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)ばかりなのを、なんとなく不思議(ふしぎ)(かん)じたのでありますが、もう時間(じかん)がたっているので、()(ひと)たちは、(いえ)(かえ)ってしまったからであろう……と、(こころ)(おも)ったのでした。
 少年(しょうねん)は、テーブルのそばに()って、幸三(こうぞう)が、(おも)鉄板(てっぱん)をみんな(はこ)んだことを年老(としと)った社長(しゃちょう)()かって(はな)したのであります。そして、(つか)れて、(たお)れたことも()げたのであります。老社長(ろうしゃちょう)柔和(にゅうわ)な、二つの()は、眼鏡(めがね)(うち)からレンズをとおして、じっと幸三(こうぞう)(うえ)(そそ)がれていましたが、少年(しょうねん)言葉(ことば)()くと、さも(ふか)感動(かんどう)したようにうなずきながら、
「どうして、こんなところへきて(はたら)()になったのだ。」といってたずねました。
 幸三(こうぞう)は、(はは)病気(びょうき)をしたことから、十(ぶん)養生(ようじょう)をさせることが、自分(じぶん)(ちから)で、できなかったことを(こた)えました。
 これを()いた、年老(としと)った社長(しゃちょう)はもとより、少年(しょうねん)は、(おお)いに(かん)じたのであります。
「どんなにか、平常(へいぜい)しつけなかった力仕事(ちからしごと)をして、(つか)れたろう。さあ、これを一(ぱい)()みなさい。」といって、社長(しゃちょう)は、コップに、ぶどう(しゅ)()いでくれました。
 それは、(あま)い一(しゅ)(さけ)でしたが、不思議(ふしぎ)気持(きも)ちのよくなるのを(かん)じました。
「またくるがいい。今日(きょう)は、これでお(かえ)り。(あめ)()っているようだから、この子供(こども)に、(いえ)まで(おく)らせよう……。」と、年老(としと)った、社長(しゃちょう)はいいました。
 幸三(こうぞう)は、()(がた)(くも)っていた(そら)が、いつのまにか(あめ)となったのに()づきませんでした。少年(しょうねん)労働者(ろうどうしゃ)二人(ふたり)()れだって、(かれ)は、地下室(ちかしつ)から(そと)()ると、そこに、一(だい)自動車(じどうしゃ)()っていました。
「これは、会社(かいしゃ)自動車(じどうしゃ)なんだ。社長(しゃちょう)がいったのだから、さあ()りたまえ。」と、少年(しょうねん)はいいました。
 幸三(こうぞう)は、かつて、こんな自動車(じどうしゃ)()ったことはありません。しかし、こういわれると辞退(じたい)しきれずに()りました。自分(じぶん)のそばには、(あお)労働服(ろうどうふく)()少年(しょうねん)(こし)をかけました。
 (あめ)は、しきりに()って、(まど)のガラスにかかりました。自動車(じどうしゃ)は、(はし)って、いつしか(あか)るい(まち)(なか)(はし)っていました。青々(あおあお)とした街路樹(がいろじゅ)(かぜ)があたって、そこにも、ここにも、(みどり)(なみ)()っていました。そして、雨脚(あめあし)が、(しろ)(ぎん)(せん)無数(むすう)空間(くうかん)()いていました。
 幸三(こうぞう)は、平常(へいぜい)自分(じぶん)(ある)いている(まち)に、こんな(うつく)しい(まち)があったことを(おも)()すことができませんでした。
(きみ)、ここは、いったいどこなんだろうね。」と、幸三(こうぞう)は、少年(しょうねん)にたずねました。
A町(エーまち)だよ、ちょっとここで()めてもらうんだ。」と、少年(しょうねん)はいって、自動車(じどうしゃ)()めさせて、自分(じぶん)だけ、(くるま)から()りると、片側(かたがわ)にあった、(あか)るい、(うつく)しい、いろいろのかんや、びんを(なら)べた(みせ)へはいりました。
 (あめ)は、しだいに小降(こぶ)りになってきました。少年(しょうねん)は、両手(りょうて)に、四(かく)のかんや、びんを(つつ)んだのを(かか)えて、自動車(じどうしゃ)にもどってきました。
「これは、(きみ)に、(はたら)いてもらったお(れい)なんだ。(かえ)ったら、(きみ)のお(かあ)さんにあげてもらうように、社長(しゃちょう)さんからいいつかったのだよ。」と、少年(しょうねん)はいいました。
 幸三(こうぞう)は、自分(じぶん)(はたら)いたことが、これほどの報酬(ほうしゅう)(あたい)するとは(おも)われなかったので、すまぬ()がして()()ることをためらっていますと、
(きみ)のような(ひと)なら、いつでもきて(はたら)いてもらいたいと社長(しゃちょう)はいっていたから、()()いたら、やってきたまえ。」と、少年(しょうねん)はいいました。
 いつしか、自動車(じどうしゃ)は、幸三(こうぞう)(いえ)(ちか)くにきました。もう、これより(さき)へは、自動車(じどうしゃ)のはいれないところまできましたので、幸三(こうぞう)()ろしてもらいました。
 (かれ)は、(はは)に、いい土産(みやげ)()って(かえ)ったのを(よろこ)びました。
 それは、会社(かいしゃ)で、社長(しゃちょう)()ましてもらったようなぶどう(しゅ)に、滋養(じよう)になりそうな、(にく)のかんづめでありました。
 (はは)(からだ)は、もとのように達者(たっしゃ)になりました。
 幸三(こうぞう)は、その(のち)、一()倉庫(そうこ)少年(しょうねん)をたずねて、いろいろとこれからの()(うえ)のことについて物語(ものがた)ったり、また、(とし)とった社長(しゃちょう)にもお()にかかって、お(れい)(もう)したいと(おも)いましたので、ある()のこと、その(うえ)()って(みず)(おもて)()つめながら(かんが)()んだ、(はし)(わた)り、ガードを(ひだり)()れて、(みなみ)(ほう)をさしてゆきました。(おな)じような倉庫(そうこ)(なら)んでいるので、どれがそれであったかと(まよ)いましたが、たしかに、それと(おも)った倉庫(そうこ)のとびらの(まえ)にたたずみ、やがて()して(ひら)きました。すると、内部(ないぶ)電燈(でんとう)がともって、その(した)に三(にん)(おとこ)が、鉄板(てっぱん)(はこ)んでいました。(おとこ)たちは、幸三(こうぞう)(かお)()ました。(かれ)は、少年(しょうねん)にあいたいと()げました。
「そんな、子供(こども)は、ここにはいない。」と、(おとこ)一人(ひとり)がどなりました。
 幸三(こうぞう)は、倉庫(そうこ)がちがったのでないかと、あたりを()まわしますと、番号(ばんごう)(おな)じければ、すべての記憶(きおく)(おな)じでありましたから、社長(しゃちょう)にお()にかかって、少年(しょうねん)のことをたずねようと(おも)いました。
社長(しゃちょう)さんに、お()にかかりたい。」といいますと、
社長(しゃちょう)が、こんなところにいるものか。」
「おまえは、社長(しゃちょう)()っているのか?」
 (はたら)いている(おとこ)たちは、口々(くちぐち)にいって、不思議(ふしぎ)そうに、幸三(こうぞう)をながめたのです。
()っています。年寄(としよ)りで、眼鏡(めがね)をかけて、ひげの(しろ)(かた)です……。」
「どこで、()たんだい。」
「この(おく)に、テーブルに()かっていられました……。」と、幸三(こうぞう)(こた)えました。
 (おとこ)たちは、(おお)きな(こえ)()して(わら)いました。
(おれ)たちも、まだ社長(しゃちょう)()たことはないが、なんでも(わか)いということだ。それにこの(おく)には(ひと)のいるへやなんかないはずだ。おまえは、どうかしているな。」と、(かれ)らはいって、また(わら)いました。(かれ)は、(おどろ)いて、あたりを()まわしますと、あちらの壁板(かべいた)に、老人(ろうじん)少年労働者(しょうねんろうどうしゃ)()がはってありました。幸三(こうぞう)は、()()つばかりに、その()のところへ(はし)ってゆきました。
「あ、これだ!」
 三(にん)労働者(ろうどうしゃ)は、そばへやってきました。
「これは(えら)(ひと)だぜ。(ただ)しい、(まず)しい(ひと)味方(みかた)なんだ。おまえは、この(ひと)()()っているのかい。」と、(かれ)らは、たずねました。
 幸三(こうぞう)は、(だま)って、うなずいて、(なみだ)ぐみながら、(そと)(ほう)へと()てゆきました。

――一九二五・八作――

 

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