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生きぬく力(1)

时间: 2022-10-14    进入日语论坛
核心提示:生きぬく力小川未明「孝二(こうじ)、おまえでないか。」「僕(ぼく)、そんなところへさわりませんよ。」 玉石(たまいし)の頭(あ
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生きぬく力

小川未明


孝二(こうじ)、おまえでないか。」
(ぼく)、そんなところへさわりませんよ。」
 玉石(たまいし)(あたま)から、すべり()ちた青竹(あおだけ)を、(くち)をゆがめながらもとへ(なお)して、おじいさんは、()目垣(めがき)(まえ)()っていました。いたずら()がきて、()こうとするのだと(おも)ったのです。竹馬(たけうま)にするには、ちょうど()ごろの(たけ)だからでした。しかし、この(へん)子供(こども)には、そんな(わる)()がないと(かんが)えると、植木屋(うえきや)()(かた)()りなかったのかと、しゅろなわの(むす)()をしらべてみたが、そうでもなさそうでした。
 平常(ふだん)から、(わか)いものが戦争(せんそう)にいって()ぬのに、自分(じぶん)は、(なが)()きすぎたと(おも)っているおじいさんは、
「これで、七、八(ねん)()ちましょう。」と、植木屋(うえきや)(つく)りながらいったのを()いたとき、そのころには、孝二(こうじ)は、中学(ちゅうがく)卒業(そつぎょう)するであろうし、自分(じぶん)は、()きているかどうか、わからないと(おも)ったのでした。
孝二(こうじ)()つけたら、しかってくれ。」
 おじいさんは、垣根(かきね)のきわに()わっている、まだつぼみの(かた)いじんちょうげの()についたどろを(あら)ってやりました。(わか)いうちは、なんでもぞんざいに()(あつか)ったのが、(とし)をとると、どれにも自分(じぶん)(おな)じような生命(せいめい)があるように(おも)えて、いたわる(こころ)(しょう)ずるのでした。

 (くろ)いマントを(あたま)からかぶって、がたがたの自転車(じてんしゃ)()った少年(しょうねん)(はし)ってきました。()れたハンドルを、針金(はりがね)やひもで(むす)()わせて、(たく)みにあやつりながら、(あし)には(やぶ)れたくつをはいていました。(いき)をきらしながら(いぬ)がついてきます。(もん)のところで、自転車(じてんしゃ)()りると、前側(まえがわ)(いた)べいへ()せかけて、ポケットから、()(いも)()して、自分(じぶん)()わずに、それを(いぬ)にやりました。(いぬ)は、一口(ひとくち)()べると、少年(しょうねん)(かお)見上(みあ)げて()()っていました。少年(しょうねん)は、マントの(した)(かた)からかけた、新聞(しんぶん)(たば)から、一(まい)()()くと、(もん)()けて()(ぐち)へまわらずに、(たけ)垣根(かきね)(ほう)(ちか)づきました。
 ちょうど、(そら)をこうしの(うち)からながめていた孝二(こうじ)は、いつも新聞(しんぶん)をここへ()れていくのは、この()配達(はいたつ)するのかと(おも)って()ていました。しかし、子供(こども)()は、垣根(かきね)(そと)から()ばしても(まど)(うち)へはとどかなかったのです。少年(しょうねん)は、(まど)(きわ)に、自分(じぶん)ぐらいの子供(こども)()っているのに()づきました。
「はだしになって、()がってもいい。」と、どろのついたくつをぬいで、くつ(した)(あな)から(つめ)たそうに(ゆび)()ている(あし)垣根(かきね)にかけました。
「ああ、いいよ。」と、孝二(こうじ)は、やさしく(こた)えたのです。そして、新聞(しんぶん)()()ろうとして、マントに半分(はんぶん)(かく)れた(かお)をのぞくと、
「ああ、小泉(こいずみ)じゃないか。」と、(おどろ)きました。
「うん。」と、少年(しょうねん)もはじめて()がついたらしく、にやっと(わら)って、うなずきました。
「ああ、(きみ)(いえ)はここか。」ともいわずに、そのままハンドルのよくきかぬ自転車(じてんしゃ)()って、いってしまいました。
 垣根(かきね)のゆるむ原因(げんいん)はわかったが、孝二(こうじ)は、おじいさんに、だまっていました。

 算数(さんすう)時間(じかん)でした。先生(せんせい)は、黒板(こくばん)問題(もんだい)()されて、
「これをまちがわずに、いちばん(はや)(こた)えを()したものに、ほうびをやろう。」と、一(ぽん)青色(あおいろ)鉛筆(えんぴつ)(たか)()げて(しめ)されました。
先生(せんせい)一人(ひとり)だけですか。」
「いや、いちばんおそく()したものにも、名誉(めいよ)のほうびをやろう。」と、先生(せんせい)は、こんどは使用(しよう)されている鉛筆(えんぴつ)(たか)くさし()げられました。
 生徒(せいと)は、がやがやといいはじめた。
名誉(めいよ)鉛筆(えんぴつ)をもらいたくないものだ。」という(こえ)がしました。
 しばらくの(あいだ)教室(きょうしつ)は、しんとして、真剣(しんけん)空気(くうき)がみなぎりました。
「はい、先生(せんせい)できました。」と、ノートを()って、元気(げんき)よく教壇(きょうだん)(すす)()たものがあります。それは、孝二(こうじ)でした。
(はや)いなあ。」
(ぼく)は、まだ二つしかできないぞ。」
 そんな、ささやきが()こえると、答案(とうあん)見入(みい)っていられた先生(せんせい)は、
「よし。」といって、鉛筆(えんぴつ)孝二(こうじ)(あた)えられました。いつも、首席(しゅせき)(あらそ)(あずま)小原(おばら)は、まだ()ませんでした。つづいて()たのは有田(ありた)です。(こた)えは(ただ)しかったけれど、孝二(こうじ)(しょう)(うば)われて、残念(ざんねん)そうに()えました。そのうちに、いずれも()つくしました。
最後(さいご)はだれだ。」と、()まわすと、
小泉(こいずみ)だ。」と、(わら)(ごえ)()こりました。(かれ)は、(くみ)(なか)でも、つねにできなかったからです。みんなの(わら)いに(おく)られて、小泉(こいずみ)は、教壇(きょうだん)へノートを()っていきました。
「なんだ、みんな(ちが)っているではないか。」と、先生(せんせい)が、どなられた。(かれ)は、(みみ)のあたりまで(あか)くしました。
「おまえには、この鉛筆(えんぴつ)だ。」と、先生(せんせい)は、(みじか)くなった鉛筆(えんぴつ)()しかけて、なんと(おも)われたか、
()て……。」といって、教員室(きょういんしつ)()けていかれたが、やがて、()(あたら)しい、孝二(こうじ)(あた)えたと(おな)鉛筆(えんぴつ)(にぎ)ってきて、小泉(こいずみ)(わた)されました。
「いいなあ。」
「うまいことをしたなあ。」
 ほうぼうからうらやましがるような(こえ)()こった。小泉(こいずみ)は、うれしそうに、またすまなさそうに、自分(じぶん)(せき)へもどったのであります。
 運動場(うんどうじょう)()るとき、廊下(ろうか)で、だれか、
小泉(こいずみ)(いえ)は、貧乏(びんぼう)だから先生(せんせい)がやったんだよ。」と、蔭口(かげぐち)をしているのを()くと、
先生(せんせい)がやさしいんだ。」と、孝二(こうじ)腹立(はらだ)たしげに()()しました。
 せみの(こえ)もしたし、運動場(うんどうじょう)には、まだ(はげ)しい()(ひかり)()りつけていました。
「ドッジボールの(かね)をもらうよ。」
 校舎(こうしゃ)日蔭(ひかげ)のところに()って、(あずま)が、一人一人(ひとりひとり)から(かね)()()っていました。一人(ひとり)が、十(せん)以上(いじょう)寄付(きふ)をすれば、その(かね)(もと)めたドッジボールの遊戯(ゆうぎ)(くわ)わることができるのでした。
小泉(こいずみ)くん、(きみ)()ってきたの。」と、孝二(こうじ)が、そばへ()って()いました。小泉(こいずみ)(あたま)()りました。
「じゃ、(ぼく)のと二人分(ふたりぶん)にしておくからね。」
 孝二(こうじ)は、二十(せん)()そうと()ってきたのを、小泉(こいずみ)二人(ふたり)(ぶん)にして()しました。これで、小泉(こいずみ)もこの遊戯(ゆうぎ)(くわ)わることができたのです。

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