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石をのせた車(2)

时间: 2022-10-14    进入日语论坛
核心提示: こうしておおぜいが連(つ)れ合(あ)っていった後(あと)から、一人(ひとり)できかかる男(おとこ)や、女(おんな)がありました。そ
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 こうしておおぜいが()()っていった(あと)から、一人(ひとり)できかかる(おとこ)や、(おんな)がありました。その人々(ひとびと)には、よく(みち)がわからないとみえて、()街道(かいどう)にきてから、うろうろとしていました。
「お(てら)へおいでなさるのですか。」と、少年(しょうねん)はいいました。
「ああそうだ。」と、その(ひと)(こた)えました。
「そんなら、そちらの(みち)をおいでなさい。」と、少年(しょうねん)(おし)えました。
 (なか)には、(よろこ)んで(れい)をいってゆくものもあれば、また(ぜに)少年(しょうねん)(あた)えてゆくものもありましたが、また(なか)には、()()きもせず、(れい)をいわずにいってしまうものもありました。また、まれに、おおぜいでやってきて、みんなが(みち)()らないばあいなどもありました。そんなとき、少年(しょうねん)がやはり(みち)(おし)えてやると、
感心(かんしん)子供(こども)だ。かわいそうな子供(こども)だ。これにはなにか子細(しさい)があって、乞食(こじき)をするのだろう。」などとうわさしあって、みんなが(ぜに)をくれてゆくこともありました。
 少年(しょうねん)は、その()(おも)いも()らぬたくさんな(かね)を、人々(ひとびと)からもらいました。そして、日暮(ひぐ)れに木賃宿(きちんやど)(かえ)ってきて()まりました。(かれ)は、ほかにいって()まるところがなかったからです。
 この木賃宿(きちんやど)には、べつに大人(おとな)乞食(こじき)らがたくさん()まっていました。そして、(かれ)らは、その()いくらもらってきたかなどと、たがいに(はな)()っていました。
(おれ)は、一(にち)じゅう(ひと)(かお)さえ()れば、(あわ)れっぽい(こえ)()せるだけ(しぼ)()して、(あたま)()げられるだけ(ひく)()げて(たの)んでみたが、これんばかりしかもらわなかった。」と、あばた(づら)乞食(こじき)(ぜに)(かぞ)えながらいっていました。すると一人(ひとり)()(たか)い、(あお)(かお)をした乞食(こじき)が、
(おれ)は、一(にち)じゅうびっこのまねをして(まち)じゅうを(ある)きまわったが、やっと、こればかりしかもらわなかった。」と、やはり(ぜに)(てのひら)にのせて、()つめながら(はな)していました。
 少年(しょうねん)は、(だま)ってそばに(ちい)さくなって、みんなの(はなし)をきいていましたが、()(たか)いのが、
「やい、小僧(こぞう)、おまえは、いくら今日(きょう)もらってきたか。」と、(おお)きな(こえ)でふいに(たず)ねました。
 少年(しょうねん)は、正直(しょうじき)に、その()もらってきた(かね)(たか)(はな)しますと、みんなは、びっくりして()をみはりました。
小僧(こぞう)、だれに(はなし)をつけて、(おれ)縄張(なわば)(うち)()らしゃあがったか。その(かね)を、みんなここへ()してしまえ。」と、()(たか)いのは少年(しょうねん)をにらみつけていいました。
 少年(しょうねん)は、もうすこし(かね)がたまったら、それを旅費(りょひ)にして、西(にし)(ほう)温泉場(おんせんば)をさして、()かけるつもりでいましたやさきでありましたから、()んでもこの(かね)()されないと(おも)っていました。けれど、あまり相手(あいて)のけんまくが(おそ)ろしいので、どうなることかと(ふる)えていました。
「まあ、堪忍(かんにん)してやんなさい。なんといっても、まだ子供(こども)だ。それに病身(びょうしん)とみえて、あんなに顔色(かおいろ)(わる)いのだから。」と、あばた(づら)(おとこ)は、(なか)(はい)って、その()(まる)くおさめてくれました。
 少年(しょうねん)は、(こころ)(なか)で、(かお)つきにも()(こころ)のやさしい乞食(こじき)だと(おも)って、あばた(づら)(おとこ)感謝(かんしゃ)していました。
 夜中(よなか)のことであります。あばた(づら)少年(しょうねん)()すり()こしました。そして、(ちい)さい(こえ)で、
「おまえは、昨日(きのう)どこでもらってきた。」とききました。少年(しょうねん)()街道(かいどう)のところにすわっていたこと、そして、開帳(かいちょう)へゆく人々(ひとびと)(みち)(おし)えたことまで、すっかり(はなし)をしました。
「なるほどな。」といって、あばた(づら)乞食(こじき)はうなずきました。
 ()()けると少年(しょうねん)は、今日(きょう)()街道(かいどう)のところへすわって、みんなに(みち)(おし)えようかとおもいました。太陽(たいよう)()がると、(かれ)は、昨日(きのう)のところにやってきました。すると、いつのまにか自分(じぶん)より(はや)く、あばた(づら)がそこにきてすわっているのでした。
昨夜(ゆうべ)(おれ)がおまえを(たす)けてやったんだ。今日(きょう)は、ほかをまわるか、(やす)んで宿(やど)にいろ。そのかわり、(おれ)がたくさんもらったら、()けまえをくれてやるから。」と、あばた(づら)は、()をぎょろりと(ひか)らしていいました。少年(しょうねん)抵抗(ていこう)することもできなく、またほかを(ある)いて、どうしようという(かんが)えも()こらず、そのまましおしおと宿(やど)にもどってきました。
 その()()(がた)になると、(そと)出歩(である)いていた乞食(こじき)らがみんなもどってきました。あばた(づら)は、たいそう不機嫌(ふきげん)(かお)つきをして(かえ)ってくると、少年(しょうねん)()かっていいました。
「おまえのいうことを()いて、ほんとうにしたばかりに(おお)ばかをみてしまった。だれひとり、(みち)()くものもなけりゃ、(ぜに)をくれるものも(かぞ)えるほどしかなかった。()けまえどころか、おまえから昨日(きのう)()けまえをもらわなけりゃ、()()わせがつかない。それがいやなら、この宿(やど)からさっさと(そと)()てゆけ。」と、(おそ)ろしい()つきをしてにらみました。
 少年(しょうねん)は、ついにその宿(やど)から()()されてしまいました。(くら)夜路(よみち)をあてもなく(ある)いてゆきますと、いつしか(やま)(ほう)(はい)ってゆく(みち)()たものとみえて、ある(おお)きな(さか)にさしかかりました。
 ちょうどこのとき、(うま)(くるま)()かせ、(いし)()んで(さか)(のぼ)りかけている(おとこ)()ました。どこからきたものか、(ひと)(うま)(つか)れていました。少年(しょうねん)()(どく)(おも)って、(さか)(のぼ)るときに、その(くるま)(あと)()してやりました。すると(くるま)(うえ)から、(ちい)さな(いし)ころが一つ(ころ)()ちました。なんの()なしに()()いてみると、その(いし)不思議(ふしぎ)にきらきらと(ひか)っていました。
(いし)()ちた。」と、少年(しょうねん)は、(おとこ)注意(ちゅうい)をしたけれど、(おとこ)(だま)っていました。返事(へんじ)をするのも物憂(ものう)かったようすであります。また、(いし)ころ一つくらいどうでもいいと(おも)っているようにも()えました。少年(しょうねん)は、(さか)(うえ)まで()してやりました。しかし、(おとこ)(くだ)(ざか)にかかると(れい)もいわずに、さっさといってしまいました。
 (ひと)(あと)(のこ)された少年(しょうねん)は、ぼんやりと()っていましたが、なんとなく、(ひか)(いし)()()かされましたので、わざわざもどってそれを(ひろ)ってみました。それは、(くろ)っぽい(いわ)のような(いし)のかけらでありました。少年(しょうねん)は、その(よる)は、ついにこの(いし)()いたまま、(さか)(した)草原(くさはら)(なか)野宿(のじゅく)をしました。
 (なつ)夜明(よあ)(がた)のさわやかな(かぜ)が、ほおの(うえ)()いて、少年(しょうねん)()をさましますと、うす(あお)(そら)に、西(にし)山々(やまやま)がくっきりと(くろ)()かんで()えていました。そして、その一つの(みね)(いただき)に、きらきらと(ほし)(ひか)っていました。少年(しょうねん)は、じっと(ほし)(ひかり)()ていますうちに、(あつ)(なみだ)がしぜんと()(そこ)にわいてきました。それは、()まれ()わったように(からだ)(つよ)くなって、ふたたびこの()(なか)()(はたら)くことのできる、(なが)い、(なが)い、未来(みらい)生活(せいかつ)空想(くうそう)されたからであります。
 いうにいえない悲壮(ひそう)(かん)じが、このとき、少年(しょうねん)(むね)にわき()がりました。
「どんな、(とお)くへでも(ある)いていこう。」
 少年(しょうねん)は、おばあさんから()いた温泉(おんせん)(おも)()して(こころ)でいいました。
 いよいよ()()けると太陽(たいよう)(わら)いました。このとき、少年(しょうねん)は、いままで大事(だいじ)にして(にぎ)っていた(いし)ころをつくづくとながめたのです。昨夜(ゆうべ)草原(くさはら)にねていて、(そら)(かがや)いている(ほし)をながめたが、その(ほし)のかけらのように、(うつく)しく、紫色(むらさき)(ひか)っている(いし)でありました。
 少年(しょうねん)は、その(いし)()って(まち)()ました。そして、ある(かざ)()(まえ)(とう)りかかりましたときに、その(みせ)さきにすわっていた主人(しゅじん)にこの(いし)()てもらいました。主人(しゅじん)は、眼鏡(めがね)をかけて、よく(いし)()ていましたが、
「これは(めずら)しい(いし)だ。」といって、どうか()ってくれないかと(たの)みました。少年(しょうねん)は、(いし)よりもっと自分(じぶん)(いのち)がたいせつだと、温泉(おんせん)()きのことを(おも)って、主人(しゅじん)(うつく)しい紫色(むらさき)(いし)()ってやりました。
「こんな(めずら)しい(いし)なら、いつでも()いますから、また、ありましたら()ってきてください。」と、(かざ)()主人(しゅじん)はいいました。
 少年(しょうねん)は、その(みせ)から()て、往来(おうらい)()ちましたときに、また、今夜(こんや)も、あの(さか)(した)()っていて、もし、あの(くるま)がきたときに、(あと)()してやろうかなどと(かんが)えましたが、なんでも、いい機会(きかい)というものは、二度(にど)あるものでない。お開帳(かいちょう)()だって、つぎの()には、あんなことがあったと(かんが)えると、旅費(りょひ)のできたのを(さいわ)いに、はやく目的地(もくてきち)をさしてゆこうと決心(けっしん)したのであります。」

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