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美しく生まれたばかりに(2)

时间: 2022-10-17    进入日语论坛
核心提示:「こまどりさん、ほんとうに、今夜(こんや)にでも雪(ゆき)が積(つ)もったら、明日(あした)は、あなたは、ふもとの方(ほう)へいっ
(单词翻译:双击或拖选)

「こまどりさん、ほんとうに、今夜(こんや)にでも(ゆき)()もったら、明日(あした)は、あなたは、ふもとの(ほう)へいってしまわれるでしょう。そうすれば、また、(はる)がくるまで、あなたの(うた)()くことができないのです。どうか、もう一つ(うた)ってくださいませんか。」と、木立(こだち)はたのみました。
 こまどりは、(さむ)(かぜ)()かれながら、(たに)(ほう)()いて、ほがらかに、さえずりはじめました。このとき、あちらから、()()るように、(くろ)いものが()んできたかと(おも)うと、こまどりは(おも)わず、すくんでしまった。それといっしょに、木立(こだち)は、
「あっ!」といって、(こえ)をあげました。
 はやぶさが、こまどりを(ねら)って、それを()らえたからです。
 なぜ(はや)く、(もり)(なか)へ、(かく)れなかったかと、木立(こだち)は、()をもんだけれども、はや、なんの(やく)にもたたなかった。
「はやぶささん、どうか、そのこまどりの(いのち)だけは、()らないでください。」と、木立(こだち)は、はやぶさに(うった)えました。
「あまり、こいつが、いい()になって、自分(じぶん)(こえ)自慢(じまん)するからさ。」と、はやぶさは、こまどりを片脚(かたあし)()さえつけて、いいました。
「なにも、あなたに、(わる)いことをしたのでありますまい。(わたし)が、(たの)んで、(うた)をうたってもらったのです。あまり、今日(きょう)は、あたりが陰気(いんき)で、(さび)しいものですから……。」と、木立(こだち)(たの)みました。
 はやぶさは、()をくるくるさしていましたが、
「ほんとうに、(さむ)い、さびしい()だな。こんな()には、小鳥(ことり)どもも、()につかない。こいつは()たところは、きれいだが、毛色(けいろ)ばかりで(にく)がまずいので、あまり(おれ)は、()きでない。そんなに、おまえがいうなら、こいつの(いのち)だけは、(たす)けてやろう。そのかわり、こんど、小鳥(ことり)が、ここへ()んできたなら、おまえは、(あたま)でも()って、(おれ)()らせてくれい。」と、はやぶさはいいました。
 木立(こだち)は、こまどりが(たす)けられたので、うれしく(おも)った。しかし、はやぶさは、すぐに、こまどりを(はな)してやろうとはしなかったのでした。
「おまえの(いのち)は、(たす)けてはやるが、今夜(こんや)一晩(ひとばん)、こうして、(おれ)(あし)(あたた)めさせろ!」といって、はやぶさは両脚(りょうあし)で、こまどりの(からだ)()みつけたのでした。こまどりの(からだ)は、()しつぶされそうになって、(こえ)もたてられなかった。
 木立(こだち)は、なんという残酷(ざんこく)なことをするものだろうと、これを()るのにしのびませんでした。が、じきに、(くら)く、(くら)くなって、すべての光景(こうけい)を、(よる)が、(かく)してしまいました。
 (よる)が、ほのぼのとあけかかったとき、木立(こだち)は、こまどりがどうなったかを()ると、はやぶさは、もはや、そこにはいませんでした。あちらの(みね)(ほう)へ、早起(はやお)きする小鳥(ことり)たちの(こえ)()きつけて、これを()らえて()えを()たすために、()んでいってしまった(あと)です。そして、こまどりだけが、(あわ)れげなようすをして、くちばしで、自分(じぶん)(からだ)()(みだ)れを(なお)していました。
 木立(こだち)()(どく)(おも)って、(こえ)をかけることもできなかったのでした。
 ちらちらと()った、(ゆき)清浄(せいじょう)()らして、朝日(あさひ)(のぼ)りました。
 こまどりは、そうそうに、木立(こだち)(わか)れを()げて、ふもとの(ほう)をさして(いそ)ぎました。その(あと)へ、先日(せんじつ)のしじゅうからが()んできて、木立(こだち)から、はやぶさとこまどりの(はなし)()いて、(ちい)さなくびを()(なか)にすくめたのです。
「こまどりは、(まち)へいっても、(ころ)されるようなことはありますまい。しかし、先日(せんじつ)のお(ほし)さまのいったように、なにが幸福(こうふく)となり、また、不幸(ふこう)となるかもしれませんね。(わたし)どものように、だれからほめられるということのないかわり、自由(じゆう)(そら)()けることができるのが、しあわせであるかもわからない。こんな(かわ)(ほね)ばかりの(わたし)どもを、はやぶさだってねらいはしますまいから……。」と、いったのです。
 ちょうど、このとき、こまどりは、平原(へいげん)(うえ)()んでいました。()わたすかぎり、初雪(はつゆき)にいろどられて、(しろ)世界(せかい)(なか)を、金色(こんじき)(おび)のように、(かわ)(かわ)れ、田圃(たんぼ)は、獣物(けだもの)背中(せなか)のように、しまめを(つく)っていました。
 (ひる)ごろのこと、こまどりは、地平線(ちへいせん)のかなたに()かび()た、(はな)やかな(まち)()ました。
「まあ、なんという(かがや)かしい(まち)だろう。人間(にんげん)がここに()んでいるのだ……。(やま)にいるとき、よくほかの(とり)たちが、おまえさんは、(はね)(いろ)(うつく)しいし、(こえ)もいいから、人間(にんげん)にもかわいがられるだろうといったことがあった。もし、人間(にんげん)が、(わたし)をかわいがってくれるなら、(わたし)は、どんなにしあわせかしれん……。」と、こまどりは、(たか)()()まって、(ひと)(ごと)をしていました。
 (まち)建物(たてもの)は、()(かがや)いて、煙突(えんとつ)から(しろ)(けむり)がおもしろそうに、雪晴(ゆきば)れのした、(あお)(そら)(なが)れて()えていました。このとき、すずめが、軒端(のきば)(ほう)から二()()んできて、こまどりの()まっている、(した)(ほう)(えだ)()まって、(はなし)をしていたのです。
「あの、(うつく)しいお(じょう)さんの(いえ)にいたのと、(おな)じい(とり)じゃないか?」
 この言葉(ことば)()きつけた、こまどりは、すずめの(ほう)見下(みお)ろしました。そこには、見慣(みな)れない二()(とり)たちが、自分(じぶん)のうわさをしていたのでした。すずめは、(やま)(おく)にはすんでいなかったからです。
「もう、一()、いまのお(はなし)()かしてくださいませんか。」と、こまどりはやさしく、いいました。
 すると、すずめは、おしゃべり(もの)ですから、
「この(まち)で、いちばんりっぱなお(うち)なのです。そこのお(じょう)さんは、評判(ひょうばん)美人(びじん)ですが、あなたと(おな)(とり)が、このあいだまで、かわいがられて、()われていたのですよ。それが、このごろ、()げたとみえていなくなったのです……。」といいました。
「それは、どのお(うち)ですか?」
「あの(もり)(なか)()える、(たか)(うち)が、それですよ。」
 こまどりは、いいことを()いたと(おも)って、すぐに、その(いえ)(ほう)()んでいった。そして、(にわ)(さくら)()()まって、いい(こえ)()して()きました。たちまち、(まど)()いて、(うつく)しいお(じょう)さんが、(かお)をだしました。
「まあ、いいこまどりだこと、(うち)のが(かえ)ってきたのかもしれないわ。」といって、お(じょう)さんは、きれいなかごの(なか)へ、こまどりの()きそうな(えさ)猪口(ちょこ)()れて、かごの()をあけて、()(した)へだしました。
 こまどりは、()(うえ)で、これを()ながら、しばらく(かんが)えていたが、だんだん(した)()りてきました。そして、とうとうそのかごの(なか)へはいると、くびをまわして、(うち)のようすをながめました。このとき、お(じょう)さんが、()んできて、()()めてしまいました。
 こまどりは、かごの(なか)へはいってから、なぜいままでのこまどりは、このかごの(なか)から、()げていったのだろうかということを、青空(あおぞら)()ながら(かんが)えたのです。すると、(かれ)は、(きゅう)自由(じゆう)(うしな)ってしまったことに()がついて、かごの(なか)で、(さわ)ぎはじめました。
「すこし(くら)いところへ()いたほうがいいわ。」と、お(じょう)さんは、(おく)座敷(ざしき)へ、かごを()ってきました。こまどりは、はじめて人間(にんげん)()(いえ)(うち)()るので、(めずら)しそうに()まわしていました。そのうちに、またたちまち悲鳴(ひめい)をあげて、(せま)いかごの(なか)(くる)()した。あちらで、はやぶさが、こまどりをにらんでいたからです。
 しかし、それは、(とこ)()にかかっている、()(もの)()であることがわかりました。そして、この(ちい)さな(とり)にも、人間(にんげん)は、なんでも人間以外(にんげんいがい)のものをおもちゃにするが、めったに幸福(こうふく)(あた)えるものでない、幸福(こうふく)というものは、自分(じぶん)だけの(ちから)()られるものだと(さと)ると、いままでいろいろと()(えが)いた(うつく)しい空想(くうそう)()えてしまった。
 こまどりは、やはり、(おそ)ろしいはやぶさのすんでいる、(やま)(なか)(こい)しくなりました。そして、いまとなっては、とりかえしのつかない、自分(じぶん)のはやまった生活(せいかつ)後悔(こうかい)したのであります。

 

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