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海からきた使い(1)

时间: 2022-10-17    进入日语论坛
核心提示:海からきた使い小川未明 人間(にんげん)が、天国(てんごく)のようすを知(し)りたいと思(おも)うように、天使(てんし)の子供(こ
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海からきた使い

小川未明


 人間(にんげん)が、天国(てんごく)のようすを()りたいと(おも)うように、天使(てんし)子供(こども)らはどうかして、下界(げかい)人間(にんげん)は、どんなような生活(せいかつ)をしているか()りたいと(おも)うのであります。
 人間(にんげん)は、天国(てんごく)へいってみることはできませんが、天使(てんし)は、人間(にんげん)世界(せかい)へ、()りてくることはできるのでありました。
「お(かあ)さま、どうぞ、わたしを一()下界(げかい)へやってくださいまし。」
 天使(てんし)子供(こども)は、母親(ははおや)(たの)んだのであります。けれど、お(かあ)さまは、容易(ようい)にそれを、お(ゆる)しになりませんでした。
 なぜなら、人間(にんげん)は、天使(てんし)より野蛮(やばん)であったからです。そして、()()()(うえ)に、どんなあやまちがないともかぎらないからでありました。
「どうぞ、お(かあ)さま、わたしを一()下界(げかい)へやってくださいまし。」と、幾度(いくたび)となく、その(ちい)さな天使(てんし)一人(ひとり)は、お(かあ)さまに(たの)みました。
 毎夜(まいよ)のように、地球(ちきゅう)は、(うつく)しく、紫色(むらさきいろ)空間(くうかん)(かがや)いていました。そして、その地球(ちきゅう)には天使(てんし)(おな)じような姿(すがた)をした人間(にんげん)()んで、いろいろな、それは、天使(てんし)たちには、ちょっと想像(そうぞう)のつかない生活(せいかつ)をしていると、()いたからでありました。
「それほどまでに、下界(げかい)へいってみたいなら、やってあげないこともないが、しかし、一()いったなら、三(ねん)は、辛抱(しんぼう)してこの天国(てんごく)(かえ)ってきてはなりません。もし、その決心(けっしん)がついたなら、やってあげましょう……。」と、お(かあ)さまはいわれました。
 (うつく)しい天使(てんし)は、しばらく(かんが)えていました。そして、ついに決心(けっしん)をいたしました。
「三(ねん)(あいだ)、わたしは下界(げかい)にいって、辛抱(しんぼう)をいたします。そして、いろいろのものを()たり、また、()いたりしてきます。」と(こた)えました。
 天国(てんごく)から、下界(げかい)(たっ)する(みち)はいくつかありました。(あか)(ふね)()って、(くも)(あいだ)や、(なみ)(あいだ)()けてから、(おそ)ろしい旋風(せんぷう)に、(からだ)をまかせて二日二晩(ふつかふたばん)(なが)(たび)をつづけてから、ようやく、下界(げかい)(うみ)(うえ)(しず)かに、()りることも、その一つであれば、また、(からだ)(くも)()したり、(とり)()したり、(つゆ)()したりして、下界(げかい)(やま)(うえ)や、とがった建物(たてもの)屋根(やね)のいただきや、野原(のはら)などに()りることもできたのであります。
 天使(てんし)は、人間(にんげん)(ちから)ではできないことも容易(ようい)にされたのです。だから、(ちい)さなかわいらしい天使(てんし)が、野蛮(やばん)人間(にんげん)()んでいる下界(げかい)()りてみたいなどと(おも)ったのも無理(むり)のないことでありました。
 (ちい)さな天使(てんし)は、いつしか下界(げかい)()りて、(うつく)しい少女(しょうじょ)となっていました。
 ある(あき)(さむ)()のこと、(まち)はずれの(おお)きな(いえ)門辺(かどべ)()って、(いえ)(なか)からもれるピアノの(おと)と、いい唄声(うたごえ)にききとれていました。あまりに、その(おと)(かな)しかったからです。故郷(こきょう)といえば、(いく)百千()(とお)いかわからないからです。そして、(かえ)りたいと(おも)っても、いまや、そのすべすらなく、まったく(みち)もなかったからであります。少女(しょうじょ)は、どうかして、やさしい(ひと)(なさ)けによって(すく)われたいと(おも)いました。
 (そら)は、時雨(しぐれ)のきそうな模様(もよう)でした。今朝(けさ)がたから、(まち)(なか)をさまよっていたのです。たまたまこの(いえ)(まえ)にきて、(おも)わず(あし)()めてしばらく()きとれたのでした。
 そのうちに、(まち)には、燈火(あかり)がつきました。(いえ)のうちのピアノの(おと)はやんで、(うた)(こえ)もしなくなりました。けれど、(あわ)れな少女(しょうじょ)は、この(いえ)(まえ)()ろうとせずに、そこに()っていました。
 そのとき、りっぱな洋装(ようそう)をしてお(じょう)さんが()てきました。お(じょう)さんはこれから、どこかへ()かけられるようすでした。
「お(ねえ)さん、わたしもいっしょにつれていってください。」と、(かど)()っている少女(しょうじょ)は、()びかけました。
 お(じょう)さんは、びっくりして()りかえると、そこにかわいらしい、しかし(さむ)そうな、さびしそうなようすをして、少女(しょうじょ)自分(じぶん)(かお)見上(みあ)げていましたので、この子供(こども)は、どこの()だろうかと、くびをかしげたが、(おも)()せませんでした。
「どうして、(わたし)がゆくところを()っているの?」と、お(じょう)さんはいいました。
「わたしは、お(ねえ)さんが、おいでなさるところをよく()っています。お(ねえ)さんは、これから舞踏会(ぶとうかい)においでなさるのでしょう。わたしは、おじゃまをいたしませんからどうかつれていってください。わたしは、みなさんの(おど)りなさるのが()たいのです……。」と、少女(しょうじょ)(たの)みました。
「いいえ、おまえさんをつれてゆくことなどはできません。はやく、お(かえ)りなさい。」と、お(じよう)さんは、迷惑(めいわく)そうにいって、さっさとあちらへいってしまいました。
 少女(しょうじょ)は、お(じょう)さんの行方(ゆくえ)をうらめしそうに見送(おく)っていますと、お(じょう)さんの姿(すがた)は、(ゆう)もやのうちに(かく)れて、()えていってしまいました。少女(しょうじょ)は、しかたなく、さびしい(ほう)へと(ある)いてゆきました。
 もう()()れかかっていました。(まち)(はな)れると、(いえ)(かず)がだんだん(すく)なくなりました。そのとき、(みち)(うえ)で、ちょうど自分(じぶん)(おな)(とし)ごろの少女(しょうじょ)が、(あか)(ぼう)(おぶ)って、子守唄(こもりうた)をうたっていました。この子守唄(こもりうた)()くと、(ある)いてきた少女(しょうじょ)は、すっかり感心(かんしん)してしまいました。
「なんという、(なさ)けの(ふか)(うた)だろう。天国(てんごく)にも、これより(とうと)(うた)()いたことはない。」と、(おも)いました。そして、少女(しょうじょ)は、(ちか)づくと、(あか)(ぼう)(おぶ)って、(うた)をうたっている(むすめ)にやさしく()いかけたのであります。
「もう()()れるじゃありませんか。こんなにおそくなるまで、あなたは(そと)()って、(うた)をうたっておいでなさるのですか。」と、少女(しょうじょ)はいいました。
 (あか)(ぼう)(おぶ)っている(むすめ)は、()らない少女(しょうじょ)ではありましたが、こうやさしく()いかけられると、()(なみだ)をためて、
「お(かあ)さんが病気(びょうき)なもんですから、(ちち)をたくさん()ませることができないのです。なるたけ、(あか)ちゃんを(ねむ)らせるために、こうして、いつまでも(そと)()って、(うた)をうたっているのです。」といいました。
 少女(しょうじょ)は、(むすめ)のいうことに、(ふか)同情(どうじょう)いたしました。
「そんなら、夜中(よなか)でも()きて、あなたは(うた)をうたいなさるのですか?」
夜中(よなか)でも()きて、(わたし)は、牛乳(ぎゅうにゅう)()ませたり、()くときは()りをしなければなりません。」と、(むすめ)は、(こた)えました。
 (うつく)しい、やさしい少女(しょうじょ)は、感心(かんしん)してしまいました。
「わたしが、今夜(こんや)、あなたに()わって(あか)ちゃんの()りをしてあげましょうか……。」と、少女(しょうじょ)はいいました。
「ありがとうございます。(はは)が、かえって()をもみますから、どうぞお()にかけないでください……。」と、(むすめ)(こた)えました。
 少女(しょうじょ)は、しんせつが、かえって迷惑(めいわく)になってはいけないと(おも)って()()りました。
「はやく、あなたのお(かあ)さんのおなおりなさるように(いの)っています。」と、少女(しょうじょ)は、()()るときにいいました。
 少女(しょうじょ)(ある)いてきますと、あとから(あか)(ぼう)(おぶ)った(むすめ)()いかけてきました。そして、少女(しょうじょ)()()めました。
「あなたのお(うち)はどこですか……。」
 少女(しょうじょ)は、さびしそうに、(むすめ)(かお)()て、微笑(ほほえ)みながら、
「わたしの(うち)は、(とお)いんですの……。」と(こた)えました。
 (むすめ)は、()いてびっくりしました。
「あなたは、こんなに(くら)くなって、どうしてお(うち)へお(かえ)りになることができるのですか……。きたない(うち)ですが、今夜(こんや)(わたし)(うち)()まっていってください。」と、(むすめ)は、真心(まごころ)をこめていいました。
「わたしのことなら、どうぞおかまいなく……。」といって、少女(しょうじょ)は、とっとっとあちらへ()ってしまいました。
 その(ばん)は、(あめ)になりました。(むすめ)は、うす(ぐら)(いえ)のうちで、(あか)(ぼう)()りをしながら、先刻(さっき)(まえ)(とお)ったやさしい少女(しょうじょ)は、いまごろどうしたろうと(おも)って、その()(うえ)(あん)じていたのです。しかし、この()から、お(かあ)さんの病気(びょうき)は、だんだんいいほうに()かいました。
 いつのまにか、(ふゆ)がきてしまいました。

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