返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

さかずきの輪廻(1)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示:さかずきの輪廻小川未明(この童話どうわはとくに大人おとなのものとして書かきました。)昔むかし、京都きょうとに、利助りすけ
(单词翻译:双击或拖选)

さかずきの輪廻

小川未明


(この童話どうわはとくに大人おとなのものとしてきました。)


むかし京都きょうとに、利助りすけという陶器とうきつく名人めいじんがありましたが、このひとは、あまりつたわらなかったのであります。一だいつうじて寡作かさくでありましたうえに、名利みょうりというようなことは、すこしもかんがえなかったひとでしたから、べつに交際こうさいをしたひとすくなく、いい作品さくひんができたときは、ただ自分じぶんひとりで満足まんぞくしているというふうでありました。
しかし、世間せけんというものは、評判ひょうばんたかくなければ、そのひとつくったものをおもんずるものでありません。一人ひとりや、二人ふたりは、まれに、をとめてることはあっても、問題もんだいにしなければ、永久えいきゅうに、それだけでわすれられてしまうのです。
にうずもれた、きのこのように、利助りすけ作品さくひんは、あらわれませんでした。そしてうすあおい、遠山えんざんほどの印象いんしょうすらもその時代じだいひとたちにはのこさずに、さびしく利助りすけってしまいました。
それから、いくねんものあいだしげもなく、かれつくった陶器とうきは、こころないひとたちのあつかわれたのでありましょう。がらくたのあいだじっていました。
利助りすけ陶器とうき特徴とくちょうは、その繊細せんさい美妙びみょうかんじにありました。かれ薄手うすでな、純白じゅんぱく陶器とうきあい金粉きんぷんとで、花鳥かちょうや、動物どうぶつ精細せいさいえがくのにちょうじていたのであります。
かわらのようなあつい、不細工ぶさいくものあいだに、このかみのようにうすい、しかも高貴こうき陶器とうきがいっしょになっているということは、なんというこころないことでありましょう?
しかもこころないひとたちは、それをいっしょにして、あらくあつかったのであります。こうして作数さくすうすくなかった利助りすけ作品さくひんは、時代じだいをへるとともに、いつしかなくなってゆきました。
そらかがやほしが、一つ、一つ、せるように、それはさびしいことでした。そしてくだけた作品さくひんは、砂礫されきといっしょに、みぞや、つちうえてられて、からってゆくのでした。
しかし、また、人間にんげんのほんとうの努力どりょくというものが、けっしてむなしくはならないように、しん芸術げいじゅつというものが、永久えいきゅうに、そのひかりみとめられないはずがないのであります。
ひとたび土中どちゅうにうずもれた金塊きんかいは、かならず、いつかつちしたからひかりはなつときがあるように、利助りすけ作品さくひんが、また、芸術げいじゅつ愛好あいこうするひとたちからさわがれるときがきたのでした。
けれど、その時分じぶんには、すくない品数しなかずは、ますますすくなくなって、完全かんぜんなものとては、だれか、利助りすけ作品さくひんあいしていたごく少数しょうすうひと家庭かていのこされたものか、また、偶然ぐうぜんのことでだなのすみにほかの陶器とうきかさなりって、不思議ふしぎに、やぶれずにいたものだけであったのです。
利助りすけというような名人めいじんがあったのに、どうしていままでられなかったろう。」と、陶器とうき愛好家あいこうか一人ひとりがいいますと、
「ほんとうの名人めいじんというものは、みんなあとになってからわかるのだ、見識けんしきたかかったとでもいうのだろう。」と、そのはなし相手あいてはさながら、名人めいじんが、その時代じだいでは、不遇ふぐうであったのをあやしまぬようにこたえました。
わたしは、利助りすけさくがたまらなくきだ。まあ、この藍色あいいろえていてみごとなこと。金粉きんぷんいろもその時分じぶんとすこしもわらない。上等じょうとうのものを使つかっていたとみえる。」
貧乏びんぼうらしをしたということだが、芸術げいじゅつのうえでは、なかなかの貴族主義きぞくしゅぎだった。」
わたしは、利助りすけつくった完全かんぜんなさらがあるなら、どれほどのかねしても、一まいほしいものだ。」
「そのかんがえは、ぜいたくだろう。なにしろ、あの薄手うすででは、大事だいじにして、しまっておいても保存ほぞんは、容易よういではない。」
「なぜ、あんなに、薄手うすでいたものだろうか。」
「あの薄手うすでがいいのだ。あれでなければあの純白じゅんぱくいろせないのだ。」
「もっとも、利助りすけほどの天才てんさいは、自分じぶんのものがなが保存ほぞんされるためとか、どうとかいうようなぞくかんがえはもたなかったろう。ただ、気品きひんたかいものをつくげたいとおもっていたにちがいない。」
「そのとおりだ。」
陶器とうき愛好家あいこうかによって、こんなはなしがかわされたのは、すでに、利助りすけんでから、百年近ねんちかくたってからのちのことであった。
ここに、一人ひとり陶器とうききなおとこがありました。ちょうど江戸末期えどまっきのころで、ある日本橋辺にほんばしへんあるいていまして、ふとかたわらにあった骨董店こっとうてんって、いろいろなものをているうちに、だいうえいてあったさかずきにがとまりました。
おとこは、それをってみますと、おもいがけない、利助りすけつくったさかずきでした。しかも無傷むきずあいいろもよく、またいてあるおもむきもうぶんのないものでありました。
「ほう、めずらしいさかずきだな。」
と、かれは、こころおもいました。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: