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さか立ち小僧さん(3)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示:その夜よ、空あき地ちでは、かたすみの方ほうに、わずかばかりしげる草くさむらの中なかから、いろいろの虫むしの声こえが聞きか
(单词翻译:双击或拖选)
そのでは、かたすみのほうに、わずかばかりしげるくさむらのなかから、いろいろのむしこえかれました。しかし、秀吉ひできちには故郷こきょうの、あのかぎりもなくひろんぼから、さながらあめおとのようにながれてくる、ひびきのたかむしこえとは、おのずからかんじがちがって、もうあきちかづいたという、こころのひきしまる、さびしさはあじわわれませんでした。
あつまった、どものれには、昼間ひるまみちづれとなったたけちゃんやけんちゃんのほかに、きみさん、みっちゃんなどの、おなとしごろの学友がくゆうたちがくわわっていました。
「よくほしえるかい。こんど、ぼくにかしてね。」
「そのつぎは、わたしにね。」
みんなが、さきあらそって、双眼鏡そうがんきょうをのぞこうとしているのでした。
「こんどは、小僧こぞうさんのばんだよ。」と、けんちゃんが、おおきなこえ秀吉ひできちびました。
秀吉ひできちは、双眼鏡そうがんきょうというものを、はじめて、のぞいたのでした。しかしつき世界せかい秘密ひみつ肉眼にくがん以上いじょうに、わからなかったのでした。いくらか、はっきりするぐらいなものです。
「どう、よくえるだろう。」と、たけちゃんはさも、精巧せいこうなレンズをほこらしげに、いうのでした。秀吉ひできちはこれにたいして、なんともいわず、ればるほど宇宙うちゅうひろいので、ただためいきをもらしながら、双眼鏡そうがんきょうたけちゃんにかえして、
故郷こきょうでは、いまごろそらをあおぐと、がとどきそうに、そらちかく、ほしおおきく、きらきらひかってえるのだから。」といいました。
「まあ、そんなによくえるの。」と、みつさんが、おどろきました。すると、そばにっていたけんちゃんまでが、
「そうかなあ、空気くうきんでいるんだね。」と、まだらない北国ほっこくをふしぎなところのようにおもうのでした。
秀吉ひできちは、自分じぶん故郷こきょうについて、みんながめずらしがると、とくいになって、
「ちょうど、大雨おおあめのあと、小石こいしがたくさん、あたま地面じめんすだろう。あれとおなじように、がふけると、あおあかみどりと、一つ一つそらほしひかりが、とぎされるのさ。」と、秀吉ひできちはいって、さながら、わがまえって、まのあたりそらているように、なつかしそうでありました。
やがて、みんなとわかれて、かれ工場こうばの二かいの一しつへもどりました。しかし、とこについてからも、すぐにねむれませんでした。まくらにあたまをつけながら、居酒屋いざかやまえつ、たかいかしのかべていました。そのしたには、くろがすわっています。そして、くろは、毎日まいにちのように、ゆき旅人たびびと見送みおくっています。くろは、おれが、どうして、やってこないのだろうとおもっている。秀吉ひできちは、いつのまにかいているのでした。からちるなみだが、まくらをぬらすのでした。
だんだん、みじかくなりました。いつしかひぐらしのこえもきこえなくなりました。しかし、どもたちも、あまり、それをにとめるものがなかったほど、自然しぜんのうつりわりは自然しぜんでした。
「このごろ、小僧こぞうさんは、病気びょうきでないのかな。」
「どうして?」
うたもうたわないし、あそんでいるときも、だまって、さかちもしないだろう。」
学校がっこうへのとちゅう、けんちゃんと、たけちゃんははなしました。
「そういえば、元気げんきがないね。いつもほがらかなんだがな。とおくからきているので、かわいそうだね。」と、たけちゃんが、いうと、
かえったら、どうしたんだか、きいてみようか。」と、けんちゃんがこたえました。こうして、二人ふたり秀吉ひできちうえ同情どうじょうしたのでした。
あちらのにわいた、さるすべりのはなも、一は、あかくきれいだったが、そのさかりをすぎてしまいました。夕日ゆうひが、西空にしぞらにしずむと、北風きたかぜつめたさをかんじるようになりました。
秀吉ひできちは、両手りょうてあたまうえんで、ぼんやりと、遠方えんぽうをながめながら、物思ものおもいにしずんでいました。
この姿すがたどもたちは、
「きっと、自分じぶんいえおもしたのだろう。」と、そばへいってこえをかけるのをひかえたけれど、なにからず、むねほそはりでさされたように、かなしみをかんじたのでした。
そのは、日曜にちようで、しかもそらはよくれていました。もう太陽たいようひかりが、したわしくなる季節きせつだったので、あかとんぼが、はねをかがやかしてびかうばかりでなしに、どもたちが、へきて、うれしそうに、あそんでいました。ボールをげるもの、まりをつくもの、おにごっこをするもの、たがいにたのしくあそんでいました。工場こうばうらでは、秀吉ひできちが、まえにせまったふゆのしたくのため、せいして、たどんをならべてかわかしていました。
このとき、あちらから、きみさんが、一まいのはがきをって、おもてほうから、かけてきました。
小僧こぞうさん、おはがきよ。」
そういいながら、きみさんは秀吉ひできちまえまでくると、それをかれわたしたのです。
「ありがとう。」と、秀吉ひできちは、なにげなくって、ながめると、
「あっ! おかあさんからだ!」と、さけびをあげました。よほど、うれしかったのでしょう。くら元気げんきのなかったかおがたちまち、ぱっと燈火ともしびのついたように、あかるくなりました。
これをたきみさんは、
「おかあさんからなの?」といって、かれむねなかよろこびをさっするごとく、自分じぶんまでうれしそうにはしゃぎました。
「おれから、たびたび手紙てがみしても、ちっとも、たよりがないので、おふくろが病気びょうきでないかと心配しんぱいしていたんだ。いそがしくてけなかったが、たっしゃでいると、ごらん、ここにいてある。ああ、よかったなあ。」と、秀吉ひできちは、はがきをにぎって、こおどりしました。
「よかったわね。」と、きみさんが、こころからおもいやりのこもった調子ちょうしで、いいました。
「こんなうれしいことはないよ。」と、秀吉ひできちいたのでした。
このから、かれはまた、さかちもすれば、うたもうたう、いつもの、ほがらかな小僧こぞうさんになったのであります。
たけちゃんと、けんちゃんは、このはなしをきみさんからきいたとき、ちょうど、ボールげをしていたが、すぐやめて、きみさんのところへきて、みみをかたむけたのでした。
小僧こぞうさんは、おかあさんからの、はがきをると、すっかり元気げんきになったのよ。」と、きみさんは、いいました。
二人ふたり少年しょうねんは、かお見合みあって、
「ああ、おかあさんのことか……。」
「おかあさんのことだったのか……。」と、たがいに、ためいきをもらしました。
けんちゃんは、ににぎっていた、ボールを地上ちじょうとし、たけちゃんは、しばらくだまって、うなずいていました。
 
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