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酒屋のワン公(1)

时间: 2022-11-03    进入日语论坛
核心提示:酒屋のワン公小川未明 酒屋(さかや)へきた小僧(こぞう)は、どこかの孤児院(こじいん)からきたのだということでした。それを見(
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酒屋のワン公

小川未明


 酒屋(さかや)へきた小僧(こぞう)は、どこかの孤児院(こじいん)からきたのだということでした。それを()ても、(かれ)には、(たよ)るものがなかったのです。
 ものをいうのにも、(ひと)(かお)をじっと()ました。その()つきはやさしそうに()えたけれど、なんとなく、不安(ふあん)(かげ)宿(やど)っていました。
「もしや、自分(じぶん)のいったことが、相手(あいて)(こころ)(いた)めて、しかられるようなことはないかしらん?」と、(おも)ったがためです。
 世間(せけん)(こころ)ある(おや)たちは、そのようすをながめたときに、「(おや)のない()は、かわいそうなものだ。」といいました。
 (かれ)は、十二、三になりましたが、(とし)のわりあいに(せい)(ひく)かった。そればかりでなく、(ある)時分(じぶん)、二(ほん)(みじか)(あし)内輪(うちわ)()がっているから、ちょうどブルドッグの(ある)くときのような姿(すがた)想像(そうぞう)させたのでした。そのことから、いつしかだれいうとなく、「酒屋(さかや)のワン(こう)」と、()ぶようになりました。そして、この(あわ)れな少年(しょうねん)本名(ほんみょう)すら()るものがありません。(かれ)は、ついに、いつもこのあだ()で、ワン(こう)、ワン(こう)()ばれていたのです。
 この少年(しょうねん)(あし)は、()まれながらにして、こんなふうに、()がっていたのではなかったのでした。不幸(ふこう)境遇(きょうぐう)は、やっと、六つか七つぐらいになった時分(じぶん)から、(あか)(ぼう)をおぶわせられて、()りをしたからです。そして、まだ、(やわ)らかな(あし)(ほね)は、(からだ)()ぎた(おも)みを(あた)えたために()がったのでした。
 (かれ)(ある)きつきを(わら)う、だれがこのことを()りましょう?

 しっとりとした、(しず)かな(なつ)夕暮方(ゆうがた)であります。(はたけ)()っている、とうもろこしの、(おお)きな()れさがった()(こし)をかけて、馬追(うまお)いが、()っているかぎりの(うた)をうたっていました。
 さわやかな(かぜ)が、中空(なかぞら)()きわたりました。いつ()たか、まんまるな(つき)が、にこやかに、こちらを()(わら)っていました。
「たいへんに(せい)()るな。」と、(つき)はいいました。馬追(うまお)いはびっくりして、二(ほん)(なが)いまゆ()(うご)かして、(こえ)のした(そら)(あお)ぎながら、
「あのやさしい、酒屋(さかや)小僧(こぞう)さんが、さっきから熱心(ねっしん)()いていてくれるものですから……。」と、(こた)えたのです。
 これを()くと、(つき)は、心配(しんぱい)そうに、(はやし)(あいだ)から(あたま)()りました。ちょうど、それと同時(どうじ)でした。
「ワン(こう)晩方(ばんがた)のいそがしいのに、こんなところで、なにを(あぶら)()っているのだ。」と、主人(しゅじん)のどなり(ごえ)がすると、つづけさまに、(かれ)(あたま)をなぐる(おと)がしました。

 酒屋(さかや)(しろ)(いぬ)()()みました。
「また、こんなやっかいなものを()みやがった。」と、主人(しゅじん)はいって、子供(こども)をみんな(かわ)(なが)してしまいました。親犬(おやいぬ)は、きちがいのようになって(さが)していました。そこへ、三十あまりの(たび)(おんな)が、三味線(しゃみせん)(かか)えて門口(かどぐち)から(はい)ろうとすると、(しろ)(いぬ)は、(おんな)(あし)にかみついたのです。この()らない(おんな)が、自分(じぶん)子供(こども)(うば)ったとでも(おも)ったのでありましょう。(おんな)は、(おどろ)いて(すく)いを(もと)めました。
 主人(しゅじん)は、()らぬ(かお)をして、(そと)へは()ませんでしたが、ワン(こう)は、すぐ()()して(いぬ)()いはらいました。(おんな)(あし)からは、()(なが)れていたのです。
「ここの(いぬ)は、狂犬(きょうけん)ですか。」と、(おんな)は、たずねました。(かれ)は、白犬(しろいぬ)が、子供(こども)()てられたために、()(くる)っているのだということを(はな)しますと、
「かわいい()をとられたのでは、(ひと)にかみつくも無理(むり)はありません。」と、(おんな)は、(いか)らずにいいました。
 少年(しょうねん)はこの三味線(しゃみせん)ひきの(おんな)を、やさしい(ひと)だと(おも)いました。(かれ)は、()(どく)になって、(おんな)(あし)(みず)(あら)って、自分(じぶん)(こし)にさげている()ぬぐいを()いて、傷口(きずくち)()いてやりました。(おんな)は、少年(しょうねん)のしんせつを、(こころ)から、うれしく(おも)ったのであります。

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